『波』にのる小林信彦。


 仕事を終えて若い知人の博士号取得祝賀会に参加する。有名某国立大学の研究室にいて若くして博士号を取得したのだ。
 NASAの図書館で埋もれていた資料を発見する話を楽しく聞く。


 本屋で『週刊文春』と仕事の本を1冊買って帰宅。まだちくま文庫の新刊は並んでいなかった。


 『週刊文春』から坪内祐三文庫本を狙え!」を読む。今回は扶桑社文庫から再刊された小林信彦紳士同盟」。この作品が『週刊サンケイ』に連載されていた1979年からの数年の小林信彦氏の充実振りを坪内さんは指摘しているが、「悪魔の下回り」、「夢の砦」、「ちはやふる奥の細道」を続けて連載していたこの時期がひとつのピークであったことは疑いようがない。その中でも「ちはやふる奥の細道」を〈その最高傑作ともいえる〉と坪内さんは言っている。この作品が連載されていた『波』を高校の図書館で毎月楽しみに読んでいたことを思い出した。

 当時すでに充分小林信彦フリークであった僕は、連載第1回を読んだ時点で、W.C.フラナガンが架空の人物であり、小林氏による創作であることを見破っていた(まあ、ほとんどの人が分かっていたと思うけど)。しかし、その自分の慧眼を自慢げに語る文学好きのクラスメイトは誰もおらず、休み時間に教室でクリスティの文庫本を読んでいるだけで「ガリ勉」、「出世を求める出世マン」と言われるような非文化的な学校での生活を慰めてくれるのは昼休みに足を運ぶ図書館だけだった。そこで僕は『波』や庄司薫「ぼくが猫語を話せるわけ」を少しずつ読みながら、息苦しく感じる時もある男子校の3年間を過ごしていたのだった。


 新潮文庫を持っているが、やはりこの扶桑社文庫も買って再読しようかと思う。

紳士同盟 (扶桑社文庫 (こ13-1))

紳士同盟 (扶桑社文庫 (こ13-1))