ノッティンヒルは恋人。

 予報が雨から晴に変ってほっとした日曜の朝。


 さて、では雑司ヶ谷みちくさ市へと言いたいところだが、この日曜もご多分に漏れず出張野外仕事であるからそうはいかない。


 県内各地から集まった人々でごった返す会場で一日を過ごす。比較的空き時間があるので、陽光を浴びながらベンチで読みかけだった携帯本を読み継いで読了。


辞書を編む (光文社新書)

辞書を編む (光文社新書)


 「三省堂国語辞典 第六版」の編纂に関わり、今また第七版を編纂中の著者が、その辞書編纂の裏側をあれこれと解説してくれる。どのようにして新しい言葉を辞書に入れるのか、そしてその用例をどのようにして採集するのかという“新規項目”についてと、これまで入っていた言葉の語釈をどのようにブラッシュアップするかの“手入れ”についての話が読みどころ。この本を読んだら今売っている「第六版」を買いたくなるし、今年暮れに刊行予定の「第七版」もきっと欲しくなることうけあい。著者は、大学で講師もしていて授業で「三省堂国語辞典」のよさを力説しても学生たちの手には電子辞書があり、そこに「三国」は入っていないことを嘆く。しかし、昨年スマートフォン向けのアプリとして「三国」第六版が登場し、学生たちに使ってもらえることを喜んでいる。僕も先日ダウンロード済み。著者もおすすめのインデックス機能を使うとちょっと紙の辞書を引いているような感覚が味わえて楽しい。



 次に取り出したのはブルボン小林「マンガホニャララ」。『週刊文春』に連載しているマンガコラムを中心にまとめた本。巻末の対談がピエール瀧というのもうれしい。ブルボン小林こと長嶋有氏はなんどかTBSラジオ「たまむすび」でピエール瀧が出ている木曜日にゲストとして出演しており、その縁でのマッチメイクだろう。コラムで触れているマンガのコマが1つ2つ添付されていて、それがまた作品全体を読んでみたい気にさせるんだよな。やはり、引用も芸のうちだと思う。




 成果も上がらず、ぱっとしなかった野外仕事を終えて帰途、横浜駅西口の有隣堂に寄る。



 雑誌『みすず』連載時からいろんな人が面白いと言っていたエッセイが本になった。僕はやっと2012年12月号に載った最終回に駆け込みで間に合った遅い読者だがその1編だけでも面白さは理解できたので本で最初から読めることを楽しみにしていたのだ。連載された15編の他に新たに2編が書き下ろされているのも喜ばしい。



 それから地元では見つけられなかったこれも。

 


 ウルトラマンを題材として1970年から72年くらいまでの昭和40年代後半の時代と自分史を語る本のようだ。先日購入済みの、ちくま文庫化された岡崎武志「昭和三十年代の匂い」と続けて読んでみるのも面白そうだ。序章において金子修介監督で復活した「ガメラ」を褒めているのを読み、我が意を得た気持ちがする。




 この夏の英国出張が決まってから、自分の中の英国祭りが盛り上がっていて、昨晩もBS朝日でやっていた「ヨーロッパ路地裏紀行」のロンドン・ノッティンヒル編を観てしまう。ポートベローに60年住み続けているミュージシャンとしてアール・オーキンという人物が出てくる。若い頃、ポール・マッカートニーの前座をつとめたというこのミュージシャンを知らなかったが、動画もたくさんアップされていてコメディアンとしても名を知られている人らしい。番組でも彼の代表曲「my room」をライブで演奏するシーンが流れ、人々が意味ありげに笑う様子に斉藤由貴のナレーションが「彼のウイットにあふれた曲に観客が喜んでいる」というようなフォローをしていたが、明らかに下ネタ満載の曲で笑いもそこから出たものだということがわかる(英語の歌詞の意味まで分からないが)。ただ、他のジャズのスタンダードナンバーやボサノバを歌った動画を観れば下ネタだけの人ではないことはすぐわかる。ちょっと気になるなこの人。




 ボートベロー通りで週末に行われるマーケットで1900年頃に作られた銀のスプーンを1本買ったことがある。今も職場で使っている。この通りを舞台とした「ノッティンヒルの恋人」も大好きな映画だ。映画の舞台のモデルになった旅行案内専門の本屋はまだあるのだろうか。また、行ってみたい。