スイングしなけりゃ意味ないね。

昨夜は、「極私的東京名所案内」を読むつもりが、視野に入った小林信彦オヨヨ大統領の悪夢」(角川文庫)を手に取り、その第一部「不眠戦争」を再読。これまでに10回以上読み返しているが、読む度に面白い。私小説のパロディを思わせる作者自身による一人称の語りで、8月15日の終戦記念日における世間のイメージと自身の思いのギャップを感じながらもいつの間にか浮世に流されていく姿が戯画的に描かれている。そんな作家の《日常性の中に文学的に埋没したい》はずの日々が、小林氏一流のユーモアと諧謔、それに御馴染みオヨヨ大統領の登場によって事態はとんでもない方向へと進んでいき……。作者が血肉とした太宰治古典落語の素養が行間からじんわりと染み出た今様(唐様?)落語の傑作ですね。小林作品から1作だけ無人島に持っていってよいと言われたらまよわずこの「オヨヨ大統領の悪夢」を選びます。以前にちくま文庫オヨヨ大統領シリーズが入ったとき、この作品だけ外されたのを知り、世間の評価と自分の思いのズレを感じて落胆した覚えがある。そのせいか、古本屋の均一台でこの角川文庫を見つけるとつい買ってしまうので、部屋の小林信彦棚にはこの本が3冊は並んでいる(さっき確認したら他の角川オヨヨも複数冊あった)。

本日は終日野外で仕事をする。仕事帰りに、ひと駅前で下りて、ブックオフへ。前回買い残した「日本の文学62 永井龍男阿部知二」(中央公論社)を求めにいく。先日、「ねこそぎ記念日」などのブログをやっておられるちわみさんから同書をお譲りいただけるという親切なお申し出を受けたのだが、半年以上この店の棚にあり、行く度に目にしながらこれまで買わず買われずにきたこの本は、どうしても自分に買われる為にここにあるのではないかという思いが捨てきれなかったのだ。岡崎武志さんの日記でこの本に映画の原作となった長編が入っていることを知り、それに後押しされるようにいつもの棚の前に立つと今日もやはり同じ場所に誰にも買われずに置かれていたのだった。それ以外にも数冊購入する。

  • 庄野潤三「浮き燈臺」(新潮社)
  • 伊東四朗「この顔で悪いか!」(集英社
  • 山崎巌「夢のぬかるみ」(新潮社)
  • 『東京人』1990年11月号
  • 『東京人』1999年2月号

庄野本は“純文学書き下ろし特別作品”の1冊。
伊東本は山藤章二画伯の似顔絵をあしらった表紙が印象的。
「夢のぬかるみ」は帯のコピーを引くと《「渡り鳥」シリーズのベテラン脚本家が、日活黄金時代の日韓映画界を舞台に描く、自伝的長編小説!》だそうだ。畑中純氏の装画が使われているのもいい。畑中氏独特の版画のようなタッチで描く、白馬に跨がり拳銃とギターを構えたテンガロンハットの“アキラ”にグッとくる。
『東京人』は、雑誌の棚で『ノーサイド』と『クレア』のバックナンバーを探していて代わりに見つけたもの。前者は坪内編集員時代のもので、特集の1つが“池袋が変わる”。その中で山口昌男×宇佐見承「池袋モンパルナスを語る」にそそられる。後者は特集が“中央線の魔力。Part2”。坪内さんが中央線沿線の古本屋と西部古書会館を回っている。興居島屋で買ったという小山清「落ち穂拾い・聖アンデルセン」(新潮文庫)と木山捷平「大陸の細道」(講談社文芸文庫)に思わず「いいなあ」と声が出てしまう。
風邪ひきなので1時間以内でサッと出るつもりが、予定を30分ほどオーバーしてから店を後にする。風邪薬や夕食を買って帰宅。
TVで「スイング・ガールズ」を観る。内容がどうのこうのというより、スイング・ジャズ、ビッグバンド、いいですね。CDの山から、ベニー・グッドマングレン・ミラーカウント・ベイシーデューク・エリントン、マーティー・ペイチなどのアルバムを引っ張り出したい衝動に駆られる。
とりあえず、手近にあったこの1枚を聴く。

これは“A JAZZ HOUR WITH”という廉価版CDシリーズの1枚。確か777円でした。たまにはこんなジャズもいいな。