異国でマック。


 朝、乗ったバスの前の席に、小学校低学年の女の子とその父親が座る。絵本のようなものを持った娘がそのページを示すようにした後、父親の耳元で内緒話のように何かを語りかけている。それに父も内緒話で答える。父親であるこの男性にとって娘との一番幸せな時を過ごしているのではないかなと思う。10年後、この女の子が父親と並んで2人掛けの席にはたして座ってくれるのだろうか。


 4月に職場の配置換えがあり、胸下ほどの高さのロッカーの上の荷物が片付けられ、見晴らしがとてもいい。。そこに、昼食時にいれている紅茶のティーサーバーを置く。これまではロッカー上の荷物に挟まれた狭いスペースが定位置だったのだ。まるで、今日の紅茶は地下の喫茶店からオープンスペースのカフェに引越ししたような明るみの中で気持ちよく琥珀色に輝いていた。


 退勤後、本屋へ。

 ちくま文庫の新刊からこの2冊をチョイス。
 米朝本は朝日放送ラジオの対談番組「ここだけの話」から12人分を活字にしたもの。対談相手は藤山寛美片岡仁左衛門松鶴家千代若・千代菊岡本文弥林正之助など。
 岡尾本は、北條(buku)さんがmixiのブログでホメていたので気になって手に取ると、これがよかった。さまざまな国でのいろいろな旅の写真が収められており、その合間を縫うように岡尾さんの文章が挿入されている。偶然開いたページは緑の文字で書かれたスコットランド日記だった。緑もスコットランドも好きなのでやはり買うことに決める。


 夕食をとりに入ったそば屋で、鮪のネギトロ定食を待ちながら岡尾本についている穂村弘さんの横書きの解説を読む。その後、前にさかのぼって、ページをめくっていると、初めて訪れる国や町でマクドナルドを見つけるとホッとするという文章にぶつかる。そう、そうとうなづきながら読む。折角の異国に来て、アメリカナイズされたあの均一的な世界をありがたがるなんて、と眉をひそめる人がいそうだが、どんな場所でも必ずトイレがあり、エアコンディショニングをしているマクドナルドは旅人のオアシスなのだ。トイレの少ないロンドンで何度マックに救われたことか。また、地下にあるマックの店内から、ふと外に出てみると、そこがエジンバラだったり、アテネだったり、オークランドだったりするちょっとした驚き。まるでどこでもドアで日本のマックから急に外国に来てしまったような何とも言えない錯覚感がけっこう気に入っているのだ。


 先日の「鬼平犯科帳スペシャル 一本眉」を見逃したという友人のためにハードディスクレコーダーからDVDへのダビングをする。他のDVDプレーヤーで再生できるようにするファナライズ処理というのを初めてやってみた。なんだこんなに簡単なことなのか。


 「なえ日記」の大島なえさんから『ちくま』4月号と『ほんの手帖』39号が届く。先日神戸でお会いしたとき住所を聞かれてお教えしたのだが、こんなうれしい贈り物をくださるとは。『ちくま』が手に入らないとこの日記でも何度か書いているので、それを読んで送ってくれたのだろう。ありがたいことである。


 早速『ちくま』から岡崎武志「古本屋は女に向いた職業−−女性古書店主列伝7 蟲文庫 田中美穂さん」を読む。岡崎さんのように石田五郎「天文台日記」(中公文庫)を読みながら、倉敷の蟲文庫に行ってみたいものだ。そして帰って来た後には、小津安二郎監督の「東京物語」を観直すというのも悪くない。
 その他、岸本佐知子「ネにもつタイプ」も読んだ。