マーロウとしての吉田健一。


 職場自体は休みの日なのだが、仕事があるため出勤する。


 同僚の姿が数人しかいない職場で午後2時過ぎまで仕事をして退勤。


 今度の土日も泊まりがけの研修で潰れるため、この空いた時間を有効に使おうと電車で馬車道へ出る。


 誠文堂書店をのぞいてから、伊勢佐木モールの田辺書店へ。前回来たときに「本間久雄日記」(松柏社)が置かれていたのでまだ残っていたら買おうと思っていたのだが、無事に入手。

本間久雄日記

本間久雄日記

 本間久雄は早稲田大学教授で文藝評論家だった人。その昭和34年から39年までの6年間の日記だ。とりあえず、昭和39年3月10日(僕の誕生日です)の日記を見ようとしたら、1月31日の次が6月5日となっており、その間には《欠》の文字が。ちょっと拍子抜け。


 田辺書店を出てすぐ近くのブックオフに入る。105円棚から以下のものを選ぶ。

 茉莉本は単行本。池田満寿夫装幀で、地味な色合いながら箱入りでしっかりした作りになっている。


 伊勢佐木モールから野毛方面へ歩き、ブックカフェ風信へ。先日、この店の奥さんから僕が探している井上究一郎ガリマールの家」があるというコメントを貰っていたこともあり、前から一度来たかったこの店に入る。
 一般の住宅のようなドアから中に入り、靴を脱いで室内へ上がり込む。2人掛けくらいの小さなカウンターとテーブル席が1つ。三方の壁には本がびっしり並んでいる。ほろにがブレンドとケーキを頼み、まずは本棚をじっくりと眺める。元は出版関係にお勤めだった(とどこかで読んだ記憶あり)というヒゲの似合うご主人のセレクトらしく、面白そうな本が並んでいる。今日の目的である「ガリマールの家」をちくま文庫の並んでいるところを探すが見当たらず。売れてしまったかと思いご主人に聞いてみると先程見ていた棚から「これです」と抜き出してくれる。そこにはグレーの箱に入った栃折久美子装幀の単行本があった。そうか、どおりでちくま文庫を探してもなかったわけだ。その他、前から読みたかった千野栄一「ビールと古本のプラハ」(白水uブックス)を抜き出してこちらも購入。
 のんびりしたかったのだが、この後のスケジュールがあるため、コーヒーとケーキ(ともに美味しかった)を腹におさめるとすぐに店を出る。


 帰宅して、本を置き、溜まっていたワイシャツをクリーニング屋に出し、その他の汚れ物を洗濯機へ。これを済ませないと明日から着るものがない。このところまともに休日がないためにこの有様。


 洗濯と食事を済ませてから読書。「考える人」を読み継ぐ。今日は、深代惇郎幸田文植草甚一吉田健一色川武大吉行淳之介須賀敦子と来て、最後の福田恆存で読了。小林秀雄が若き日の吉田健一を批判して《はんちく》と呼んだことが出てくる。村上春樹訳「ロング・グッドバイ」でやくざがマーロウを同じ言葉で呼んでいたことを思い出す。吉田健一演じるフィリップ・マーロウを思い浮かべる。やっぱり、吉田健一にはギムレットより日本酒がよく似合う。