私小説のかほり

連日の暑さにいささか辟易気味であるが、そんなことにはおかまいなしに月曜日はやってくるし、いかねばならない職場は今日もそこにあるのだ。というわけでいつものごとく出勤し、夕方からの3時間ほどの会議を終えて、いつものごとく退勤する。会議では、夏のイベントの概要が決まる。打ち上げ花火、「We Will Rock You」、「マツケンサンバ」、「さくらんぼ」(大塚愛)などイケイケノリノリのプログラムが次々と参加者の賛同を得て、決定していく。どうやらみんな暑さで頭のタガが緩んでいるのかもしれない。「マツケンサンバ」は所属部署のメンバーでバックダンスを踊ることに。学生時代ダンスを学んでいた女性スタッフが講師となり、イベント前にダンスの強化練習会が実施されることも決定。それに加えて僕には同僚と一緒に「あるある探検隊」をするという仕事(?)もあるのだ。夏がコワイ。
いつものごとく本屋により、本を買う。

ジャズミュージシャン(ベーシスト)でもあるビル・クロウが、長年に渡るジャズマンとの交流の中で知ったジャズにかんする逸話(アネクドーツ)集。ジャズ喫茶の店長であった村上春樹氏の訳文で読めるのが嬉しい。「グッド・ライン(名文句)」の章から気に入ったものをいくつか。
《ボビー・ハケットは他人の悪口を言わないことで知られていた。ある友達が彼にアドルフ・ヒットラーについてのコメントをしつこく求めた。いくらなんでもヒットラーのことまでは誉められないだろうと踏んだわけだ。でもボビーは言った。
「そうだな、彼もその分野では第一人者だったな」》
シェリー・マンはあるインタビューでジャズ・ミュージシャンの定義を求められてこう言った。「我々は同じ演奏を二度出来ない人種だ」》
帰宅して、ブログ散歩。最近いろいろなブログで評判の「須雅屋の古本暗黒世界」の6月23日分「家の中の殺意」を読む。奥さんの留守中に買ってきた古本をベッドの上にのせているのがバレた後の夫婦の会話が楽しい。まるで「火焔太鼓」のようだ。長旅で疲れた奥さんを尻目に、ひとり押し入れの寝床へと入るラストもすごい。「厩火事」の旦那を彷彿とさせる。奥さんは心の中で「寝床」の小僧のように泣いたのではないか。「okatakeの日記」で岡崎武志さんが言うように、これは既にひとつの作品ですね。日本文学のお家芸である「私小説」の香りが馥郁と漂うようです。