古本のトリニティ。


 久しぶりの休日。


 10時過ぎに家を出て神保町へ。家で最近の諸々のことを考えていたら、こいつはちょっとタガを外して本をばかすか買ってスッキリしてやろうと決める。それをそそのかすように昨日職場で立て替えていた5万円余りが返ってきたのだ。


 まずは、神保町交差点近くのみずほ銀行へ行き家賃を振り込んでから、東京堂へ。


 『spin』の佐野繁次郎文字をあしらった赤い表紙を見るとうれしくてなでなでしたくなってしまう。
 『文學界』は地元では手に入れられずにいた。もちろん評判の11人座談会を読むためだ。
 『scripta』を貰って店を出る。今日の目的本の1つであった石田千「山のぼりおり」は見当たらなかった。


 コミガレで本を選んでいると、視野の隅を女性が横切る。あれこのシルエットはとそちらの方を見ると石田千さんらしき女性が。まさか本ではなく、ご本人を見るとは。


 その後、石田書店などを覗いてからうどんの丸香へ。かけうどんに野菜天とかしわ天をトッピング。初めて注文したかしわ天がおいしい。卒業式帰りと思われる大正袴姿の女子大生が2人入ってくる。折角の晴れ着で汁物を食べて大丈夫なのだろうか。汚さなきゃいいけど。


 岩波ブックセンターで。

  • 『文学』3,4月号

 特集が“大衆文化と文学 昭和三〇年代を読む”。座談会には川本三郎さんが参加。曾根博義先生の「文芸評論と大衆 昭和三〇年代の評論の役割」に加えて蓮實重彦氏の新しい小津安二郎東京物語」論まで掲載されているのだから、買いです。その他の論考も面白そうだ。


 日本特価書籍へ。

 すでに4月号が並んでいたが、欲しかった“新しい世界文学”特集号を。桜庭一樹さん参加の座談会や岸本佐知子さんのインタビューなど読みたいもの多し。


 地下鉄を乗り継いで早稲田へ。久しぶりにここのブックオフに寄る。105円文庫を3冊選ぶ。山川方夫「親しい友人たち」(講談社文庫)は『ヒッチコック・マガジン』に連載されたショートショート集。題名をつけたのは編集長であった中原弓彦小林信彦)氏だったはず。


 古書現世に入ると向井さんがいた。わめぞ花見や外市の話など。5月の外市は楽しみなゲストがダブル参戦とのこと。今回初めて参加するゲストは、僕も一度行ったけど雰囲気のあるいい古本屋さんだ。
 棚を眺めていると以前から欲しかったこの雑誌のこの号が。

  • 『東京人』1988年冬季号

 特集は“東京は世界一の古本都市である”。編集者・坪内祐三の遺産として名高いバックナンバーだ。うれしい。
 『buku』vol.16を貰う。


 高田馬場まで歩いて東西線から中央線へ乗り継ぐ。


 荻窪で下車してささま書店へ。店頭均一台から2冊。

 
 このシリーズはなかなか面白いのだが、「ライターになる!」には武藤康史さんが「図書館徹底利用法」と「書評の書き方」を書いている。


 線路を越えてブックオフへ。105円文庫を2冊買う。先程買った『文學界』に追悼文が載っている川村二郎さんの「語り物の宇宙」(講談社文芸文庫)が買えたのは巡り合せというものだろう。

 
 西荻に移動して興居島屋へ向かう道を歩いていると、「だいこんの会」の会場として使っている店の前を通る。やはり店の名前は「三喜」であって「三善」ではなかった。


 音羽館で。

  • 内山完造「そんへえ・おおへえ」(岩波新書


 前から探していた1冊。昔の上海で内山書店をやっていた内山完造氏による回想記。通常の岩波新書ではなく、ハードカバーの特装本。こんなの出ていたんだ。知らなかった。


 にわとり文庫を覗いてから帰る。


 車中では高尾慶子「ぼやきつぶやき イギリス・ニッポン」(文春文庫)を読む。



 帰宅後、『spin』の佐野繁次郎装幀図録を眺める。至福、眼福。後年の書き文字を中心としたものが好き。
 北村知之「エエジャナイカ3 すべてに終わりがくる」を読む。ブログの休止は残念なのだが、定期的にここで読めるのならいいか。北村さんの生活と文章がちゃんと足並みを揃えて進んでいく。だからいい。
 その後、畠中理恵子さんと近代ナリコさんの対談を途中まで読んだ。


 今日は、神保町・早稲田・中央線という古本三大聖地を回るという充実した1日であった。このブログのデザインにある三つ葉のクローバーはその3つの場所を象徴しているということに今日決めました(笑)。右下の小さな方は、京都・神戸・大阪を象徴しているということにしときますか。