古本屋と単行本のない街。

午後から出張。営業で横浜線沿線の得意先を2つほど回る。駅前の街道沿いの商店街を歩く。2時を過ぎたばかりの時間だというのに、シャッターを閉めた店が多い。以前ならこういった何気ない商店街の片隅に、なんということのない古本屋の1軒ぐらいあったものだが、影もカタチもみえず。その代わり、少女コミックと雑誌ばかりの新刊書店があった。棚一面だけの文庫は、江國香織司馬遼太郎ばかりが並んでいるように見え、単行本に至っては縦横1メートル四方の空間しかあたえられていないのだ。居たたまれず1分で店を出る。しかし、こういう本屋さえ維持していくのは難しいのだろう。
少し、寂しい気持ちで職場に戻り、明日までに仕上げておかなければいけない仕事をとりあえず終わらせて退勤する。本屋へ。

ついに10月の文春新書の新刊を入手。黒岩さんと草森さんの本は厚みがあって持ち重りがする感じがうれしい。バス待ちでまず「随筆 本が崩れる」をパラパラ。写真のページが多く挿まれている。そのピレネー山脈のような(といってもちゃんと見たことはないのだが)積み上げられた本の嶺々を拝見して安心する。まだ自分の部屋なんて本がないと同じではないかと。もちろん、“未刊の大器”草森紳一翁と自分を比べる事自体ナンセンスなのであるが。
帰宅するとポストに厚みのある封書が入っていた。昨日読んでいた「月の輪書林それから」の16ページに登場する岡町高弥(okamachi)さんから、個人誌『Monthly Takamitsu』が送られてきたのだ。高橋徹さんのところと同様に岡町さんが「ありがとう志ん朝、さよなら志ん朝」という古今亭志ん朝師匠追悼文を掲載した原健太郎さんの個人誌『笑息筋』も同封されていた。まず手始めに先の追悼文を読む。志ん朝師匠の死を悼みながらも今生きている噺家に目を向けようとする岡町さんの姿に頭が下がる。僕なども贔屓のひきたおしに近い不勉強で、現在の噺家を聴かずに評価を決め込んでしまっているところがあるのは否定のしようがないもの。こんど、おまささんのおすすめである立川談春さんの噺を聴きにいってみようかな。チケットとるのが大変そうではあるけど。
岡町さんは、まだ購読料も払っていないのにバックナンバーをたくさん送ってくださった。ありがとうございます。購読料はすぐに送りますので、もうしばらくお待ちください。
月の輪書林それから」を読み継ぐ。第1章「二〇〇二李奉昌と出会う」まで読了。これから三田平凡寺に突入するところ。