今日の音楽

  • ERIKO ISHIHARA「I WISH ON THE MOON」(PONNY CANYON)

石原江里子「月に願いを」が邦題。ロンドン在住のジャズ・ピアニスト&シンガー。MSNのサイトで紹介されていたのを見て知った人。ジャズを学ぶためにアメリカではなくロンドンに行ったというのが面白い。オリジナルは1曲だけで後はスタンダードナンバーに徹しているのも好印象。
このアルバムを聴きながら、歌手の声というものが音楽に占める割合の大きさということを考えた。僕がアン・サリー嬢を飽かず聴き続けているのは彼女の音楽性などといった抽象的なものからではなく、彼女の声という具体的な質感のあるモノに魅了されるからである。その点からいえば石原江里子という人の声は、僕にとって“平均的”な声。日本人の女性ジャズ・シンガーが出す声であり、最近CMから流れてくる日本人の歌うジャズのイメージにぴったり当てはまる感じ。TVのニュース番組とのタイアップ曲が3曲入っているのもうなずける。
えらそうなことを言えば、まだこの人以外の誰でもないという質感が僕には感じられない。でも、無理にジャズっぽくしようとしておらず、自然に歌おうとしていることに好感を持つ。
CDの帯に「紅茶の国から届きました」とあるのはどんなものだろうか。ロンドン在住を売りにしたいというレコード会社の思惑なのだろうが、スターバックスが乱立し、紅茶を頼めば大抵の店でティーバッグが出てくるあの国を「紅茶」で括るのはもうそろそろよしにしたらいいのに。日本を「茶の湯の国」と呼ばれた時と同じ違和感を感じてしまう。

月に願いを