ノーサイドの笛は鳴らじ。

空梅雨なのだろうか。午後から晴れ上がり、やたらと暑い。夕方、仕事を終え、職場を出る。自然に足はブックオフの方へと向かっている。ipod志ん朝師匠の「品川心中」を聴きながら、まだ暑熱の残る明るい夕空の下を歩いて行く。昨晩の「タイガー&ドラゴン」ではこの噺のサゲを親分の家にいた人物の腰が抜けているというカタチにしていたが、志ん朝版は厠へ落ちた与太郎が家の中に上がり込んできているのを知って「上がってきちゃいけねえ」でサゲとなっている。心中に失敗したキンちゃんが身を投げた(投げさせられた)海から上がってきたことと対応したカタチだ。でも腰が抜けたでは内容との対応がはっきりしない。後半が暗い話だから、前半で切ってしまうためにこんなサゲになっていると説明されていたが、それでもあまり納得はいかないのだが。
ブックオフで4冊。

これでアン・タイラーの文春文庫は残すところ「歳月のはしご」だけとなった。
「心に残る人々」は文藝春秋編シリーズの1冊で、廃刊となった『ノーサイド』に掲載された75人のエッセイを集めたもの。ああ、『ノーサイド』。この雑誌によって僕は坪内祐三という名の“凄玉”の存在を知ったのだった。大好きな雑誌だったのに何故に廃刊の憂き目に(売れなかったというのがその理由なのであろうが)。『サライ』が生き残り、『ノーサイド』が倒れたのは、前者がカタログで、後者が事典だったからだと僕は思っている。カタログはモノの売買に絡み、広告やタイアップに結びつくが、事典は読者の知的欲求は満たしても、お金を呼んでくることはない。『ノーサイド』の読書(家)特集は、とくに素晴らしかった。ぜひ、もう一度『ノーサイド』を復刊させてくれないだろうか。あの雑誌の古本特集など是非読んでみたいものだと思う。ともかく、あと10年も経てばこの雑誌の古書価は上がると思う。バックナンバーを集めるなら今のうちだ。
大谷本は「大阪学」シリーズの1冊で、坪内さんが「文庫本を狙え!」のコーナーで取り上げていたもの。親本が編集工房ノアであることを見れば、その出自の確かさが分かろうというもの。
丸谷本は初めて見た文庫本だったのでとりあえず買ってしまった。
家でテレビをつけると、「アド街ック天国」がやっている。今日は石神井公園特集。食事をしながら流していると、突然“石神井書林”が登場。初めて店内の映像を見る。内堀弘さんがインタビューに答えていた。内堀さんの書いた「ボン書店の幻」は探求本のひとつ。そのうちどこかで出会えることを楽しみにしている。