隠れ家と貸間。

今日も寒い。本日も外での仕事。仕事を終えて室内に入るも、なかなか体が暖まらない。ここ数日胃腸にちょっと違和感あり。これはこの冬はやりの胃腸にくる風邪の前兆のようだ。本屋に寄ってから早目に帰宅することに。
職場で立て替えていた1800円が返ってきたのをいいことに雑誌を3冊買ってしまう。

  • en-taxi』12号
  • 『WiLL』2月号
  • 『男の隠れ家』2月号

en-taxi』は三島由紀夫と“浅草彷徨”が2大特集のようだが、個人的には「二〇〇五年落語界・胸騒ぎ三題」と座談会[文学の器]の「野口冨士男私小説という装置」が気になる。落語の三題のうちの1つは「追悼:桂吉朝」で、桂吉弥中野晴行、松本尚久の3氏が寄稿している。座談会は坪内祐三×佐伯一麦×坂本忠雄のお三方が「わが荷風」と「かくてありけり」をめぐって話を交わしている。
ところで、僕の買ったこの雑誌には落丁があり、いきなり11ページから始まっていた。こんなの初めてだ。やっぱり、確認してから買うべきなのだろう。
『WiLL』はいつもの通り日垣隆向井透史氏の2連載を楽しむ。巻頭のコラム「天地無用」(谷沢永一氏執筆か)で大村彦次郎「時代小説盛衰記」(筑摩書房)が絶賛されている。前から読みたかったがますます読みたくなる。
『男の隠れ家』は“愉悦の読書空間 156人の384冊”という特集なので思わず買ってしまう。城山三郎氏と関川夏央氏へのインタビューに、「古今東西 名作ミステリー30冊」(7冊しか読んでなかった)と「開高健山口瞳の思い出」という座談会があり、メインは143名の著名人に聞いた“2005年、最も印象的だった本&今まで最も面白かった本”というアンケート。この他に「帯」、「蔵書票」、「しおり」を特集したページがあれば、松田哲夫「寝酒本」、夏目房之介「大人のマンガベスト10+1冊」、“新刊書店 自慢の本棚”といったコーナーもあって盛りだくさん。『散歩の達人』もよかったけどこちらも楽しめます。こういう書影や書斎の写真がたくさん載ったものをこたつに入りながら眺めている時間はほんとうに楽しい。しあわせ。
帰宅して買ってきた雑誌に目を通した後は、映画鑑賞。今日は川島雄三監督井伏鱒二原作「貸間あり」(1959年)を観る。冒頭大阪の人ごみの中を疾走する藤木悠(合掌)を捉えた移動撮影に度肝を抜かれ、舞台となるアパート屋敷が立つ大阪の街を一望できる丘の上のロケーションに心奪われる(通天閣が遠くに見える)。フランキー堺小沢昭一桂小金治清川虹子浪花千栄子、益田キートン山茶花究といった達者な俳優さんたちの個性を楽しむ。ヒロインの淡島千景、脇で存在感を発揮する音羽信子もいい。一見、欲にまみれた庶民たちのハチャメチャで明るい喜劇のように見えるのだが、「幕末太陽伝」の居残り同様、フランキー堺演じる五郎の時折咳き込む姿が象徴するような暗いかげりがある。庶民の生命力を力強く描き出したというよりもどうしようもない人間のエゴを冷めた目で観察しているともう笑うしかしょうがないので喜劇になったという感じ。共演陣では小沢昭一、益田キートンのご両人が光っていた。この映画の頃の2人が現在にタイムスリップしてきたら、竹中直人の出番はなくなってしまうだろうな。「存在感がある」とはこういうことだよな、とひとり納得しながら鑑賞を終える。

貸間あり [DVD]

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