雑誌は過去に誘う。

久し振りにゆっくりとした日曜の朝。2週間ぶりだ。
テレビでは花田家の納骨式を中継している。世も末だとしか言いようがない。どうでもいいことではないか。
午後から、職場へ行く。僕の担当している職場の広報誌の編集が大詰めなのだ。記事を書いたり、載せる写真を選んだりしてメールで印刷所へ送る。誰もいない職場でサザンやU2のベスト盤を流しながら、淡々と仕事をする。
7時前に職場を出て、本屋へ寄る。

  • PLAYBOY』8月号
  • 『東京人』8月号

PLAYBOY』は開高健特集。「エエジャナイカ」や「okatakeの日記」でも触れられていたように開高氏ゆかりの『洋酒天国』を模した「開高天国」という小冊子が付録で付いている。開高氏の盟友・谷沢永一氏も執筆しているが、その冒頭に出てくる〈平野諒〉は〈平野謙〉の誤植ではないか。谷沢氏の文章でこのような誤植に出会うとはちょっと驚く。もともとプレイメイトのグラビア写真が売りの雑誌だけに、写真の使い方がうまいと思う。しかし、どこかで誰かが書いていたような気がするけど、もうプレイメイトのヌードグラビアページはいらないのではないかな。それ目当てにこの雑誌を買う人って今時どのくらいいるのだろうか。あまりいないと思うのだが。それより、こういった特集をしっかりやってくれれば、それなりの購読者を維持できると思う。以前のブルーノート特集も悪くなかったし。
『東京人』は“昭和40年代街角写真帖”。加藤嶺夫さんというカメラマンが撮った昭和40年代の東京風景を題材に、中野翠泉麻人坂崎重盛平岡正明といった方々が文章を書き、なぎら健壱×関川夏央両氏の対談もある。特集の扉ページに加藤氏の愛機としてNikon FMの写真が載っている。自分が使っているのと同じカメラであるのが嬉しく、それだけでこの人の写真に愛着を感じてしまう。自分という人間のなんと単純なことか。カメラを抜きにしても、この方の撮るモノクロの昭和40年代の風景がなんとも懐かしい。僕の小学生時代の東京がそこにある。奇を衒わない、普通のスナップであることで、そこに写っている事物と自分との間に変な夾雑物を感じさせない写真になっているのがいい。その他、小特集“寺田寅彦”があり、堀江敏幸松本哉池内了、小山慶太といった方々が文章を寄せている。『東京人』名物の座談会は中村勘三郎×丸谷才一×関容子「あたらしい勘三郎の時代」、短いが追悼野村芳太郎監督などがあり、結構充実している号だ。
この雑誌で野村芳太郎監督特集上映が東劇で8月13日から9月2日まで行われることを知る。渥美清主演「拝啓天皇陛下様」を劇場のスクリーンで観てみたいものだ。
夜、テレビ朝日で「スターウォーズ特別版」をやっていたので観てしまう。今風にいえばエピソード4ということになるのかな。この映画が封切りの時に、確か今の皇太子が東劇に試写を観に行ったというニュースを見たことを思い出した。僕自身は上野の映画館に観に行ったはずだ。あの熱狂的なブームの有様を今でもよく覚えている。それ以来、このシリーズは全作劇場に足を運んで観ている。やはり、「エピソード3」も観に行かずばなるまい。
それにしても、雑誌は今を切り取るものだと言われて久しいのだが、僕が興味を示す特集はすべて僕を過去に誘うものばかりだ。たぶん、雑誌自体の作りもそういった志向が強いのではないかと思う。若貴の諍いよりも、「スターウォーズ」の中に黒澤映画の引用を観ている方が楽しいのは仕方がないことだよね。