かわいい猫はどこ行った。

昨晩、黒糖梅酒をマスカットソーダで割って飲むという下品なことをしたせいか、朝目覚めると頭がモーローとしている。しゃきっとせねば、1週間が始まるのだ。職場に着くと立て続けに珈琲を2杯飲む。
なんとか仕事を終えて、本屋へ。地元のこの店にも講談社文芸文庫の新刊が並ぶようになった。平積みの今月の新刊3冊のうち小林信彦「丘の一族」だけが倍の2山置かれている。一度にこんなに講談社文芸文庫仕入れられているのをこの店で初めて見た。ここに小林信彦ファンの店員がいるのかもしれない。そのわりには、前回の「袋小路の休日」は普通の冊数だったし、先週買った文春文庫の新刊「テレビの黄金時代」も別に多く並んでいた記憶もないのだが。
帰宅し、その「丘の一族」から「八月の視野」の続きを読む。終戦後、焼跡の物資不足、食料不足の東京で生きる中学生・明の夏が語られる。先日読んだ「東京少年」のラストで主人公の僕が縁故疎開から東京に帰ってきたその後が描かれていると言っていい。作品の冒頭に明が六本木の古本屋で本を売るシーンが出てくる。その店で手の届かない金額のカー「魔棺殺人事件」やガアドナア「偽眼殺人事件」を眺める明。母親がもうすでに読んでしまっている作品の入ったゾッキ本漱石全集を買ってきたことに憤る明。集団疎開で一緒だった旧友を受け入れられない自分に悩み「黒死館殺人事件」に読みふけることでそれを忘れようとする明。新刊書店でシムノンを万引きしようか悩む明。本筋とは言えないこういった本にまつわる記述につい気持ちが行ってしまう。
アマゾンから小山清「二人の友」(審美社)が届く。表題ともなっている巻頭の「二人の友」を読む。太宰治と俳優・丸山定夫の交情を描いた文章。この二人にこんな繋がりがあったとは知らなかった。小説と変わらず、短くてあっさりしている。しかし、二人の関係を描いて不足は感じない。他の文章も楽しみだ。
今日聴いたアルバム。

隠語でジャズマンたちのことを“CATS”と言うらしい。猫をあしらったジャケットなのだが、今ひとつかわいくない。ジャズのジャケットに猫が使われることは上記の件もあってそこそこあるのだが、あまり猫好きの人が喜ぶような愛らしいものは少ない気がする。

ザ・キャット

ザ・キャット

猫のジャケットで思い出してこれも聴く。ジミー・スミスのオルガンはいつものようにイケイケぶんぶんで快調に飛ばしている。この猫もかわいいとは言いがたいな。