レンジが来た日。


 朝晩肌寒くなってきた。気持ちよく歩ける時期もあと少しだろうと思い、徒歩で職場へ。


 夜7時半まで働いて退勤。


 つけ麺屋で夕食をとってから、サブカル系古本屋に行く。ここの店のスタンプカードのハンコが全部たまっていたのでそれを使って買い物をしに来たのだ。

 前者は柴田元幸翻訳叢書の1冊。『coyote』の連載をまとめたものだ。地元の新刊書店ではどこにもなかったのにここに半額であった。
 後者は大修館から出た単行本を持っているのだが、ちくま文庫版も持っていたかったのでカードを使って買っておく。500円引きなので2冊合わせても1000円を越えず。


 バスで桂米朝「持参金」を聴く。他人の子を身ごもった女性と20円の持参金目当てに結婚したものの持参金が手に入らなくなったにもかかわらず「これも何かの縁だ」と現実を受け入れていく主人公の大らかさと言おうか、底抜けさと言おうかがまぶしい。


 帰宅後、「未見坂」から「苦い手」を読む。台所のテーブルで電子レンジと二人で佇む肥田さんの母親。まだ珍しかった頃の電子レンジが我が家に来た時の自分の母親を思い出す。あの日は母にとって人生の中でも指折り数えるほどの晴れやかな日であっただろうと思う。