亀と菓子。

 今日は職場の年に何度かある大きなイベントの日。特に忙しく動くわけではなく、むしろそれなりの時間じっと静かに気を張っていなければならない仕事の日だ。


 特別な日のため昼は弁当が出る。折り詰め弁当の“いできはじめの祖”と呼ばれる老舗のこの弁当が好きなので個人的にうれしい。甘めの煮物と甘い豆きんとんがいいんだよな。


 夕方に仕事は終了。体は疲れていないはずだが、なぜか毎年この日はぐったりと疲れる。退勤時間後、あまり長く残らずに職場を後にする。



 歩いて隣町にある知人のパン屋に行く。ドイツでクリスマスシーズンに食べられるという焼き菓子が並んでいる。この店のこれがとても美味いので昨年も10個以上買ったのだが、今年もこれが食べられる時期になったのがうれしくて2種類買い込む。



 ずしりと思い菓子を手にあゆみBOOKSへ。2週間前もこの店に岡崎武志「上京する文學」(新日本出版社)を探しにきた。それからも探し続けているのだが未だに入手できず。地元の本屋にはもう入荷しないとあきらめているが、ここにはもう入っているのではないかと一縷の望みをかけて棚を見る。「ご家庭にあった本」(筑摩書房)は常備してくれているのに残念ながら「上京する文學」は今日も見当たらない。読みたいならネットで注文してしまえばいいのだが、意地っ張りなので地べたの本屋で手に入れることにこだわって今日に至っている。まあ、しょうがない気長に探そう。


 欲しい本が買えないストレスは、他の欲しい本で発散するしかない。そう思って店内を徘徊するとありました欲しい本たちが。


なんらかの事情

なんらかの事情

亀のひみつ

亀のひみつ

フリースタイル20 映画をつくろう! /松本大洋、「侍」を描く!

フリースタイル20 映画をつくろう! /松本大洋、「侍」を描く!



 岸本本は『ちくま』連載の「ネにもつタイプ」からセレクトされたエッセイ集。全部を載せないというところがなんだかいい。


 田中さんの本はこれもずうっと探していたのに出会えず今日やっと会えた。この店にもこれまでなかったのにと思い奥付をみたら2刷になったんですね。それでここにも届いたわけか。


 『フリースタイル』は毎号買っている雑誌。地元の本屋では手に入らないのでありがたい。


 駅前の王将でラーメンセット。ついこの間までは土曜のこの時間は満員で入れなかったが、「アメトーク」バブルも一段落したということなのかすんなりと入店できた。2日続けて餃子を食べる。王将の餃子も悪くない。ここの餃子ダレはもともと酢の配合が多めなのも好みに合っているし。



 帰宅し、『フリースタイル』をぱらぱら。高島俊男さんが「かなづかいの話」というエッセイを書いている。この雑誌と高島さんという取り合わせがなんだか異色で面白い。40人ほどが気になるものを3つ挙げる巻頭のコーナーでは、複数の人が橋本治浄瑠璃を読もう」(新潮社)と山田宏一トリュフォーの手紙」(平凡社)を挙げていて気になる。例えば前者では佐久間文子さん、後者では小西康陽さんなど。

 小西さんと言えば「お会いしたかったんです。」という連載インタビューの第二回として小泉今日子インタビューが載っている。これは先日発売された小泉今日子ニューアルバム「Koizumi Chansonnier」(VICTOR)に小西さんが楽曲の提供と編曲をしていることによる人選のようだ。このアルバムを持っているので興味深くインタビューを読む。キョンキョンに「真っ赤な女の子」(1983)を聴いて以来いかれてしまったという小西さんが「すごい」を連発しているのがなにやら微笑ましい。



 『フリースタイル』を見終えてから、ここ数日読み続けている横田増生「評伝ナンシー関」(朝日新聞出版)を手に取り、最後まで読み終える。
この本が出ていたことは知っていたのだが、なんとなく「ナンシーの評伝なんて、けっ」と遠巻きにして敬遠していた。それが最近になって信のおける人が褒めていたを読んで考えを改めて購入したのだ。読みはじめてすぐに買ってよかったと思った。著者はナンシー関に関わる多くの人に話を聞き、著書や未収録の文章にも目を通して関直美の誕生からナンシー関の死までを丹念に追っている。読了後、ナンシー関を好きでよかったなあと思う。部屋のあちらこちらに散らばっているはずのナンシーの著作をかき集めてみたくなる。現在、朝日文庫・角川文庫・文春文庫に分かれている彼女の文章を集めた本当の意味の“ナンシー関大全”を出してほしいものだな。もちろん、文章に付けられた消しゴム版画はすべてセットで収録し、人名索引を必ず付けてほしい。評伝の著者がやっているように一人の芸能人に対してナンシーが何を言い、そしてどう言い続けたのかを辿れるように。人々が“まとも”でいられるように手に一冊のナンシーを。


評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」