イブに読経。


 仕事を終えて駅前まで来ると若い女性がひとり立ちながらお経を大声で唱えている。クリスマスという異教の祭りに血道をあげている日本人に対するアンチテーゼかとも思ったが彼女を数週間前にも見たことを思い出し、布教活動の一環であろうと判断する。


 本屋で川上弘美(原作)・谷口ジロー(作画)「センセイの鞄」第1巻を買う。しばらく前に見かけていたのだが、その時はカバーに描かれたツキコさんが美人過ぎて原作のイメージと違うと感じ敬遠していたのだが、先日「このマンガを読め!」(フリースタイル)で第1話を読んだら思いのほかよかったので続きを読んでみることにしたのだ。

センセイの鞄 1 (アクションコミックス)

センセイの鞄 1 (アクションコミックス)

 帰宅すると『彷書月刊』1月号が届いていた。特集は<二〇一〇年からの古本屋>だ。いろいろな古本屋さんが文章を寄せているが、今年7月に善行堂を始めた山本善行さんのういういしいエッセイが読める。


 黒岩比佐子「明治のお嬢さま」の後半を読む。明治の華族階級のお嬢さまたちの破天荒なセレブ振りに驚く。部屋数が60もある家に住み、台所と食堂の間が100メートル以上あるためどんな料理も食べる前に冷えてしまうのだ。第8章では日露戦争時における上流階級の女性たちの生活が詳しく書かれており興味深い。ほとんど男しか出てこない「坂の上の雲」の世界の陰で女性たちが日露戦争をどう戦っていたかが描かれている。「坂の上の雲」がテレビドラマ化され、書店に原作文庫がひら積みされている今だからこそ日本海海戦勝利で終わってしまう「坂の上の雲」だけではなく、戦後の日本国内の混乱を読み解いた黒岩さんの「日露戦争 勝利のあとの誤算」(文春新書)やこの「明治のお嬢さま」を読んでその世界を広げてほしいものだなと思う。


センセイの鞄」も読む。読みながらヒロインの名前<大町ツキコ>は<大町桂月>から来たのではないかと思い付く。