型番のない名著。


数日振りに真夏が帰ってきた。野外仕事にはこたえる。
仕事を終えて、川崎ミュージアムへ向かう。今日の仕事場所がミュージアムのすぐ近くであったので、ここで行われている“名取洋之助と日本工房”展を観にいこうと思っていたのだ。
まずは等々力緑地内にあるレストハウスで昼食。となりには釣り堀を兼ねた池がある。カツカレーを食べる。窓の外は白っちゃけて見えるくらい陽射しが眩しい。その光の中を“氷”と書かれた旗がぼんやりと揺れている。


川崎ミュージアムの正面に立つとその大きさにちょっと驚く。この近くにはよく来るのだが、こんな立派なハコものがあったとは気付かなかった。
チケットを買って展示を観る。名取洋之助土門拳といった日本工房の出版物を支えたカメラマンが撮った写真が数多く展示されている。それらを眺めながら写真というものの魅力と魔力とでも言うものを感じる。個人的には名取作品により強く惹かれる。彼の写真は大なり小なり「演出」の存在を感じさせるものでありながら、嫌な作りものめいた浅薄さを感じる事がほとんどない。名取洋之助「写真の読み方」(岩波新書)を読まなくてはと思う。


展示場を出て、売店で図録を買う。雑誌『NIPPON』を模したデザインといい充実した内容といい後で眺めるのが楽しみだ。


いくつか片付けなければならない雑用があったのだが、家賃の振り込みだけをして帰宅する。この好天を利用して洗濯をしたくなったのだ。
溜まっていた白いポロシャツを大量に洗う。ベランダには白い衣類ばかりがずらっと並んだ。野外仕事のダメージを回復するため、冷えピタを貼って1時間ほど横になる。


起きて読書。堀江敏幸「いつか王子駅で」(新潮文庫)を読む。すでに単行本で読んでいるため再読となるが、連綿と続く散文が文学から文学を紡ぎ出す心地よさと王子という土地や都営荒川線という乗り物のイメージに揺られつつ、“馬”のモチーフの変奏がトラックを駆け抜ける少女の姿と重なった時、満足して本を置いた。


夕食後、濱田研吾三國一朗の放送室」を読み継ぎ、読了。前にも書いたが、細かいところまで目の行き届いた仕事に頭が下がる。尊敬する先輩である徳川夢声の評伝を書いている三國氏の姿を夢声本の著作を持つ著者が評伝として書いているというその入れ子のような構造を楽しみながら読んだ。これを読むことによって僕の三國氏への関心が強くなったのを感じる。私家版なので「型番(ISBN)のない名著」ですね。とりあえず、未所持の三國本の収集に励むことにしよう。


今日の4000番台。

Meet You at the Jazz Corner of the World

Meet You at the Jazz Corner of the World


ジャズメッセンジャーズの2枚続きのライブ盤(4054&4055番)。BNのライブ録音としては音質があまりよくない箇所もあるが、演奏自体は快調だ。特にリー・モーガンのソロに耳が反応する。やはり彼には華がある。