今日の音楽

言わずと知れた有名盤である。ビリー・ホリディの死を悼んでウオルドロンが作った表題曲は多くの日本人によって愛聴されてきた。
個人的には、初めて買ったCDがこのアルバムであるため、特に思い入れがある。坪内祐三さんが育った世田谷の赤堤にあったオスカーというレコード屋で買ったもの。重く引き摺るようなピアノのイントロに続いて発せられるジャッキー・マクリーンのアルトの音が余りにクリアなことにシビレた。これがCDの音かと感動した。
しかし、それから20年近く経った今は分かる。マクリーンのアルトの音がクリアなどではないことが。彼の吹く音は、どこか濁りを含んでおり、それがいいのだということが。
5年程前に、ブルーノート東京ジャッキー・マクリーンのLIVEを聞いた。アンコールでは予想通り、「LEFT ALONE」が演奏された。それは、これを演れば日本人が喜ぶだろう事を見越した選択であり、サービスであることはすぐに見て取れた。だから、決してレベルの高い演奏とはいえなかったが、それでもよかった。目の前にマクリーンがいて、あの曲を演奏しているのだから。それだけで、日本人のジャズファンの多くを幸せにすることができる共通のものを我々は持っているんだと確かに実感できたのだから。

レフト・アローン