猫と牛。


 悪夢のような2週間が終わり、放心状態に近い感じで日曜を迎える。


 今日は夕方地元で友人と会う以外に予定はなく、積極的に外出するような気分でもないため、午前中は寝床でぼんやりTVを観る。


 仕事がなく家にいられる日曜日の昼によく観るのが、国分太一とケンタロウがやっている「男子ごはん」という料理番組。今日はビーフシチューを作っていた。これを観ていたら無性にビーフシチューが食べたくなる。今夜は友人も惚れ込んでいる地元の料理屋でビーフシチューを食べることに決める。


 午後、やっと本でも読もうかという気力が出てきたので、金井美恵子「猫の一年」(文藝春秋)を読み出す。5年前のドイツワールドカップの話題から始まる。昨年南アフリカワールドカップを経験した今となっては遥か昔のことのような気がする。それにしてもスカパーの欧州サッカー中継や雑誌『ナンバー』までチェックしている熱烈なサッカーへの思いになんだかあてられる。


 僕の方も去年のワールドカップ、今年のアジアカップという流れの中でここ数年では一番サッカー熱が高くなっており、長友のインテルでの勇姿を観たいし、他の欧州リーグもチェックしなければ(なぜ?)と思い、「猫の一年」を閉じてwowowとスカパーの欧州サッカー系チャンネルの契約をネットでしてしまう。


 これで安心して読書が続けられるとまた「猫の一年」を読み続ける。気がつけば日も暮れかけており、友人と待ち合せをしている駅前へ向かう。


 街に出てみるとまだ時間があったので中央通りにある本屋に寄る。わめぞのみちくさ市が出てくると聞いたこのコミックスを見つけた。

くおんの森 3 (リュウコミックス)

くおんの森 3 (リュウコミックス)

 1、2巻ともに読んでいないのだがこんな機会でもないと未知の漫画家の作品を手に取ることがないため、構わず買ってみる。


 駅前に行くとすでに友人は来ていた。早速、予定していた料理屋に行ってみると日曜定休であった。そうだ、以前にも同じようなことがあったのにすっかり忘れていた。ここのうまいビーフシチューを思い描いて昼飯さえ抜いてきたのにどうしたらいいのかと振り返ると道路の反対側にある洋食屋の店前に“今日の定食 ビーフシチュー”とあるのを発見。そこに入る。


 「死んだ父親の遺品を最近整理していたら本が結構出てきたんだ」という友人は僕が興味を持ちそうな文庫を数冊選んで持ってきてくれる。「江戸切絵図集」(角川文庫)、鹿島萬兵衛「江戸の夕栄」(中公文庫)、久保田万太郎「春泥・花冷え」(岩波文庫)など。


 お目当てのビーフシチューは悪くはないのだが、僕にはちょっと味が上品すぎる感じ。それと僕の席の正面にある壁には少年に引かれて行く牛の絵が。ドナドナのようでなんだか肉が食べにくいよ。


 友人と別れ、駅ビルの本屋へ。

本の雑誌 333号

本の雑誌 333号



 帰宅して、買ってきた『本の雑誌』を読む。冒険本・探検本の特集なのだが、新編集長の浜本茂氏と坪内祐三氏が“名編集長養成虎の穴”の第1回として滝田樗陰について対談しているのが目につく。3回連続で連載されるらしい。
 「坪内祐三の読書日記」に出てくる蓮實重彦氏によるフランス語の教科書「フランス語の余白に」(朝日出版社)が気になる。読んでみたい。考えれば大学時代の第2外国語はフランス語だったしね。その時代に買った「クラウン仏和辞典」の編者の1人に山田稔という名前が並んでいたことに気づいたのはつい最近。懐かしさとともに別の愛着も感じ始めたので、捨てずに取っておこうと決める。

クラウン仏和辞典

クラウン仏和辞典

これは僕が持っているものではなくて、2001年版のもの。編者に多田道太郎氏の名前も見える。



 「くおんの森」ものぞいてみる。みちくさ市が出てくるのは漫画本編ではなくて、おまけとして挿入されているページに“いちにちふるほんや”という漫画エッセイとして載っていた。あの暑かったみちくさ市を思い出した。