金銭にふれる。

フリーの日曜日。
朝、洗濯機のスイッチを入れてから、二度寝する。幸せ。
半身浴をしながら、ダイソー落語CDで古今亭今輔「薮入り」を聴く。独特の早口と録音のせいなのか電池がなくなったのか音が大きくなったり小さくなったりで聴き取りにくい。汗をかいてぼうっとしているうちに終わってしまった。
家を出て品川へ向かう。これまで日程が合わず行くことができなかった「フリマでミニミニ古本市」の第3回が品川インターシティで開かれているのだ。
車中の供は黒岩比佐子日露戦争 勝利のあとの誤算」(文春新書)。これまで何の印象も持っていなかった桂太郎首相が歴代1位の長期在位の記録と凄腕の策略家であったことを知る。桂太郎の愛人・お鯉さんが登場したところで品川へ到着。駅を出てすぐのところにあるインターシティ内1階の細長い広場のようなところにフリーマーケット会場があり、その一角に古本市会場があった。フリーマーケットの規模自体が予想以上に小さく、古本市の本の数も少なかった。しかし、これまで2回の経験を踏まえて、本もしっかりと選ばれているし、値段も低く抑えられていると感じた。よく覗いているブログ「古本うさぎ書林の日々平安」のうさぎ書林さんの箱を見ると、映画関係を中心に美本が並んでいる。単行本が300円で文庫が100円というとても魅力的な値付けをされているのでうれしい。すぐさま3冊を抱え込む。

澤地本はカバーの「七人の侍」の勘兵衛(安野光雅画)がいい。安鶴本はカバー表は“志ん生独演会”の看板がかかる人形町末広のカラー写真、裏にはだれもいない寄席の畳の上に座って後ろのカメラを振り返るアンツルさんのモノクロ写真が使われている。高座のめくりがさりげなく“文楽”になっているのもシャレている。
並びの町屋堂(この店のHPの日誌も以前によく読んでいた)から岡崎英生「劇画狂時代 『ヤングコミック』の神話」(飛鳥新社)を700円で。以前に参加した公開講座で講師をされていたので顔を知っているうさぎ書林の芳賀さんに本を渡すと、それぞれ店ごとの会計であると言われる。つい、他の古本市や展示即売会と同じシステムであると思い込んでいた。考えてみれば、フリーマーケットはその店ごとの会計だよね。
本の数が少ないのが残念だけど、よい本を安い値段で買うことのできるいい古本フリマだと思う。今後もっと多くの店が参加し、多くの本を見られる催しにしてもらえることを期待しよう。
品川駅内のインドカレー屋で昼食。タンドリーチキンの黒カレーを食べる。思ったよりチキンが大きくて得した気分。その後山手線で秋葉原へ。そこから総武線に乗り換えて荻窪に出る。もちろん、ささま書店へ。店頭から2冊。

中島本は5部作の第1巻。第5巻は以前にコミガレで入手済み。あと3冊を均一台から探して揃えたい。
荻窪駅前のブックオフの105円棚から1冊。

佐藤さんはもと『面白半分』の編集者で、「『面白半分』の作家たち」(集英社新書)の著者だ。解説は開高健氏。
西荻に出て、音羽館の店頭台から。

  • ナディン・ゴーディマ「戦士の抱擁」(晶文社

100円。1991年のノーベル文学賞受賞の南アフリカ作家の小説集。晶文社コレクションの黄色い小振りな作りと平野甲賀文字に惹かれて購入。ハートランドを覗いてから隣りの喫茶店「物数奇」で珈琲。店のあちこちに時計がかかっており、それがみなまちまちの時刻を示している。ちょっと薄めのブレンドも悪くない。
信愛書店にわとり文庫を回ってから帰宅。帰りの車中も「日露戦争 勝利のあとの誤算」を読み継ぐ。日比谷焼き打ち事件に発する新聞(言論)弾圧の流れの中で社会主義者たちへの風当たりも強くなる。そういった記述の中で先日読んだ「月の輪書林それから」に出てきた石川三四郎、西川光二郎といった名前と出会う。こういうことが読書のうまみだよなとひとり頷きながら読み進む。
帰宅して、荷物を置き、すぐにまた外出する。今日は神奈川参院補選の投票日なのだ。投票を済ませてから投票所近くのブックオフへ。今日は琴線に触れる本が105円棚に多く、10冊も買ってしまう。これでは金銭に触れてしまうよ。

武田本は、猫の写真とエッセイ。この人の人間の写っていない写真が好きである。海岸にいる犬を撮った「シーサイド・バウンド」(中央公論社)という写真集がなぜか職場の机の上の本棚に置いてある。
恩田本は、イギリス・アイルランドの紀行エッセイ。新刊で買いのがしたもの。
2、3、4番目はすべて和田誠装幀本。特に山口×吉行対談本は装幀が凝っていて面白い。
高橋本はほぼ全ページがオールカラー。黒岩さんの本で明治の新聞に気持ちがいっていたところにスポッと入ってきた。
「昭和のエンタテインメント」は、佐藤春夫から向田邦子までの短篇アンソロジー。プロフィールの欄を書いている人たちも多士済々。向田邦子山口瞳)といった“なるほど”というものから、尾崎士郎宇津井健)といった“なんで?”というものまであるのが楽しい。
それにしても今日1日で18冊も買ってしまった。いったい自分は何をしようとしているのだろう?