小雨の降り始めた午後、出張のため職場を後にする。
横浜駅からバス。片道30分余りを桂枝雀「雨乞い源兵衛」を聴きながら行く。“雨乞い”の話なのに雲が切れ、陽射しが戻る。
辿り着いた出張場所では会議は既に始まっており、入り切れずに会議室前の廊下で会議の内容を聞く。会場に来て受付を済ませ、資料を貰えばいい会議なのでこれでもいいのだ。
会議の途中、空は厚い鉛色の雲に覆われ、大粒の雨がドウッと降ってくる。30分後会議が終了し、外に出た時には雨は上がっていた。枝雀師匠が言うように、天気は人類がこの地上に誕生する遥か以前からうむことなく晴れたり曇ったり雨降らしたりしているのだから、人間の予報なんてなんぼのもんじゃいとあざ笑うように好き勝手に雨の出し入れをしているようにしか思えない。
帰りのバスでは古今亭志ん朝「化物使い」。気分が重い時にはこの噺のようなナンセンスで滑稽で人間の逞しい生活力がじわじわとこちらに滲んでくるようなものがいいのだ。半時間後、バスが横浜駅に着くその時にオチの「化物使いがあら過ぎてとても辛抱なりかねます」がピタリと決まる。自分の選択の正しさに思わず口元がゆるむ。
横浜そごうのロフトへ。カナダでバッグとともに消えたほぼ日手帳を買い換えに来たのだ。皮のカバーは去年使ったものを代用にするとして中のノートの部分だけ購入。ついでに手帳用の新しいペンも一緒に。
後で買ってきたほぼ日手帳が2008年のダイアリーであることに気づきガッカリ。2007年のはもう売っていないのだろうか。
横浜駅の構内は人も多いうえに、流れが一定せず、とても歩きづらい。新宿駅や渋谷駅も同じように人が多いはずなのだが、人の流れがしっかりできているので、それに乗りさえすれば結構スムーズに移動できる。ところが横浜にはそれがない。だからこの駅は好きになれないんだよな。
人ごみを避けるように地下の成城石井へ。夜7時のこの店は女性客で満杯。パッと見に男性は店員しか目につかない。まるで女性専用車両に間違って乗り込んでしまったような圧迫感がある。その中を泳ぐようにして店の奥に。紅茶のコーナーでウイッタードを探すが見当たらない。目当てのものはなくても、様々なもので満たされた店内を眺めているだけで幸せな気分になる。さまざまな種類のチーズや世界のビール、聞いたこともないようなスパイスの瓶の群れ、ピラミッド積みされたワインのボトル。目の保養をして電車で帰る。
車中は江戸家猫八「おかあちゃんは二人いらない」を読む。最愛の7歳年上の奥さんを亡くした猫八さんは、奥さんを看病してくれた19歳下の看護婦さんを見初めて結婚を申し込む。亡くなった奥さんを愛すことこの上ない状態でそれを知っている女性を愛してしまう自分の姿をストレートに描く猫八さんに好感を抱く。
駅前のつけ麺屋で夕食をとってから、CDショップへ。ヴォーカルアルバムが20%OFFだったので2枚購入。
帰宅後、買ってきた1枚を聴く。
- アーティスト: ベイ・シュー,ダン・ニマー,塩田哲嗣,クィンシー・デイヴィス,マサ清水
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2006/03/08
- メディア: CD
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
このベイ・シューという中国人ジャズシンガーが歌うユーミン作の「HAPPY NEW YEAR」をiTunesから無料ダウンロードして聴いたことがある。前半が英語で後半日本語。声がなかなかいいのだが、たどたどしい日本語はご愛嬌といったところかな。
このデビューアルバムには日本語の歌は入っていない。その代わり2曲を中国語で歌っている。中国語でジャズがちょっと新鮮。
伊藤茂次詩集「ないしょ」所収の天野忠「ないしょの人−伊藤茂次のこと」を読む。天野さんは詩集の題名にもなっている「ないしょ」という詩を《私の好きな作品》として挙げている。癌で病いの床についているおくさんにないしょの男がいることを知って伊藤さんは嫉妬に苛まれるが、病院にその男が訪ねてくるとおくさんがその男を追い返してくれと頼むという内容の詩。人は嫉妬する生き物なのだということを我が身にひきつけて思う。
あまり物には執着しないのだが、人には強く気持ちが残ってしまう己の有り様を思い浮かべ、人への執着が“嫉妬”の温床なのかと考えたりもする。
ある人の行動・選択がどうしても納得できないものとしてここしばらくずうっと気持ちの中にひっかかっている。人のこころはよく見えない。
今日職場に届いたクレジットカードの番号を、アマゾンやiTunesstoreなどに登録する。そのついでにiTunesでくるり「言葉はさんかく、こころは四角」を購入。200円。
明日の台風が気にかかる。