こっちが影で、こっちが柴田。


 誕生日。職場に着くと友人からメールあり。肉親以外でも誕生日を覚えてくれている人がいるというだけで何だかホッとする。このところ変に忙しくて気持ちに余裕がないので、こういったささやかなことがありがたく感じる。


 外は雨が降っているようだが、そんなのおかまいなしに机にへばりついて仕事を進める。いくつかの仕事を仕上げて、残りの仕事の算段をしていると、同僚の口から思わぬ一言が。ああ、そうだその仕事もあったのだ。終わったと思っていた項目がまだ未完成なものに過ぎないことがわかり、慌てて資料を集めて追加処理をするための新たなデーターベースを作る。
 コンビニで買ったゴーヤチャンプルとおにぎりからなる昼食をとりながら、ネットでニュースを見ると、先頃来日コンサートをしたビョークが中国で「チベット独立」を叫び、中国政府の不興をかったらしい。個人的には政治的発言をするミュージシャンというのは苦手なのだが、ビョークだと許してしまう。彼女は本来とても頭でっかちな人(その音楽を含めて)だと思っている。だけどそのポリティカルコレクトな部分を相対化させてしまうような過剰なものを持っていていつも彼女の頭を裏切っている気がしてならない。


 iPodからこれを選んで聴きながらプリントアウトされた資料にひたすら色ペンで数字を記入していく。

グレイテスト・ヒッツ

グレイテスト・ヒッツ


 夜、退勤。本屋へ。

 

Coyote No.26 特集:柴田元幸[文学を軽やかに遊ぶ]

Coyote No.26 特集:柴田元幸[文学を軽やかに遊ぶ]


 柴田元幸特集号。厚さがうれしい。


 誕生日だから何か美味しいものでも食べて帰ろうと思うが、行きつけのとんかつ屋は休みだし、愛用のつけ麺屋には数日前に行ったばかりだし、大好きな料理屋はひとりではちょっと居づらい感じがするので行きづらい。仕方なく、いつものコンビニで一番高くて一番大きい弁当を買って帰る。“男前弁当”と書かれたその品をレジに持っていったときバイトの女の子が“ふっ”と笑ったように見えたのは気のせいか。


 帰宅後、「文学鶴亀」を読む。「韋駄天漫筆」を読み終わり、トータル200ページほど読んだことに。思わぬところで恩師の名前が出てきたり、僕が慣例としている雑誌名への『』使用を武藤さんも以前は行っていたと知る。


 『coyote』を眺める。ロンドン・リバプールに関する柴田さんの掌編や自宅書斎の写真などをよろこぶ。
 表紙の石畳の上の柴田さんとその影の写真。逆光気味のためどちらが影でどちらが柴田さんだか一瞬わからなくなる。最近芸人のなだぎ武が演じている狂言風ギャグ「ややこしや」を思い出し、「こっちが影で、こっちが柴田。えっ、逆。こっちが柴田で、こっちが影。影が柴田で、柴田が影。も〜ぉ、ややこしや」と頭の中で呟いてしまう。



 なだぎ武「ややこしや」