さあ来い、講談社文芸文庫。

睡眠不足を解消しようとぐっすりと寝て、グズグズと起きる。
寝床で新聞を眺めながら朝食。読書欄“本よみうり堂”に向井透史さんの「早稲田古本屋日録」の書評が載っている。評者は松永美穂早稲田大学教授)さん。なんだか真面目で素直な学生の読書感想文みたい。そういえば、地元の本屋で面出しされていた本がいつの間にかなくなっていた。売れたのかな。


洗濯機を回しながら入浴。風呂の扉越しに三遊亭圓生紀州」を流しながら。この噺は本筋がほんの短いものだけに、他にどれだけ小ネタで肉づけできるかが腕の見せ所なのだが、圓生師匠はさすがにうまい。ただ、紀州公にまんまと出し抜かれ8代将軍になりそこねた尾州公が鍛冶屋が焼けた鉄を水に入れる「キシュー」という音で自分の勘違いを悟るというサゲは、「びしゅう」と「きしゅう」の音が似ているのでなんだか危なげな気がしてしまう。


昼過ぎに外出。横浜に出る。苦手なため先送りにしていた春物のスーツを買いに「THE SUIT COMPANY」へ。デパートでいろいろな店を覗いて回るのが億劫だから、最近はここで買うことに決めている。とはいっても数年新調していなかったので、久し振りだ。180cmの棚を眺めるが、どれもパンツがノータック。スーツの下はツータックで裾はダブルの折り返しを基本としてこの20年やってきたのでこれだけは譲れない(ただし、フォーマルはこの限りではない)。やっと、条件にあったグレイのシンプルなスーツを一着見つける。その後の試着→裾あげ→店員に引き連れられてのレジまでの道行き→レジ係への受け渡しなど恥ずかしいやら面倒くさいやらで疲れる。いつの間にかこの店とTSUTAYAが提携していたらしく、TSUTAYAカードにポイントを入れてくれた。


店を出て西口の地下街へ。ここで古本市が行われているのだ。やっと自分のテリトリーに戻ってきた気分になる。

  • 青木富夫「小説突貫小僧一代記 子役になってみたけれど」(都市出版

小津安二郎作品で有名な子役であった青木氏が『東京人』に連載していた自伝小説。連載中から気になっていた本なので購入。峰岸達画伯の装画がいい。水辺に立って突貫小僧を見下ろす小津監督の絵に顔がほころぶ。


帰りの電車で木山捷平「大陸の細道」(旺文社文庫)を読む。冬の満洲の寒さが身に沁みる小説だ。この時の“木川正介”と今の自分が同じ年であることに気付く。もし自分が行っていたらどうなっただろうなどと考える。酒の飲めない自分にかの地の冬が越せただろうか。
帰宅後、「大陸の細道」読了。ソ連の参戦が表明され、急遽召集された正介がソ連の戦車部隊がせめて来るのを雨の四阿で待っているところで終わっている。これで講談社文芸文庫の新刊「長春五馬路」を読む準備は整った。
さあ来い、講談社文芸文庫


その後、編集工房ノアのPR誌「海鳴り」17号所収の山田稔「少年の港」を読む。山田さんが小学5年生までを過ごした門司を訪ねる旅が描かれている。ゆったりとした時間。「コーマルタン界隈」を、「北園町九十三番地」を、「特別な一日」を、「残光のなかで」を読みたいと思う。手を伸ばせばこの部屋の中にそれはあるのだから、今すぐにでも読めるはずなのに、そうはならない。この距離とはなんなのだろう。


今日は1冊読了したので、買える新刊は7冊となった。そろそろ大量買いの予感。


【購入できる新刊数=7】