珈琲と砂糖。

 今日の仕事をもって数週間続いた地獄のような日々が一応終わった。「地獄でなぜ悪い」とうそぶく元気もない。ただ、これで心おきなく風邪がひけると思う。ノロもインフルエンザもなんでも来いというガメラ的心境である。


 例年この時期を終えて感じるのは同じ空虚な心象である。終わりはしたが何も成し遂げていないという徒労感であり、昨年同じ思いでした反省が何もいかせず、また同じ事を繰り返しただけだという虚しさである。



 こんな寒々しい事実を愚痴るのはもうやめよう。とにかく終わったのだ。



 退勤して本屋へ。もう、こうなったら今日も本を買うしかない。酒の飲めない男に残されたものは「うつ」と「かう」しかないが、「うつ」は「鬱状態」で充分だから、あとは「買う」だけだ。


珈琲挽き (講談社文芸文庫)

珈琲挽き (講談社文芸文庫)

群像 2014年 03月号 [雑誌]

群像 2014年 03月号 [雑誌]





 「辞書になった男」は昨日神保町でも見かけたのだが、文藝春秋の本なら地元の本屋でも買えるはずとスルーしておいた本。「新明解国語辞典」の山田忠雄、「三省堂国語辞典」の見坊豪紀という辞書編纂者の両雄の関係を描いたドキュメンタリー番組(NHKBSプレミアム特番「ケンボー先生と山田先生〜辞書に人生を捧げた二人の男」2013年4月29日放送)を書籍にしたもの。この両雄についてなら既に武藤康史さんが「明解物語」(三省堂)という魅力ある本にまとめている。「辞書になった男」でも、ちゃんとその武藤さんにインタビューをしており、しっかり先達を敬しているではないかとうれしくなった。

 「珈琲挽き」も昨日チェック済み。これも地元でと今日になった。短い文章が詰まった随筆集。後半にロンドンについての文章がいくつか入っているのも楽しい。また、自分の事が書かれているのかと一瞬ドキッとする文章があるのも個人的なツボだった。カバーが珈琲を意識した色になっているのもいい。

 『群像』は昨日買った『BOOK5』の片岡義男特集の影響から手に取った。片岡義男「3つの短編」が掲載されているのだ。題の通りに小振りの短編が3つ載っている。『BOOK5』とともに楽しみたいね。



 帰宅して最近手に入れたこのCDを聴く。

  • RODRIGUEZ「COLD FACT」

Cold Fact

Cold Fact


 先日WOWOWで放送したドキュメンタリー映画シュガーマン」を観た。その映画の主人公である無名のアメリカの歌手ロドリゲスのファーストアルバムが、自身の知らないうちに南アメリカでミリオンセラーとなっていたという話。このアルバムに入っている「シュガーマン」という曲が映画の題名にもなっている。“シュガーマン”というのは麻薬の売人のこと。その事からも分かるように社会的問題を歌った歌詞が多いのだが、変にとんがらず哀愁のあるメロディとあいまってちょっと昔のフォークソングのような懐かしさを感じる。

 何十年も忘れられていたロドリゲスが初めて歌手として脚光を浴びるのだが、浮き足立つ事もなく淡々としているその姿がなんとも言えずいい。老人となった彼が雪のデトロイトをただ歩く。それがまたいい。