本を遡上する。


 毎日寒い。野外仕事がつらい。


 職場に本が届く。

織田信長という歴史―『信長記』の彼方へ

織田信長という歴史―『信長記』の彼方へ


 ブログ「新・読前読後」を読んできた者として金子拓さんの出された本とあればやはり読んでみたくなる。それも昔坂口安吾山岡荘八の小説ではまった織田信長に関する本であるとならばなおさらだ。もちろん、歴史の研究書を読んだことなどない人間としては「果たして自分に内容を理解できるのか」という不安は拭えない。恐る恐る“はじめに”を読み始めると歴史小説信長の棺」を話のきっかけとしてブキッシュな話題が展開していき、いつの間にか不安が薄れ心がうきうきとしてくるのを感じる。中扉に堀江敏幸「河岸忘日抄」が引用されている研究書なんてそうはお目にかかれないと思う。一挙に読める本ではないので少しずつ読み進めていきたい。



 帰宅してこのところ自宅本としてきた黒岩比佐子「音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治」(角川文庫)を読了する。井上孝治というろうあの写真家が発表の意図もなく撮りためておいた写真のネガがちょっとした偶然で日の目を見ることになり、そこに写された数十年前の福岡や沖縄の人々と風景が大きな反響を呼ぶ。そのために実現した沖縄再訪のくだりあたりからなんとも言えず感情が揺さぶられ続け、最後まで手を止めることができなかった。注文した写真集「想い出の街」がなんとも待ち遠しい。


 「明治のお嬢さま」、「『食道楽』の人 村井弦斎」、「音のない記憶」と続いていた黒岩比佐子さんの未読作品を遡る旅は一区切り。これで現在読める全8冊を読み終えてしまったことになる。あとは4月に工作舎から刊行予定のエッセイ集を楽しみに日々を過ごしていこう。



 明日は外市2日目。ワメトークもあるし、いそいそと出かけることにしよう。