マイスターたちとの宴。


 今日は何もない日曜日。8時まで寝ている。


 朝風呂に浸かりながら、「角川映画主題歌集」(EMI)を聴く。「人間の証明」、「野性の証明」、「スローなブギにしてくれ」、「セーラー服と機関銃」、「探偵物語」、「時をかける少女」、「愛情物語」、「メインテーマ」、「Woman “Wの悲劇”より」など懐かしい曲がてんこ盛り。先日、フジテレビの歌番組で薬師丸ひろ子原田知世角川映画の主題歌を歌っていたのを観て、思わず聴き直したくなってしまった。自分の学生時代が角川映画とともにあったことを実感する。


角川映画主題歌集

角川映画主題歌集



 コンビニで買っておいたチーズグラタンとごぼうサラダに冷蔵庫にあった卵で作ったオムレツを添えた遅い朝食を食べてから家を出る。


 父親の命日がつい先日だったので、今日は墓参りに行くつもりなのだ。埼玉までそれなりに時間のかかる道中となるため、ゆっくり本が読める。今日は町山智浩「最も危険なアメリカ映画」(集英社インターナショナル)をカバンに入れる。



 D.W.グリフィスが「國民の創生」でKKKを復活させ、ウォルト・ディズニーが「空軍力の勝利」で東京大空襲を招来しているうちに霊園の最寄駅に到着。駅前のコンビニで線香とお供え用の缶ビールと缶コーヒーを買ってタクシーに乗る。霊園まではワンメーターで到着。川沿いにあるこの場所は冷たく強い北風が吹き抜けて行く。最近弟家族が訪れた後らしく、墓周りは綺麗に掃除され、花も供えられている。これでは、不肖の兄貴はほとんど何もすることがないな。北風に歯向かうように身を屈めてどうにかこうにか線香に火をつける。花と供え物を入れ替え、冷たい水で濡らした雑巾で墓を拭く。天気はいいが、風が冷たいこの午後に墓参りにくる人影はほとんどない。冷たい手を手袋に包み、タクシーで来た道を帰りは歩いていく。寒さを見越して上下とも防寒の肌着を着込んでいるため、歩いているうちに体が温まって来て、駅に着く頃にはうっすら汗をかいていた。


 この最寄駅から数駅埼玉の奥に入って行くと姫宮の駅があり、そこに知人のパン屋がある。せっかくここまで来たのだからお目当のシュトーレンを買って帰ろう。それにちょうどこの週末にその店が開店2周年の感謝フェアをやっているのだ。


 店の前の駐車スペースは車でほとんど埋まっており、店内は人で賑わっていた。2周年記念の特別メニューを並べるための棚にはすでにパンの姿はなかった。通常品からあれこれ選び、そしてお目当てのシュトーレンもゲット。先日持って行ったクリスマスソングのCDが流れる店内のイートインコーナーで今買ったパンをあれこれ食べていると知人が厚切りの食パンにクラムチャウダーとカレーを乗せたものを持って来てくれる。用意したパンがほぼそこをついてしまったので、とりあえずこれを出して急場をしのぐとのこと。繁盛なのは結構、結構。今日持って来たクリスマスソングのCDを1枚置いて店を出る。




 帰りの乗り換え駅の神保町で下車。東京堂へ。地元で買えない欲しい本をごそっと買い込む。




おすすめ文庫王国2017

おすすめ文庫王国2017

花森安治装釘集成

花森安治装釘集成




 3冊で1万越えの買い物をしたためか、これまでもらった記憶のない東京堂の手提げ紙袋に入った本たちを渡されてまた一層気持ちが高まる。



 本来なら、この後信山社岩波ブックセンターによるところなのだが、倒産のニュースを知ってしまっているため寄る足も出ない。



 神保町からの車内では『おすすめ文庫王国』から坪内祐三「年刊文庫番 集英社文庫の『ポケットマスターピース』は小さな図書館だ」と片岡義男「文庫本オールタイムベストテン 言葉のなかにだけいまもある『日本』をさまよう」に目を通す。



 帰宅して、白菜と鶏肉と油揚げを入れた味噌仕立てのキムチ鍋で夕食。

 食後のデザートはドイツで8年修行してパンのマイスターの資格を得た知人の作ったクリームチーズ入りのシュトーレンと本や装釘のマイスターたちの手になる本を味わう。


 「気がついたらいつも本ばかり読んでいた」の色違いの四角いタイル状のパターンが並んでいるカバーと「花森安治装釘集成」の色違いの水玉模様が並んでる帯の意匠がよく似ていることに気づく。それぞれまるで色とりどりの星がまさに綺羅星のごとく並んでいるようだ。そう思ってみたら『おすすめ文庫王国』の表紙にも色とりどりの猫が並んで描かれているではないか、しかも星の絵まで添えてあった。偶然を楽しむ。