謡曲、都々逸、そしてシャミセン。

今日は遅番。
郵便局や銀行に寄ってから職場へ。
3時から出張する。横浜駅からバスに揺られて30分。その間ipod古今亭志ん朝「二番煎じ」を聴く。番小屋で夜回りの順番を待つ間に、土瓶で酒に燗をつけ、しし鍋に舌鼓を打つ。いつ聴いても、酒と鍋がなんともうまそうなのだ。下戸のクセに日本酒が飲みたくなり、肉と葱をハグハグ言いながら食べてみたくなる。謡曲、都々逸、「火の用心」と志ん朝師匠の艶やかなノドを楽しむこともできるとても幸せな一席。
出張が終わり、横浜駅へ帰るバスを待つ。1時間に3本しかないので、ベンチでじっくり本が読める。先日から読み始めた黒岩比佐子日露戦争 勝利のあとの誤算」を読み継ぐ。朝日新聞社の社員となった二葉亭四迷が桂首相を演じて書いた「ひとりごと」の遊びと風刺のきいた味わいに驚く。こんな政局評論的戯文を書いていたのはしらなかった。小説家として捉えられがちな二葉亭四迷の別の側面に関しては昔読んだ亀井秀雄二葉亭四迷  戦争と革命の放浪者」(新典社)が面白かった記憶あり。巻末の主要参考文献には載っていなかった。
帰りのバスは、「お茶汲み」を聴ききながら。バスの中では本が読めないので、落語を聴くのがちょうどいい。
横浜について、西口ダイヤモンド地下街に出たところで、ここのイベント広場で古本市が開催されていることを思い出す。30分ほどいて2冊選ぶ。

前者が500円で、後者が100円。コミさんの文庫は装幀が野見山暁治氏。ひとり中年の男性で、両手で抱えるくらい大量の本を買っている人がいた。とくに珍しそうなものでもないので業者の人ではなく一般の人なのだろう。あまり売れてそうもない古本市なので、自分が2冊しか買っていないのに言うのは変なのだが、こういう人がいるとなんだかホッとする。
西口の有隣堂で『エルマガジン』の12月号を購入。文芸評論の棚に行くと、高橋徹月の輪書林それから」を平積みにした上に、「月の輪書林古書目録13 寺島珠雄私記」が面出しで置いてあるのを見つける。すわ、バックナンバー販売かと手に取ると“非売品”の紙が付けてある。残念。しかし、こんなことをするなんて、この店の店員さんには古本好きがいると見た。たしかにここの文芸評論棚のセレクトはセンスがいいと前から思っていたのだ。その横に平積みされているこんな本を見つける。

  • 「京都読書空間 (Act books)」( 光村推古書院)

京都のブックカフェから図書館、古本屋などを紹介したビジュアル本。なかなか良さそうだ。とりあえず、今日はチェックだけしておく。
帰宅して、『エルマガジン』を眺める。表紙のUA&かしまし娘のコラボがサイコー。このノリ好きですね。タワーレコード特集なので、浜村淳さんがタワレコでCDを選ぶコーナーがあり、アン・サリー「Brand-New Orleans」を1枚目に挙げている。分かっているじゃないですか、浜村さん。《心に染みる歌声やと思いますよ、この人は。》同感です。
京阪神本棚通信のページでは、山本善行さんの「天声善語」や阪急百貨店での善行堂の紹介が載っている。「天声善語」には、知恩院などの青空古本市のことを考えて気もそぞろとなっている旨が書かれているが、そう言えば、林哲夫さんが10月15日の「デイリースムース」に書かれていた次の条は何度読んでも笑ってしまう。

山本善行よりメールあり。《阪急百貨店でのイベント、決まったので、ホームページで宣伝してもらえないでしょうか。同期間に知恩寺青空があるので悩みました。今年は知恩寺は行けないかもしれません。》とのこと(上記)。知恩寺は行けない・・・間違いなくシャミセンである。おのおのがた、油断めされるな。

夜、「日露戦争 勝利のあとの誤算」読了。第四章に村井弦斎が登場すると、黒岩さんの文体も少し弾んでくるような印象を受けた。あの時代に自作の小説を翻訳して外国に日本をPRしようとする発想のダイナミックさとその実行力はすごい。やっぱり、読まなきゃ村井弦斎