二本の橋。

 今日は休み。


 天気予報は最高気温6度とのたまっているので、まるでトレッキングに行くような格好で家を出る。もちろん、山には行かない、映画に行くのだ。


 10時過ぎの回なのだが、初めてのネット予約のため現地で発券をしなければならず、やり方を知らない不安から早めに行く。クレジットカード払いなので端末に指定したカードを入れるとニュッと券が出てきた。今時の映画館はこんなことになっているのか。


 上映時間まで30分以上あるため近くのスタバで本を読んで時間をつぶす。携帯本は読みさしだった岡崎武志「上京する文學」(新日本出版社)。太宰治の章では彼が住んでいた三鷹の話が出てくる。ちょうど昨日の晩、「孤独のグルメ」最終回を見ていてそれが三鷹を舞台としていたので奇遇。太宰が好んで立った昭和4年建造の三鷹跨線橋が今もまだ使われているそうだ。「孤独のグルメ」には出てこなかったが、今度三鷹に行く機会があったら行ってみよう。


上京する文學―漱石から春樹まで

上京する文學―漱石から春樹まで



 川崎駅近くのIMAXシアターで「007スカイフォール」を観る。実は初めてエグゼクティブシートなるものを予約してしまったので、もし僕以外はみんな普通シートだったら「なにあいつだけカッコつけてんだよ」なんて思われるんじゃないかとちょっとシート選択を後悔していたのだが、僕が会場に足を踏み入れた時にはむしろ客はエグゼクティブシートにしかいないという状態でホッとした。IMAXも初体験。本編前のデモンストレーションではなんだか五月蝿すぎて失敗したかなと思ったが始まってしまったら気にならなかった。


 007恒例のファーストシーン。あれよあれよという間にチェイスが始まって気がつけば作品世界に入り込んでいる。今回も見事にそれをやってくれる。この手の込んだ豪華さはやはり洋画の華だ。これは邦画にはできない(というか必要ない)。今回の作品は、意図的に過去の007シリーズへのオマージュとなっている。特に「ゴールドフィンガー」に出てきたアストンマーチンの登場場面ではテンションが一段上がった。アストンマーチンスコットランドの自然の中を走る俯瞰のシーンはやはり大画面で観てよかったと思う。



 川崎からJRで品川に出て山手線で新宿へ。それから京王線に乗り換えて芦花公園へ。世田谷文学館に到着。入口前の展示案内を見て「おや」と思い、カウンターで「すみません、松本竣介展は?」と聞いたら、「それは世田谷美術館の方ですね、砧の。」と言われてしまう。なんという勘違い。頭から世田谷文学館でやっているものと思い込んでいた。ネットで検索して開館期間や時間までチェックしていたのにそれが「世田谷文学館」ではなくて「世田谷美術館」であったことにまったく気づいていなかったとは。カウンターの女性が優しく教えてくれたので救われたが、その場から逃げ出したくなるような恥ずかしさを感じながら文学館を後にする。


 急いで用賀まで行き、バスで世田谷美術館へ。ここに来るのは初めてだ。間違いようがないくらい「松本竣介展」の大きな看板が立っている。とりあえず、無事に辿り着いてほっとした。


 これまで宮城県美術館で行われた洲之内徹コレクションなどで松本竣介作品を幾つか見たことはあったが、これだけの作品を見たのは初めてだ。絵はまったくの素人だから、とりあえずただ見るだけなのだが、それでも作品によって受ける印象は異なる。それが自分でも面白い。やはり、青を基調とした作品に好感を持つ。特に印象に残ったのは「立てる像」を中心とした立像の4枚。実物がこんなに大きなサイズだったとは知らなかった。これも実物を見てみないとわからないよな。


 パンフレットの表紙にもなっている「Y市の橋」が多くのバリエーションを持った作品であることも初めて知った。横浜駅近くにあるこの橋もいわば跨線橋に近い。さっき読んだ三鷹跨線橋を思い出した。


 図録を買って外へ出る。この百科事典並みに厚い本が2000円ちょっとというのは安いと思う。



 田園調布駅行きのバスに乗って帰る。