吉田健一のサンドイッチ。



 同僚が風邪欠のため、朝からの予定が大幅に変わり、気がつけばどたばたのうちに退勤の時となる。


 本屋に寄るとちくま文庫ちくま学芸文庫講談社文芸文庫の新刊が並んでいた。2月のちくま文庫には欲しいものがたくさんある。今度神保町に行った時に日本特価書籍で買おうと今日は見送ることに。
 その代わり、講談社文芸文庫の新刊から吉田健一吉田健一対談集成」を購入する。これは小沢書店から出た単行本「吉田健一対談集成」の文庫化だ。小沢書店本を持っているのだが、講談社文芸文庫吉田健一本の新刊とあらばやっぱり買ってしまうな。


 帰宅して、小沢書店版「吉田健一対談集成」を取り出してみると全部で17編の対談が収録されている。講談社文芸文庫版はその中から9編をセレクトしたバージョンだ。その意味でも、文庫が出ても単行本を持つ価値はある。僕は八木書店日本特価書籍ゾッキ本として手に入れたのだが、その厚みや紙の質感、精興社による美しい文字組み、そして小沢書店本がもつ端正な表情のどれをとっても買ってよかったと思える本。内容はまだ読んでないが、対談相手を見ても悪かろうはずがない。
 文庫版の長谷川郁夫さんの解説を読む。親本を小沢書店から出した張本人による文章ということになる。長谷川さんは、『海』の吉田健一追悼号に載った高橋義孝氏の吉田健一批判ともとれる一文への不快感を述べている。そのせいかどうかは不明だが単行本に入っていた高橋氏との対談2編は文庫未収録。その他にも、対話者が複数いるイギリス関係のもの数編や父・吉田茂元首相との対談などが文庫入りしていない。長谷川さんの著者に対する愛情のこもった解説を読んでいると、「本の背表紙」も読んでみたいなと思う。
 文庫を携帯本として読んだ後、未収録の対談を単行本で読むことにする。単行本と文庫を二つ重ねてサンドイッチのように楽しんでやろうっと。


 外は雪が降っている。明日の仕事への影響が心配だ。心身ともに疲れる仕事が待っているので、今日は早く寝よう。