聖夜の伯父さん。


 23日・24日の土日ともに仕事だったので、今日は休みを取った。


 知人からシュトーレンのお礼にともらったLUSHの入浴剤を入れて朝風呂に入る。”ドラゴンの卵”という名前のまるでドラゴンボールかと思うような球体を湯船に放り込み、湯面がカラフルに泡立つのをしばし眺める。魔女の煮る鍋の中に入っているような不思議な感じを抱きながら、神田松之丞の講談「慶安太平記 宇都谷峠」を聴く。先週聞いた「箱根の惨劇」の前段に当たる話だ。気がつくと小一時間風呂場で過ごしていた。


 10時過ぎに家を出て、電車で日比谷へ向かう。今日はTOHOシネマズ日劇で「スターウォーズ・最後のジェダイ」を観る予定。車内の読書はこれ。


TOKYO海月通信


 年末に出る『サンデー毎日』連載のコラムをまとめたこのシリーズを読むと「ああ、年の瀬だなあ」とオートマティックに思うようになっている。銀座に近い月島に住んでいる中野さんのコラムには銀座周辺がよく登場するので、銀座周辺へ向かう今日にうってつけの一冊だろう。


 正午頃に日比谷駅に着き、歩いて銀座方面へ。マリオン周辺のモスバーガーで昼食を済ませ、マリオン11階の日劇へ上がる。月曜日なのでauマンデーで700円割引でチケットを入手。さすがにウィークデーの13時の回は空いていた。この手のスペースオペラ(もはや死語であろうか)はやはり大きなハコで観たい。となればここになる。宇宙空間に文字が流れていくオープニングに続いて「ジャーン」という大音声とともに“STARWARS”のロゴがバーンとスクリーンに大写し。水戸黄門の印籠のように「おお、来た来た」ってなもんでテンションが上がる。「フォースの覚醒」のラストで登場したルーク・スカイウォーカーマーク・ハミル)が思いの外出番が多く、レイア姫キャリー・フィッシャー)との再会シーンには同窓会で何十年ぶりに小学校時代のクラスメイトに会ったような気分を感じる。まあ、それが味わいたくて観に来ているようなものだけどね。ダース・ベイダーの孫にあたるカイロ・レンと彼の伯父にあたるルークとの決闘は第1作のベイダーとオビワン・ケノービーとの戦いを思い出させる。ベイダーがオビワンを殺せなかったようにカイロ・レンもルークを殺すことができない。レンがルークに向かって物凄い火器の一斉放射を行った後に何事もなく煙の中から現れたルークが、ちょっと服のホコリを払うシーンで観ているこちらはニヤリとする。こういうユーモアを忘れないところがハリウッド映画のいいところだと思う。



 映画館を出て、本の教文館へ。銀座へ映画を観にいくという行為はここで本を買うという行為とセットのようなものだ。今日はこれを選ぶ。

  • 伊丹十三「ぼくの伯父さん 単行本未収録エッセイ集」(つるとはな)

ぼくの伯父さん 単行本未収録エッセイ集



 60年代と70年代のエッセイや和田誠画伯が絵を添えたカラーページなどがある。文字組も一段組、二段組そして枠線に囲まれたコラム風の三段組などがあり、古の晶文社が出していたバラエティーブックの趣がある。著者の父である映画監督及び文筆家であった伊丹万作のファンである身としては「父、万作のかるた」といったエッセイが載っているだけでも欲しくなる。



 教文館のあとは山野楽器で輸入ジャズレコードを漁る。数は多くないが2階の一角にレコードコーナーがあってここを覗くのが楽しみなのだ。今日はウォルター・ビショップ・ジュニア「スピーク・ロウ」を購入する。モノクロ録音の重量盤。店の外に出ると銀座の街はクリスマスのデコレーションで溢れており、店頭のクリスマスツリーや和光のディスプレイなど至るところでシャッターが切られている。みんななんでそんなに写真を残したがるのだろう。スマホを構える多くの人がそこに自分の姿を入れようとしている。自分が写った写真を観るのがそんなに楽しいのだろうか。自分の写真を見るのが苦痛寄りの人間にはちょっと理解に苦しむんだよな。とりあえず、撮影の邪魔にならないようにすぐに地下鉄の入口に向かう。



スピーク・ロウ<LP> SPEAK LOW<LP> [Analog]



 帰りの車内では、今朝ダウンロード購入しておいた「町山智浩映画ムダ話」の“スターウォーズ 最後のジェダイ”を聴く。この映画がこれまでのスターウォーズのお約束事を色々と破壊している作品であること、そしてスターウォーズの神話とともに世界の神話の構造を壊した世界になっていることを熱く語っている。その他、画面の美しさが繰り返し強調される。確かにレジスタンスが逃げ込んだ塩の惑星での戦闘シーンは以前の作品で描かれた雪の惑星での戦闘を思い出させる白い一面の世界にその下に隠れた赤い塩が舞い立つ見事な絵になっていた。アナキン・スカイウォーカーから始まったスカイウォーカー一家の物語はこの作品で幕を下ろした。次回はどうなっていくのか。中学生から見始めたこのシリーズの完結を生きているうちに観られるのだろうか。予定では次回作は2019年に公開されるというが。



 地元に戻り、駅ビルの本屋で井上ひさし「新版 國語元年」(新潮文庫)を買って帰る。来年のNHK大河ドラマ西郷どん」に合わせた“明治維新150年”記念の新装版の刊行らしい。教文館でも売っていたが、地元の本屋で買えるものは地元で買うことにしているのでここで手に入れた。



新版 國語元年 (新潮文庫) [ 井上 ひさし ]



 帰宅して、今日がクリスマスその日であることをネット等で知る。そうか、今日なのか。もう11月の初めからクリスマス仕様の街で生活しているのでいつがクリスマス当日であるかという感覚がなくなってしまったよ。クリスマスのケーキであるシュトーレンは残念ながら職場の冷蔵庫の中。代わりに毎年聴いているビング・クロスビーホワイト・クリスマス」のレコードを出して聴く。クリスマスへの挨拶を済ませた後は、今日買ってきた「スピーク・ロウ」を聴いた。



ホワイト・クリスマス