SEX AND THE MONKEY。

 昨日は大雪で職場の最寄り駅を通っている電車の路線が終日不通となり、臨時休業となった。


 しかし、昨日の午後には僕がチーフで主催している小規模なイベントがあり、そのキャンセル作業をしなければならないのと、僕がまとめ役になっている委員会の検討案が他の職場の委員から職場の僕のPC宛にメールとして昨日中に送られて来ており、それを全体案にまとめて各委員に返送するという仕事のため行かなくてもいいはずの職場へ行く事になった。



 家を出るとそこは雪国だった。しかも先週以上の豪雪地帯になっていた。早朝なのでまだ誰も雪かきなどしていない道に足を踏み入れるとズボズボと膝下近くまで雪に埋もれる始末。なんとか車の通る道まで出て車の轍が作った歩道を平均台を歩くように注意深く歩く。僕が家の近くから最寄り駅まで乗るバスは現在不通になっている電鉄会社の運営しているバス会社で、出がけにHPを確認したところ鉄道の運休は書かれていたが、バスに関しては何も触れていなかった。とりあえず、駅まではバスで行き、駅から職場まではいつもの通り歩こうと考えていた。しかし、バス停に近付くとバスの待合所から駅に向けて歩き始める人の姿が目に入った。嫌な予感がしたが、希望を捨てずにバス停まで行くとベンチに座ったおじさんが、クツの上からコンビニ袋を足に結わえながら「今日バスは運休だよ」と教えてくれた。


 あきらめて駅に向かう坂を下り始める。土曜日の朝という事もあるのだろう、もちろん電車とバスが止まっている大雪の降った朝であるということが一番だろうが、車も人もほとんど通らない白い坂道を手探りのように歩いて行く。職場まではずうっと下りなので通常ズンズン歩いて行けば30分ほどで着くのであるが、駅を越えて職場までの坂道をズリズリ歩いて何とかたどり着いた時は家を出てほぼ1時間が経っていた。


 ダウンコートの下で汗ぐっしょりになったワイシャツとたっぷり雪水がしみ込んだズボンを脱ぎ、職場に置いてあった野外仕事用の作業着に着替える。いつもは百数十名でごった返す仕事場には数名の同僚しかいない。そりゃそうだろう。

 PCに向かうとやはりメールが届いていた。メールを開き、自分が作っておいた文書のフォーマットに流し込み、フォントや書式をあわせた上で自分の担当部分を書き始める。


 すると今日予定していたイベント(僕の担当とは別のもの)を予定通り実施するからお客さんが通れるように職場の門から建物入口までの雪かきをして通路を確保しろという上司の命令が届く。えっ、最寄り駅の鉄道が運休しているのにイベントをやるんですか、自宅で休んでいていいところを今日中にやらねばならない仕事を抱えてやむを得ず出勤している数名の人間に雪かきをしろとあなたは言うのですねと目が点になる。


 ハンガーにかけて干していたダウンコートをもう一度着込み、まだぐっちょりと濡れたままのクツに足を入れ、スコップを持って外へ出る。雪はすでに雨に変わっている。水分を含んだ雪は重く、冷たい雨はダウンコートを通して先ほど着替えた作業着の中にも染みてくる。雨に濡れた髪の毛は「マディソン郡の橋」のクリント・イーストウッドのように頭にペッタリと張り付いている。


 なんとか雪の中に道を作り、溶け出した雪水が通路に溜まらないように排水溝までの用水路を掘って作業終了。もう着替えはないから頭を拭いて作業着の上からカーディガンを羽織って体を冷やさないようにする。これ以上いると何をやらされるかわからないと思ったのか、同僚たちのほとんどが帰って行った。


 こちらは帰りたくても仕事が終わっていないので夕方までPCに向かい続ける。何とか自分の担当部分を書き終え、全委員の意見をまとめた全体案を作成し、九州や北関東の委員たちのもとへメールで送り返す。



 午前中の雪かきが応えたのか、職場を出て歩き出すと自分がぐったりと疲れている事に気づく。肩や腰に早くも筋肉痛を感じる。あの程度の雪かきでこんなに疲弊するようでは到底北国で暮らす事はできないなと思う。


 今日は充分歩いたので駅までバスに乗る。駅ビルの本屋へ。


 普段の土曜日であれば人で混雑している駅ビルの中もなにか閑散としている。電車が動いていないのだから人も動かないのだろう。


MONKEY Vol.2 ◆ 猿の一ダース(柴田元幸責任編集)

MONKEY Vol.2 ◆ 猿の一ダース(柴田元幸責任編集)




 「坑夫」は十年以上前に夏目漱石全集で読んでいるのだが、紅野謙介先生の注と解説が付いた上に、新聞連載時の挿絵が入った新刊として出ていたので思わず買ってしまった。

 『MONKEY』は第2号。「特集 猿の一ダース」と称して11人の作家の小説を載せている。“一ダーズ”なのになぜ11人しかいないのかに就いては前書きで責任編集の柴田元幸さんがその理由を書いている。11人の中には村上春樹シェエラザード」が入っているし、連載「村上春樹私的講演録 職業としての小説家」もあるので春樹好きにはうれしいだろうな。



 帰宅して『MONKEY』から「シェエラザード」を読む。「千夜一夜物語」の王妃シェエラザードのようにベッドの中で毎回話をしてくれる女性を巡る話。それにしても最近村上春樹短編がどんどん書かれているな。『文藝春秋』にも毎号載っているのに別の雑誌にまで書いているのか。とりあえずそれらの大半に目を通しているが、必ずセックスの話が出てくるんだよな。セックスの出てこない短編を読んでみたいと思うのは僕だけだろうか。


 『MONKEY』のあとがきを読んでいると柴田元幸教授退官記念論文集を編集しているという話題が出てきた。100人近い同業者に原稿を依頼し、論文集は三巻本になる予定だと言う。これは読みたい。






 今日は午後から横浜へ買い物に出る。先日WOWOWオンデマンドでポール・スミスのノンフィクション番組を観ていたら久しぶりにポールスミスの服を買ってみようかという気になった。彼の服というよりは、ポール・スミスという人に興味をそそられる。毎朝、プールで泳いでから職場へミニクーパーで出勤している。そういえば、先日WOWOWで観た映画「裏切りのサーカス」のスマイリー(ゲーリー・オールドマン)も朝どこかの池のようなところで水泳をしていたなと思う。英国の年配男性は朝に泳ぐという習慣があるのだろうか。横浜駅周辺にはそごう、丸井、高島屋ポールスミスショップが入っている。3つもあれば何か欲しいものがあるだろう。


 日曜の横浜駅は人であふれている。これまで何度も書いているが僕はこの駅が苦手である。横浜にもう20年以上住んでおり、それなりの愛着もあるのだが、この駅だけはいつまでたっても苦手なままだ。野外仕事の関係で年間何十回もこの駅を利用しているのにいまだに慣れない。


 そごうのポールスミスショップに寄るが空振り。そごう内の紀伊国屋書店へ。

  • 『ケトル』2月号


ケトルVOL.17

ケトルVOL.17



 『ケトル』は“やっぱり大瀧詠一特集”。地元の書店ではこの雑誌は手に入れづらいのでここで買っておく。



 連絡通路を通って丸井へ。ここのポールスミスでバーゲン品のジャケットを購入。丸井のバーゲンで服を買うなんていつ以来だろう。もう昔過ぎて思い出せない。



 横浜駅周辺の飲食店は軒並み行列なので地元に帰って店に入る。昼食を終えて、珈琲を飲みに行く。昨年この街に自家焙煎の豆で珈琲を飲ませる店ができた事を知り前から行ってみたいと思っていたのだ。カウンターでブレンドとニューヨークチーズケーキ。ブレンドの濃さや苦さが僕にはちょうどいい。好きな味だ。これまでこの街にはチェーン店以外で寄りたいと思う店がなかった。自家焙煎の豆を売る店もなかったのでここの存在はうれしいな。




 帰宅して『ケトル』を読む。“大瀧詠一トリビア”が各ページの端に掲載されている。これが楽しい。大瀧詠一も「あまちゃん」を観ていたのか。