温泉と秘密。


 のんびりできるはずであったのだが、なぜか朝出勤した途端にあれこれと仕事が舞い込む。


 午後2時頃に仕事が終わる。ちかくの店でビールやつまみをしこたま買い込んで同僚の車で出発。同じ部署の7人による打ち上げ旅行である。


 車内では同僚が作った最近のヒット曲を集めたCDを聴く。サビなどの一部分をTVなどで聴き知った歌の全容があれこれ解明されていく。こういう歌だったんだ。


 車は快調に進み、4時過ぎには奥湯河原の宿に到着。持ち込みの荷物をそれぞれのバッグに潜ませながら部屋へ。早速持ち込んだビールや日本酒を飲み出す同僚たち。これから風呂に行くというのにそんなに飲んで大丈夫なのか。


 夕食前にこの宿の売りである野天風呂に行く。「シースルー」という言葉を思い出させるようなシンプルな脱衣所と思ったより小さい野天風呂がそこに。しかし、すぐ横に滝が流れるその雰囲気はやはりいい。先週の温泉旅行は幹事としての仕事に追われのんびり入浴というわけにはいかなかったので、こうやって風呂に入ってぼんやりできるのがうれしい。
 気分が良くなってそこにある平らな岩の上に立ってしばらくマイナスイオンがムンムンしてそうな滝からの風に吹かれて後ろを振り向くと宿の窓から丸見えの状態にいることに気づき、静かに湯の中に潜航する。


 部屋に戻ると夕食の用意が始まる。我々の部屋付きの仲居さんはけっこう年配の女性で、言葉や行動がとてもゆっくりしている。「なにかあったらフロント9番までご連絡ください。それでこの部屋の電話はどこにあるんですか?」などと言う。それを聞きたいのはこちらなんですけどね。
 


 その後、部屋で料理を食べながら宴会。2時間ほど思い切り飲み食いする。その後、宿の中にあるカラオケスナックへ移動。他のグループが数組。そのうちの一組にものすごくつまらなそうに座っている女性がいるのを同僚が発見し、みなの注目がそこに。同じグループの人間が歌っても誰かが話しかけても表情を変えず、とてもつまらなそう。家族とも思えない集団なので、やはり職場の同僚といった集まりか。それにしても、折角来たんだから楽しんでいけばいいのに。


 その後11時半までカラオケをやって部屋に戻り、また持ってきた飲み物とつまみで3次会。ある人から口止めされていたためこれまで黙っていたある秘密をそこにいる同僚全員がすでに知っていたことを知る。この職場で秘密は守られないということと、知っていながら知らないふりで僕にそれを悟らせなかった同僚たちの大人の態度に感慨もひとしおをいう感じ。