何回でもカツカレー。


 今日は、職場挙げての野外イベントの日。時折みぞれの混じる小雨の降る中で行われたこのイベントに20回以上参加しているが、今日が一番寒かったのではないかと思う。


 イベント会場で出されるカツカレーで昼食を済ませ現地解散。仕事終わりが早いのがこのイベントの一番の魅力と言っていいだろう。


 帰りの車内で気が重くなることがあった。自分に責任のあることなので、それを責められるのは仕方ないのだが、もう何年も前に起こってしまったことを変えることはできないし、直接責められるのであれば、何度も謝罪するのだが、ただ遠くからその話が聞こえてくる状況ではどうしようもなく、ただ本に目を走らせていた。


 関係者のいなくなった電車に乗ってそのまま一本で行ける神保町へ出る。気分転換のためのアイテムがここにはあれこれ揃っているのだ。



 東京堂書店で本を買う。


寺島靖国 テラシマ円盤堂: 曰く因縁、音のよいJAZZ CDご紹介 (ONTOMO MOOK)
絶景本棚
臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)



 ジャズ喫茶「Meg」のオーナーでジャズ評論家の寺島靖国氏のムック本。アナログレコードの事にもっと触れてくれているかと思って買ったのだが、取り上げられているジャズアルバムはほとんどCDだった。それでもテラシマさんの語るジャズアルバムやオーディオ話は好きなので構わない。

 「絶景本棚」は『本の雑誌』の巻頭連載“本棚が見たい!”を書籍化したもの。本のカバー写真にも使われ、第2章不撓不屈篇に登場する根岸邸は何度もお邪魔しているので、我が事のように胸がときめく。まあ、行ったことのない家の知らない人の本棚でも胸はときめくのだけど。

 詩人の文月さんは一度古書往来座での外市の時にお見かけしたことがある。まだ大学生で中原中也賞を受賞した詩人だと教えられ、現役の詩人を初めて目の当たりにして呆けたように「ああ、詩人が目の前にいる」と思ったことを思い出す。詩人の書く散文というのは小説家や随筆家や評論家の書く散文よりもちょっと贅沢な気がするのは自分だけだろうか。



 暗い気持ちを振り払うためには、好きなものを買い、好きなものを食べるのがいいと思っている。今日昼に食べたカツカレーなどは好きなものの1つなのだが、数年前から糖質制限のようなことをやっているのでほとんど食べなくなっていた。今日食べたのも職場から配給された食券がカツカレーだったからだ。でも、やはりカツカレーは好きだと食べて再確認した。そして、今は好きなものを思い切り食べるべき時だ。そうであるならば、カツカレーを食べよう。数時間前に食べたからといって何を遠慮することがある。すでに軽く空腹を胃のあたりに感じているではないか。このすずらん通りにはあの“キッチン南海”がある。ずいぶんあの店のカツカレーを食べていない。そういえば、最近この店が閉店するという誤報がネットで流され、もうあのカツカレーが食べられなくなるのかとガッカリしたではないか。「店をやめるつもりはない」という店主の方のコメントをネットで読み、よかったまた食べられると思ったではないか。それなら何をためらうことがあるとキッチン南海の前に立つ。


 これだけ自分に言い訳したのは、流石にカツカレーのハシゴはやったことがなく、最近の糖質制限を大きく逸脱するこの行為に踏み切るために必要なプロセスだったということだろう。店に入り、カツカレーを頼む。他の客の注文もやはり7割方カツカレーだった。ちょっと気になったのは、その7割の人の5割が(何か紛らわしい言い方だな)「ご飯少なめで」と言い添えていることだ。前に来ていた時は女性で言う人はいたが、男性ではあまり聞いたことがなかった。僕と同じように糖質を気にしている人が増えたということだろうか。こちらはその制限を撤廃して来ているのでそんなことは言わない。ただ、久しぶりに見たそのライスの量の多さは記憶を凌駕していたのでそう言いたい気持ちはよくわかった。ご無沙汰していたここの真っ黒なカツカレーはやはり美味しかった。食べてよかった。しかし、夕食は抜かないと糖質だけの問題ではなく明らかに食べ過ぎだな。



 好きなものは本だけではなく、ジャズのアナログレコードもそうなので、diskunion神保町店へ。

  • エディ・コスタ「ザ・ハウス・オブ・ブルーライツ」
  • バド・パウエル「ブルース・イン・ザ・クロゼット」
  • プレスティッジ・オール・スターズ「ルーツ」


ハウス・オブ・ブルー・ライツ
ブルース・イン・ザ・クロゼット
Roots



 エディ・コスタ盤はジャケットにパンチ穴が開いているため300円で買えた。盤面の状態はAだから何の問題もない。
 パウエルは前期の神がかったものよりも、後期の良かったり悪かったりする人間臭いものの方がしっくりくる。このレコードは悪かった時期の良かったものと位置付けられている。
 「ルーツ」はオールスターのジャムセッション。A面のピアノをビル・エバンスが弾いているというのが売りらしい。B面はトミー・フラナガンがピアノ。フロントラインにあまり聴いたことのない奏者が入っているのもこの手のアルバムの面白いところ。




 帰宅して、買って来たレコードをかけながら、高田漣のCDを探す。昨日急逝した俳優の大杉漣がその名前を敬愛する歌手・高田渡の息子の名前からもらったと知り、それならギタリストとして活動している高田漣じゃないかと思ったからだ。アン・サリーの参加しているアルバムを集めていて、高田漣のアルバムに出会った。REN TAKADA「WONDERFUL WORLD」の表題曲でアン・サリー嬢が歌を歌っている。


Wonderful World


 昨晩、放送されたテレビ東京バイプレイヤーズ」は、映画界華やかかりし頃のオールスターによる正月映画のような豪華さだった。男性・女性のバイプレイヤーたちがこれでもかと出てきて、大杉漣逝去の報を聴いて観ているとまるで何かのはなむけのような印象さえ受けた。このドラマ撮影中に倒れたのだという。残り2話分が放送されるのかが気になる。