食欲の天才。


 職場の周りの桜が満開であることに気づく。


 この季節に楽しみにしているのは、職場の2階フロアに何も物が置かれていない細長い多目的スペースがあり、廊下をあるきながらそのスペースの方を見ると、遠く数十メートル先の突き当たりが全面ガラス張りになっており、その向こうにちょうど桜の木が見えるのだ。まるで四角い額縁の中におさまった絵画か写真のように満開の瞬間を切り取ったその姿にうっとりする。


 近くの席に座っている同僚の女の子に、買ってきたけど食べる気がなくなった菓子を封も切らずに「食べる?」と持っていく。彼女は細身にも関わらず食べるのが好きで、これまで食べ物を持っていって断られたことがない。一度でいいから「いりません」とか「食べられません」と断られてみたいと思っているのだが、この1年連戦連敗で一度も断られたことがない。封も切らずに一袋持っていったらさすがに遠慮して断られるかなと思ったのだが、満面の笑みで彼女の手の中に入り、口の中に消えていった。「もっと、まずそうなものとか、腐る直前のものを持っていったらどうだ」と見ていた同僚たちがアドバイスをくれるが、そんな卑怯なことはしたくない。正面からストレートで勝負したいのだ。たとえそれが、イチローに向かって僕がボールを投げ込むような無謀な試みであったとしてもね。


 退勤後、サブカル系古本屋に寄る。100円棚からこれを。

 最近、講談社文芸文庫を100円(105円)棚から買えることが多いのでうれしい。


 通常棚から1冊。


 「安吾さんのこと」、「木山君の神経質」、「小沼君の将棋」なんて文章が並んでいるとやはり読みたくなる。


 帰宅後、高尾慶子「ぼやきつぶやき イギリス・ニッポン」(文春文庫)読了。
 この10年で英国は完全に日本を追い抜いたと言い切る高尾さんの日本批判は日本に住んでいる日本人としてはちょっと反発を感じながらも耳が痛い。


 あれこれ読まなければいけない本が山積みながら、TVで「とんねるずのみなさんのおかげでした」を観てしまう。この番組がスペシャルでやるものまね大会を観るのが好きなのだ。死体役の片桐はいりの真似だけやる女性なんてこの番組でしか観られないだろう。