日本特価書籍という購買装置。


 珍しく仕事が半ドンで終わる。


 今週、2つほどの厄介な仕事をなんとかくぐり抜け心と身体の疲労がずしりと自分にのしかかってきているため、やり残しの仕事は明日の休日出勤でやることにして、神保町行きの電車に乗り込む。


 本を読むには眠すぎるのでポッドキャストの「小島慶子 キラ☆キラ」を聴きながら半覚半睡の状態で地下鉄に揺られていく。


 
 まだ昼食をとっていないため久しぶりに丸香へと向かうが、もう午後2時だというのに10人以上の行列と肉うどんが終わっていたのであきらめてさぼうる2へ。


 もちろんナポリタン。いつも通りの味なのだが、食べ飽きない。量も十分。


 東京堂に入ると地元では手に入らなかった本があれこれと並んでいる。それらを眺め、手に取る喜び。このためにここまで来たのだ。


 3階で欲しかった本を買う。

未来ちゃん

未来ちゃん


 東京堂のリトルプレスコーナーはふくろう店からまたこちらに戻ったようなのだが、ふくろう店にもまだその名残が感じられなんだか拡散している印象を受ける。いろいろと試行錯誤をしているのだと思うが、3階のリトルプレスコーナーの充実とふくろう店のポジションの明確化を期待したいな。そういえば、ふくろう店のオリジナルブックカバーが浅生ハルミンさんのものになっていた。


 三省堂の4階へ。

  • 『フリースタイル』15

フリースタイル15 特集:FIRST DIALOGUE はじめての対話

フリースタイル15 特集:FIRST DIALOGUE はじめての対話


 毎号買っている雑誌なのだが、最新号が出ていたのを知らなかった。特集は“はじめての対話”。小室哲哉×小西康陽呉智英×堀井憲一郎といった面白そうな対談が並んでいる。



 古書店の店先のワゴンを眺めながら歩く。悠久堂書店のワゴンから100円で1冊。


 書泉グランデの正面左脇の棚(ここがけっこう侮れない)をチェックし、タテキン、コミガレを覗き、岩波ブックセンター経由で日本特価書籍へといういつものコース。


 日本特価書籍に入ってみると普段とちょっと様子が違う。棚のあちらこちらが空いており、入口左壁側の棚には特価本とは明らかに違う古本が並んでいる。

 おやこれはと訝しがりながら店内を周遊しているとレジにいた店の方が常連と思われる客に「実は、いろいろ事情がありまして8月いっぱいで新刊の販売をやめることになりました」と話しているではないか。
 日本特価書籍が8月いっぱいで消えてしまう。なんと言うことだと一瞬耳を疑った。しかし、先ほどから見ている店の雰囲気はまさにその言葉を裏付けているとしか言いようがないものだ。


 思えば大学生の時からほぼ四半世紀この店で1割引の新刊を買い続けて来た。その数は優に三桁に達している。書肆アクセスがなくなって以来、神保町を訪れる楽しみの半分近くはこの店で欲しい本を安く新刊で買うことだったことを思うとこの情報はかなり強い衝撃であった。


 この話を聞いたため、少しでも長年愛用した店に恩返しをしたくなり、手に持っていた文庫本の他に興味のあった値のはる単行本も買うことにする。

資生堂という文化装置 1872-1945

資生堂という文化装置 1872-1945



 前者はジョンソン博士の小説の朱牟田夏雄訳。この組み合わせとなれば持っていたい。
 後者は資生堂を通してモダン都市文化を俯瞰しようとする本。著者の和田氏は坂口安吾論を含む「単独者の場所」という本で初めて知り、それ以来気になっている研究者のひとり。化粧品メーカーとしての資生堂にはほとんど興味はないのだが、池波正太郎に導かれて移転前の資生堂パーラーでハヤシライスを食べた者としては“文化装置としての資生堂”には興味があるのだ。実際この本では資生堂パーラーについて1章が割かれている。


 会計をする時に、店の方に直接聞いてみたが、やはり8月いっぱいで新刊の扱いはやめるということであった。


 好きな本を買ったもののどこか寂しさを感じながらいつもの神田伯刺西爾へ向かう。しかし、土曜の午後の伯刺西爾は多くの客で賑わっており、僕の座る席はなかった。


 そこで、これまで何度となく前を通ったが一度も入ったことのなかったさぼうるの隣にあるJAZZ CAFE BAR「BIGBOY」に寄ってみることにする。清潔な店内に設えられた大きなJBLのスピーカーからリー・モーガンのライブ盤が流れている。窓際に並べられたBLUENOTEレーベルのLPのジャケットが何とも言えずカッコいい。アイスコーヒーとスコーンを頼み、しばしジャズ喫茶の雰囲気を楽しむ。



 帰宅して買ってきた『ほんまに』を眺める。特集は“中島らもの書棚”なのだが、僕には北村知之さんの「アカヘル読書日記」の方が興味深い。ひさしぶりに北村さんの散文を読む。日記の中にチェーホフ小沢信男という名前が出てくる。今日買った本との関わりを感じてそれだけで楽しくなる。北村さんご結婚されたのだなあ、ロジェ・グルニエチェーホフの感じ」(みすず書房)をまだ入手されていなのだなあ、と舐めるように読んでしまう。この読書日記には連載を示す番号がふられていない。単発の企画なのかもしれないが、連載で毎号読んでみたいとほんまに思う。