高倉健にはなれなくて。

今日は日曜日の代休なのだが、午前中仕事に出る。なんのための代休なのだか。
半日分を取り戻すように、午後はいそいそと神保町へ。
まずは腹ごしらえで“さぼうる2”のナポリタン。久し振りに喫茶店のスパゲッティを堪能する。
いつものように書肆アクセスから。

『フリースタイル』は贅沢なリトルマガジン平野甲賀ロゴ、松本大洋イラストの表紙だけでもそれがわかろうというもの。今号から和田誠さんの「自分だけのデザイン史」という新連載が始まった。カラーの図版を豊富に使っていてそれだけでも興味がそそられる。また、久住昌之×加藤総夫×鴻巣由季子「脳訳マンガ」という鼎談では、久住昌之谷口ジローコンビの名作「孤独のグルメ」がフランスで出版されるということを知る。あの食にこだわる国の民がこの食べることのジレンマドラマをどう読むのだろうか。また、出版社フリースタイルの近刊として久住&谷口コンビの「散歩もの」がリストアップされている。どこかに連載されていたものらしいが未読。はやく読みたいものだ。
前回アクセスの畠中さんより「BOOKISH」の山田稔特集をいただいた時に、次回はここで山田本を買おうと決めていた。編集工房ノアのものの中から平野甲賀装幀も鮮やかなこの1冊を選ぶ。畠中さんからは、うれしいお誘いやお気遣いをいただく。ありがとうございました。
東京堂ふくろう店に入ると、平台に『ku:nel』の最新号が載っている。表紙には“本と料理。”というコピーが。中には古本酒場コクテイルのオーナーが檀一雄草野心平といった作家たちの本に出てくる料理を再現したページやカナダの作家アリステア・マクラウドをかの地に訪ねた記事などがある。昨日立ち寄った青空洋品店のあづさんも登場していた。
ふくろう店のレジ横には一部屋古本市でお会いしたリコシェの阿部さんがやっている「筆豆班」というコーナーがあり、レターセットやポストカードを売っている。明日会う友人へのお土産にポストカードを数枚購入。
八木書店の店頭のカゴの中に山口瞳単行本が並んでいるのを発見。その中から1冊。

  • 山口瞳「還暦老人ボケ日記」(新潮社)

男性自身シリーズの1冊なのだが、日記形式になっている。日記好きとしてはそれがうれしい。400円。
今日はコミガレがやっていないので、タテキン(田村書店店頭均一台)に期待。

ありました。2冊で500円。「上方今と昔」はダブリなのだが、佐野繁次郎装幀で箱付き200円ではつい買ってしまう。来年の一箱古本市の商品仕入のつもりも多少あり。
空模様が怪しくなり、古本屋回りの足も速まる。山陽堂書店でこの本を見つける。

今年の3月に出た単行本未収録中期短篇集。定価がそれなりに高いので古本で探していたのだが、美本が半値以下だったので買っておく。角田光代さん推薦の初期作品集はなかった。
最後は日本特価書籍

以上の収穫を持って、珈琲館へ。好きな本を買い込んでのひと時はもちろんうれしい時間なのだが、買うだけで読めない現状や部屋にある本の収納の問題などにしばし考え込んでしまう。今は気楽な一人暮らしのため、こんな生活をしていられるが、いつまでもこんなことが続くわけがないという思いは絶えず心の中にある。本の処分や現在の生活を含めたもろもろの見直しをする時期に来ているのだと思う。
真剣に引っ越しを考えなければならない。そうしないと階下に住む大家さん一家を圧殺する日もそう遠くはないだろう。人を殺めた過去を背中に漂わせながら唇を噛み締めて生きる高倉健にはどう考えてもなれそうもない。
電車で帰宅。今日の車中は桂文楽芸談あばらかべっそん」(ちくま文庫)を読む。基本的には女性にもてた話と多くの人々から好意を持たれた話がたくさん出てくる自慢話集なのだが、語り下ろし形式のためか、落語の噺を聴いているのと同じ気分になり、嫌みな感じが鼻につくようなことがない。噺家が落語の登場人物に寄り添いながら同時に観察者として突き放しているような自分自身に対する距離感がこの本にも感じられる。これは、聞き書きをした正岡容氏の手柄でもあるのだろう。
家のポストにBLUE NOTE CLUBから会誌とCDサンプラーが送られてきていた。CDはBETHLEHEMレーベルの名演集。一発目のチャーリー・マリアーノのサックスにうっとり。艶があって味がある。この「SMOKE GETS IN YOUR EYES」が入ったアルバムをもっていたのではないか。探してみなければ。