寒くないという助っ人。

 朝の天気予報は暖かくなると言っていたが、家を出てみるといつもとあまり変わらない。


 夕方、野外仕事に出てみると驚くほど寒くない。寒くないというだけで仕事がずいぶん楽であることに気づく。


 帰宅して金子拓「織田信長という歴史 『信長記』の彼方へ」(勉誠出版)の序章「『信長記』とは何か」を読む。ここでは太田牛一という人物が書いた「信長記」(「信長公記」とも呼ばれる)の研究史が概観されている。そういう名の書物があることは知っていたが、著者名も内容もまったく知らないため、書かれていることの一つ一つが新しい知識として頭の中に入ってくるのが楽しい。その中で昭和44年に刊行された角川文庫版「信長公記」がそれまでの翻刻と違う底本を用いた画期的なものであり、現在もこの本を典拠とする専門的な研究が大半を占めるのだそうだ。こう聞くと既に版元絶版となっているこの文庫が欲しくなる。こんど探してみよう。


 昨日アマゾンから届いた井上孝治写真集「想い出の街」(河出書房新社)を眺める。初版の発行が1989年8月5日。今から20年ほど前だ。巻頭に立松和平氏の「生きている静物」という文章が載っている。それを読むとあの頃ニュースステーションでよく聞いた氏の語りを思い出す。ああ、あの時代に出たのだなと。
 奥付の企画協力の中に“黒岩比佐子”とある。この写真集の「井上孝治年譜」等を依頼されて黒岩さんは井上さんと初めて会ってインタビューをすることになる。その時の取材に満足できず、“未完”のままに終わってしまったという思いに正面から向き合おうとした結果が「音のない記憶」という1冊の本を生み出した。それはまた、ノンフィクションライター黒岩比佐子の誕生の瞬間でもあったのだろうと勝手に盛り上がりつつ、モノクロ写真の頁をめくる。

想い出の街

想い出の街

音のない記憶―ろうあの天才写真家井上孝治の生涯

音のない記憶―ろうあの天才写真家井上孝治の生涯