南半球で読む北半球。


 昨晩、海外出張から帰国した。1週間夏の国にいたので冬の日本にまだ身も心も順応しない。出張には3冊の文庫本を持っていった。先ず「坂の上の雲」7巻を行きの飛行機と現地での移動で乗った国内線の機内で読み上げる。


 仕事の合間にサーキュラーキー埠頭からマンリービーチへ向かうフェリーに乗った。気温は35℃だが、海を渡る風は気持ちよく涼しい。バッグから堀江敏幸「子午線を求めて」を出して読み始める。南半球の海の上で北半球のパリに残された子午線を示す銅盤を探す筆者の旅を追うというどこかズレた読書を楽しむ。


 帰りの成田行き飛行機では関川夏央汽車旅放浪記」を読了。窓の外にはどこまでも青い空と海、本の中には夕暮れのローカル線の小駅や踏切の音を子守唄にした寝台車。本を閉じるとすぐに飛行機は着陸体勢に入った。


 成田からバスで地元へ戻る。ぐったりとした疲れと寒さを感じる。起こる感慨は、ブックオフのない国からブックオフのある国に戻ってきたというくらいの所か。