霙をぬぐい、雪をはたく。


 朝、職場で悲しいニュースを聞いた。

 2日前、大学時代の友人たちと渋谷で万歳三唱をしていた時にすでにそんなことになっていようとは思いもしなかった。ネットで見たニュースが自分の知り合いの身に起こったことだったとは。しかし、感傷に浸る間もなく時間に追われる仕事が始まった。今日はストレスと緊張が全身をしびれさせてくれるような仕事をこなさなければならないのである。


 なんとか大過なく仕事を終え、同僚と外へ出ると霙まじりの雨が降っていた。自然2人の話は悲しいニュースについてとなる。傘にあたる強く冷たい粒が話の内容に似合いすぎてつらい。


 本屋へ。

随筆集 一私小説書きの弁

随筆集 一私小説書きの弁


 現代の私小説家として名を知られた作家の第一随筆集だ。角書きとして随筆集と入れるのが文士の末裔というイメージにしっくりくる。何色というのだろう饐えた青のようなカバーが、これも誂えたように似合っている。
 中身はこれまで書いてきた小説以外の文章がおさめられているのだが、大半はやはり作家のライフワークである藤澤清造に関するものとなる。冒頭、読みたいと思っていた朝日書林刊行予定「藤澤清造全集」内容見本所収の「『藤澤清造全集』編輯にあたって」と「藤澤清造 略年譜」が載っている。これは買いだと霙に濡れた手をオーバーで拭い手に取った。


 階下のCDショップでJAMIE CULLUMの新譜「THE PURSUIT」を購入。もしや「グラン・トリノ」が入っているのではと期待したが実らず。

ザ・パースート(初回生産限定)

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 バスに乗って帰る。


 バスを降りると霙は雪に変わっていた。雪の白はステロタイプではあるが、“死”や“浄化”といった言葉を思い起こさせる。感傷的だと自分で笑いながらもこの雪が鎮魂か慰藉になってくれればいいと思う。すでに滑り始めたアスファルトの道に足を取られながら帰宅。オーバーについた雪をはたいて家に入る。