吾輩は後輩である。

 今日は屋内仕事がない日のため、午後6時前に退勤。

 花粉アレルギー用の目薬が切れかかっているので、眼科へ行く。杉から檜に変わり、くしゃみから咳へと僕の症状も移行している。梅雨になればマスクが手放せるが、目は一年中何かの花粉に反応しているから目薬は欠かさない。


 眼科を出て、薬局で目薬を購入してから本屋へ。


 昨日本を買えなかった鬱憤を晴らすつもりで棚を見回すとまずこちらが目に入る。


あとは野となれ大和撫子 (角川書店単行本)


 帯にある“直木賞芥川賞ダブルノミネートで最注目の俊英”という表現に編集者のちょっと息んだ感じが伺えて微笑ましい。詩のイベントでお見かけしたり、田中圭一「うつヌケ」(角川書店)を読んだりしたこともあり、興味を持っている作家のひとり。この手の題名のつけ方も好きですね。


次に文庫新刊からこれ。


滝田樗陰 - 『中央公論』名編集者の生涯 (中公文庫)


 中公新書に入っていた「滝田樗陰 ある編集者の生涯」に谷崎や芥川の樗陰追悼記と娘の回想記を増補して文庫化している。新書版を以前に面白く読んだ記憶があり、迷わず購入。中公文庫の王道であり、古の肌色文庫の名に恥じない1冊。


 さてレジへ向かおうかとした時に文芸書関係の棚の一番下にビニールでラッピングされたこの本を発見する。この店では買えないだろうと思って昨日神保町に寄ろうとしたのだが、なんとここで売っていようとは。重さも値段も気にせずレジへ。

  • ジェイムス・キャントン他著・沼野充義日本語版監修・越前敏弥訳「世界文学大図鑑」(三省堂

世界文学大図鑑


 図鑑なので、文字情報だけではなく、イラストや写真、図版が豊富に入っていてめくって眺めるだけでも楽しい。世界文学の作品が年代順に出てくる。日本文学ももちろん世界文学の一つであるから「源氏物語」も前の方に登場している。国別ではなく、年代別であるから様々な国の作品が横並びで出てくるのが面白い。「奥の細道」「曽根崎心中」と続いた次のページに「ロビンソン・クルーソー」が並んでいる斬新さ。そうか同じ時代の作品だったのだと驚く。そして「ロビンソン・クルーソー」のページにはその7年後に出版される「ガリバー旅行記」との比較が載っているのもうれしい。この2作品を子供の頃絵本などで読み、文学や英国に目覚めて行くことになったと言っても過言ではないのだから。1900年代に入ると、見開きの左が「バスカヴィル家の犬」で、右が「吾輩は猫である」という奇跡のようなページがある。前者が1901年、後者は1910年だ。「吾輩」はバスカヴィル家の犬の後輩になるのか。そして現代に入ると村上春樹作品が登場する。そうか、著者たちはこれを選んだのかと思う。日本人の著者たちだったらどの作品を選ぶのかを考えてみるのも面白いかな。
 また、翻訳をしている越前敏弥氏には「翻訳百景」(角川新書)という著作があり、翻訳者の生活や舞台裏を興味深く書いた本として面白く読んだ。腕のいい翻訳家であることはその本からも分かるのだが、このような時代や国も多岐にわたる内容の本を一人で翻訳する大変さは容易に想像できる。お見事。



翻訳百景 (角川新書)