再来年どうでしょう。

 

 この年末は例年になくのんびりしたものとなった。

 

 それは意図したものではなく、22日の月曜日に振り替え休日をとって健診センターに日帰り人間ドックに行った夜に38度近い発熱をしたことから起こったことだった。

 

 職場のルールは37.5度以上の発熱があった場合には平熱になってから4日間は自宅待機というもの。たまたまフルタイムの勤務は21日で終わっており、22日からは4時間のフレックス勤務となっていたので仕事にはあまり影響がないのが幸いだった。そのためなし崩し的に今年の勤務は自宅待機のうちに終わってしまった。

 

 熱は翌日から36度台になっていたが微熱は続いていた。24日くらいから咳が少し出るようになった。呼吸の度に少し息苦しい感じがして、肺の辺りに違和感を感じた。昨年も人間ドックを受けた夜に発熱し、それが収まった頃に10日ほどの海外出張があり、現地で微熱と咳が続き、帰国後肺炎という診断を受けた過去があるため、ちょっと心配になった。同時に食事中に味をあまり感じないような気がしてきた。これはコロナウィルス感染症の症状に該当するのではないかという不安が芽生えた。肺炎の過去も気になった。そのため25日に近くの医院に電話して受診した。熱は平熱に戻っていた。医師の見立ては現時点で肺炎になっていないし、風邪の症状ともとれるが、念のためPCR検査をしておきましょうというものだった。医院の外の駐車場の隅で通りに背を向けてなかなか出ない唾液を試験管に出し続けた。

 

 検査の結果は翌日26日の朝に来た。「陰性」だった。ほっとした。発熱してから結果がでるまではどこかで罹患を疑っていたので家でぼんやりしていてもどこか落ち着かなかった。もちろん、検査結果は絶対ではない。それでも気持ちはずいぶん違う。やっと、読書やとりためたHDの内容を楽しむ気持ちになった。

 

 

 22日に行った健診センターは神保町の近くにある。昼近くに健診が終わるとそのまま書店めぐりとなった。

 

 三省堂で1冊。東京堂で3冊。

 

-辻真先「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」(東京創元社

-『フリースタイル』46号“THE MANGA 2021 このマンガを読め!

-中野翠「いいかげん、馬鹿」(毎日新聞出版

-森みどり「路上のポルトレ 憶いだす人びと」(羽鳥書店

 

たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説

フリースタイル46 THE BEST MANGA 2021 このマンガを読め!

いいかげん、馬鹿

路上のポルトレ

 

 

 「たかが殺人じゃないか」は、中学生の時にデビュー作「仮題・中学殺人事件」を読んだ作家の新作を令和に読めることを喜ぶ。アナグラムというものを中学生の自分に教えてくれた作家。牧薩次という名前も忘れられない。

 

 『フリースタイル』は恒例のマンガ特集。ベスト10の中では田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社)と和山やま「カラオケ行こ!」(KADOKAWA)を今年楽しく読んだ。

 

 中野本はこれも恒例の『サンデー毎日』連載の単行本。地元の本屋では去年と一昨年の本は棚にあるが、なぜか今年のものはいつまでも棚に並ばないのでこちらで購入。

 

 「路上のポルトレ」は、森まゆみポルトレ集・羽鳥書店という組み合わせに手が出た。

 

 

 本を買ってから、久しぶりの丸香で、いつもの肉うどんと野菜天。胃カメラのため前夜の21時以降ほとんど飲食をしていない体に、うどんの出汁が染みる。満足して店を出る。この時にはこのあと発熱するとは夢にも思わなかった。

 

 

 今週は、28日に職場に顔出し、休み中にする仕事の資料を持って帰ってきた。29日はケルヒャーのスチーム洗浄機を使って、窓・ドア・ベランダ・浴槽・トイレ・台所・フローリングなどを掃除。残りは30日の午前中に済ます。午後から駅ビルに買い物に行く。もちろん本屋にも。

 

-野木亜紀子「MIU404シナリオブック」(河出書房新社

-メアリ・ノリス「カンマの女王」(柏書房

-『早稲田文学』2020年冬号(筑摩書房

 

 

MIU404シナリオブック

カンマの女王 「ニューヨーカー」校正係のここだけの話

早稲田文学 2020年冬号 (単行本)

 

 

 

 この年末にやっと撮りだめておいたTBSドラマ「MIU404」を一挙に観た。星野源綾野剛のバディもの。「アンナチュラル」好きにはうれしいカメオ出演があったり、1話完結でありながら、前の話が後の話に繋がっていく野木脚本得意の展開などを堪能。悪役の菅田将暉の終わらせ方は賛否の分かれるところだろうな。そんなわけでシナリオブックを買っておく。

 

 「カンマの女王」は雑誌『ニューヨーカー』の校正係だった女性の回想録。本の帯に"牟田郁子(校正者)"・“阿部公彦英米文学者)”の2人の名前を発見する。これは買いでしょう。

 

 『早稲田文学』の特集は"価値の由来、表現を支える"。目次に紅野謙介・山岸郁子という名前を見つけたので購入決定。

 

 

 

  今年最後の朝を迎える。

 

 昨晩あわてて書き終えた年賀状を郵便ポストに出しに行く。マンションの廊下から雲ひとつない青空と白い富士山が見える。悪くない大晦日だ。帰ってきてから部屋のドアに正月の飾りをつける。

 

 遅い朝食は残っていたフラワー小麦粉を使ってホットケーキ。久し振りにやったら手順を忘れていて、最初に卵と砂糖をホイップするのを忘れてすべていっぺんに粉に入れてかき混ぜてしまう。ベーキングパウダーをいつも通り入れているのだが、普段よりぺたんとしたホットケーキになった。

 

 昼食後、今年最後の買い物に出る。やはり本屋に行く。

 

-柳澤健「2016年の週刊文春」(光文社)

-小森収編「短編ミステリの二百年 4」(創元推理文庫

 

 

2016年の週刊文春

短編ミステリの二百年4 (創元推理文庫)

 

 

 

 柳澤本は古書現世向井透史さんがツイッターで面白かったと言っていたので興味を持った。

 

 「短編ミステリの二百年」はシリーズで買っている。今回は最後に編者による300頁ほどの題名と同じ解説がついている。

 

 

 帰宅後、ここのところ毎日1章ずつ読んでいたこの本を読了。

 

-坪内祐三玉電松原物語」(新潮社)

 

 

玉電松原物語

 

 

 坪内さんの遺作となった未完の連載を本にしたもの。三軒茶屋と下高井戸の間を走る世田谷線玉電)の松原駅近くに住んでいた坪内さんにとって下高井戸は近くにある松原より大きな町として繰り返し登場してくる。下高井戸を最寄り駅のひとつとする大学に4年。同じ場所の大学院に2年。院生の2年から大学の近くにある職場に非常勤として2年勤めていた僕にとってここに出てくる下高井戸の店は懐かしいものばかり。レコード屋のオスカーや旭鮨、古本屋の豊川堂など。もちろん、僕の知る前の下高井戸の姿も描かれている。巻末に掲載されている坪内さんの赤堤小学校の後輩に当たる吉田篤弘氏の文章に雑誌『ノーサイド』の特集"黄金の読書"で坪内祐三という人物と出会い、そこで坪内さんが挙げている“文庫化を希望している五十冊”に心躍らせる姿が語られる。そこにはまるで自分の姿かと見まがうほどに同じ思いが書かれていて、ああこんな風に自分の中に坪内祐三という人が入ってきたんだなということを思い出した。

 

 

 ニュースでは東京都のコロナウィルス感染者が1300人を超えたと伝えている。本来なら今年の夏に一ヶ月ほどイギリス・アイルランドへ研修に行く予定だった。それはそうそうに中止となり、来年への延期が伝えられた。そして、この冬、来年の海外研修の中止が決定した。果たして再来年は行けるのだろうか。とりあえず、気長に待つことにしよう。その欠落を埋めるように先週は「水曜どうでしょう」の新作を繰り返し観ていた。2年前に「水曜どうでしょう」の4人がアイルランドのダブリンを目指してロンドンからレンタカーでダブリンに向かう旅をした記録である。まるで自分のために作られた番組のような気になって楽しめた。やっぱり、ロンドン・ダブリンに行きたいや。

 

 

 夜は、いつものすき焼き。そして、「水曜どうでしょう」の大泉洋司会の紅白歌合戦を流しながら過ごす。

 

 

 今年もこのような忘れられた間欠泉のような日記にお付き合いいただきありがとうございました。来年はコロナを乗り越える年になるといいな。そして乗り越えた後の再来年に向けて準備しよう。

 

 では、皆さまよいお年をお迎えください。

 

 

 

 

 

不在と実在。

 最近、鍋ばかり食べている。

 

 今年コロナによる緊急事態宣言下の在宅勤務期間にウォーターサーバーの契約をした。夏に向かう時期であり、毎月届く富士山の水は順調に消費された。ちょうど、2リットルの水を鍋で沸かして、そこにティーバッグを3つ入れて21分蓋をして作るアイスティーにはまっていたこともあり、水の需要と供給は友好な関係を結んでいた。

 

 しかし、夏が過ぎ、秋から冬になる頃には、毎月届く水と消費する水の量が比例しなくなり、気が付くと玄関前の廊下の左右に水の入った段ボールが煉瓦のごとく積まれる状況となってしまっていた。冬場に冷たい水を飲む習慣がない。90度弱のお湯もでるが、仕事から帰って大きめのマグカップに紅茶かコーヒーを一杯飲むのが精一杯だ。水は減らない。そこで考えたのが毎晩鍋を食べること。鍋は水をたくさん消費する食べ物だ。ネットで流行りの無水鍋などお呼びでない。

 

 という訳で、今週に入って毎晩鍋を食べている。水炊き、豚しゃぶ、ちゃんこ鍋などを買い込んできた液体や固形の鍋スープの素などを駆使しながら食べている。野菜もたくさんとれるし、体もあったまるしでいいことずくめだが、どこか無理矢理食べている感もあり、すこし釈然としない。

 

 

 そんな一週間も終わろうという土曜日。仕事はもともと半ドンであるが、夏場の休日出勤の振り替え休日の消費もできていないし、明日の日曜日も休日出勤が確定しているということもあり、振替休日にして退勤時間を待たずに職場を出ることにする。

 

 

 そうした理由は、埼玉にある知人のやっているパン屋が今日明日と創業6周年のイベントをやっているのと、毎年職場の同僚に頼まれて取り寄せているシュトーレンの代金の支払いをするのとに片道2時間弱をかけて行きたいと考えたからだ。

 

 電車に乗って本を読み始めたのだが昼食後の満腹感と車内の暖かさに意識もうろうとなり断念。ポッドキャストでラジオ「アフター6ジャンクション」の時代劇評論家春日太一氏の語る「忠臣蔵ひとり総選挙」を聴きながら舟をこぐ。

 

 店にたどり着いたが、イベントは盛況だったらしく、店にパンと名のつくものは数えるほどしか残っていなかった。その中から数品を選んで購入し、シュトーレンの代金とお祝い代わりのジャズのクリスマスアルバムを置いてくる。

 

 帰りの車内では、オンデマンドで「水曜どうでしょう」最新作「21年目のヨーロッパ21ヵ国完全制覇」をスマートフォンで視聴。今回はイギリスとアイルランドを旅している。今年予定されていたロンドンとダブリンを回る海外研修が中止となり、自動的に来年に延期となっていたのだが、最近になって親会社から来年の海外研修もすべて中止の連絡がきた。行くことのかなわなくなった寂しさをこの番組を見ることで癒している。

 

 

 乗換駅の神保町で下車。東京堂書店へ。

 

-『おすすめ文庫王国2021』(本の雑誌社

-坪内祐三「文庫本千秋楽」(本の雑誌社

-島田潤一郎「父と子の絆」(アルテスパブリッシング)

-高橋輝次「古本愛好家の読書日録」(論創社

 

 

おすすめ文庫王国2021

 

文庫本千秋楽

 

父と子の絆

 

古本愛好家の読書日録

 地元の書店では買えない本をまとめ買い。

 

 

 

 再び乗り込んだ車内では買ってきた『おすすめ文庫王国』を読む。この年末恒例のムックの顔と言えば坪内祐三「年刊文庫番」だが、氏が亡くなった今それを読むことはできない。その代わりというのかurbansea「坪内祐三と文庫」が載っている。坪内祐三によるナンシー関評を通して坪内氏のライフワークであった『週刊文春』連載の「文庫本を狙え!」を語る文章。好きな二人だけに興味深く読んだ。語る対象への愛情のある文章だと思う。

 

 その「文庫本を狙え!」の連載をまとめた最後本が「文庫本千秋楽」。ちょっとのつもりで読み始めたら止まらなくなった。本の最後には『おすすめ文庫王国』の「年刊文庫番」がまとめて収録されている。

 

 不在を埋めようとするものと実在を記録したものとを一緒に買ったことになった。

 

 駅ビルで今夜の鍋の具材を買って帰る。

富士山の水とキリマンジャロの雪

 

 

 昨日は午前中職場へ出勤、午後は自宅に戻りオンライン会議に2つ参加する。職場にいたのにわざわざ会議のために帰宅したのは、全職員参加のオンライン会議に職場で参加する場合広い会議室に集められ、それぞれ離れて座り、タブレットの画面を見ながら会議するというから、そんな形容矛盾のような空間に身を置いているのが耐えられなかったため。案の定、司会者のタブレットと参加者のタブレットが近すぎてしばしばハウリングを起こす様子を職場から徒歩30分離れた自宅のPCで聴いていた。

 

 

 今日は、自宅勤務。昼に頼んでいたウォーターサーバーを業者が持ってくる。自宅の台所の水道は浄水器を着けづらいタイプのもので、設置は諦めてクリンスイのポッド式でコーヒーや紅茶を入れるたびにポッドに水を貯めていた。自宅にいる時間が長くなり、日に何度もコーヒー・紅茶を入れることになり、その度にポッドに浄水した水を貯めるのにも嫌気がさし、温水・冷水が出て、何かのトラブルで水道が止まったとしても何十リットル分もの飲料水が詰替のボトルとしてキープできるウォーターサーバー購入を決意した。購入と言ってもサーバー代はかからず、料金は毎月決まって届けられる水代だけ。しかし、月何十リットルもの水代はそれなりの金額だし、ウォーターサーバーの電気代も安くはない。もっと安い業者もあるようだが、富士山の雪解け水(?)が何十年もかかって湧き出した天然水であることと自分の好きなラジオ番組のスポンサー企業であることを考えれば自分の選択に後悔はない。月々の水代と電気代を考え、これまで雨後の筍のように増殖していた有料動画配信サービスやBSチャンネルなどを見直して数社解約し、月々の支出がほぼ変わらないように努力した。

 

 

 午後のオンライン会議を終えて、本日の業務終了。また、散歩に出る。片道40分かけてまた隣町まで行く。今日の目的は隣駅近くにあるコーヒー豆の焙煎屋である。前回は定休日であったため寄ることができなかった。本日は営業中であることはHPで確認済み。他の焙煎屋での経験を踏まえ、焙煎の間(通常30分くらい)はこれも先日行った本屋で本を物色していればいいと考えていた。今日は先日より4度くらい気温が高く、目的地の焙煎屋にたどり着いたときには体はじっとりと汗にまみれていた。このステイホーム状態になってから近場のコーヒー豆の焙煎屋をまわり、タンザニアキリマンジャロ)を購入している。同じ種類の豆を違う店で買うことで、それぞれの店の焙煎の具合や扱っている豆の良し悪しを楽しもうというわけ。タンザニアを選ぶのは、自分の学生時代にあった街の喫茶店ではブレンド以外のコーヒーはブルーマウンテンとキリマンジャロモカの三種類くらいしかなく、最高級のブルマン、ほどよい酸味のあるキリマン、マイルドなモカの中で一番好きだったのがキリマンジャロだったから。まあ、それ以外の豆の種類をよく知らないというのもあるけど。

 

 

 熊の種類を店名に冠した店のドアを開けると客は誰もいない。店に並んだ生豆の箱の中に「キリマンジャロタンザニアAA)」という札を見つけ、ブレンドとともにそれぞれ200グラムを注文したところ、「これから焙煎しますが、出来上がりは1時間半後になります」という。「このところ在宅の方が多くなり、予約が沢山入っていて、すぐには焙煎に入れない」とのこと。さすがにこの汗をかいた状態でしかも三密を避けるご時世で本屋に1時間半もいるわけにはいかない。すでに40分ほど歩き、この後同じ時間をかけて戻らなければいけないのに、あと90分も彷徨い歩く気力もない。「すいませんが、ここまで徒歩で来ているので、一度戻ってまたくるわけにもいかないので、今日はやめておきます」と店主にとってはよくわからないだろう理由を口にして、店を出る。新たなキリマンジャロを手に入れることはできなかった。キリマンジャロは雪のように我が手から消えてしまった。

 

 

 気を取り直して本屋へ。前回は1階の単行本と雑誌のフロアだけしか見ていなかったので今日は2階の文庫・新書フロアへ。ほしかった文庫をがっつり手に入れる。

 

-「飯田龍太全句集」(角川ソフィア文庫

-ハーバート・パッシン「米陸軍日本語学校」(ちくま学芸文庫

-岡田育「ハジの多い人生」(文春文庫)

-外山滋比古「『読み』整理学」(ちくま文庫

 

 

飯田龍太全句集 (角川ソフィア文庫)

米陸軍日本語学校 (ちくま学芸文庫)

ハジの多い人生 (文春文庫)

「読み」の整理学 (ちくま文庫)

 

 

 

 飯田龍太は個人的な岩波新書ベスト本のひとつ小林恭二「俳句という遊び」で出会った現代を代表する俳人。その全句集となれば見逃せない。

 

 「米陸軍日本語学校」は第二次大戦中にアメリカが戦後の占領までを見据えて作ったアメリカ人に日本語を教える学校の実態についての回想本。

 

 「ハジの多い人生」はTBSラジオの「アフター6ジャンクション」で著者へのインタビューを聴いて興味を持った。元中央公論社編集者でアメリカ在住の文筆家。ここでの「ハジ」は「恥」ではなく「端」の方の「ハジ」らしい。

 

 外山本は先日読んだ犬塚美輪「生きる力を身につける14歳からの読解力教室」(笠間書院)のあとがきで著者がオススメ本としてあげていたのを覚えていた。しばらく品切れだったが昨年増刷されたらしい。これも「思考の整理学」がベストセラーになった余波だろう。

 

14歳からの読解力教室: 生きる力を身につける

 

 

 

 豆の代わりに本を買ってまた40分かけて帰る。暑いので帰ったらキリマンジャロの代わりに富士山の水を飲むのだ。

 

 

 

 

 

 

 

散歩で万歩。

 

 今月に入って原則自宅勤務となった。とはいえ、出勤絶対禁止というほどではなく、事前に上司に報告すれば職場へ行くことは許されているため週に2回は出勤している。

 

 幸い歩いて職場へ行くことのできる場所に住んでいるので、30分ほどかけて徒歩で職場へ行っている。もうひと月くらい公共交通機関(電車・バス)には乗っていない。出勤する日以外は当然自宅にいる。自宅での勤務時間は明確には定められていないため、こうなる前に時差出勤時間として示されていた時間は自宅のPCに向かって仕事をしている。通常職場に行けば少なくとも一日12000歩程度は歩いているのだが、自宅にいるだけでは三桁にとどまる歩数しか動かなくなる。これではいけないと午後の自宅勤務の終了時間を過ぎるとジャージに着替え、買い物がてらの散歩に出ることにしている。

 

 

 4月初旬に地元の駅ビルが休業となった。地元唯一の新刊書店はこのビルの中にあったため我が町から本屋が消えた(古書店は1軒あるがこちらも4月中旬に店内販売を休止した)。本屋に行くという日課のような楽しみがなくなり、本の購入は通販に頼るしかなくなった。古本は好きな古書店が「日本の古本屋」に出品しているのでそこから買う。もちろん古書店が直接通販を行っている場合にはそれを利用している。また、新刊はe-honが期間限定の送料無料で配送してくれるサービスを開始したのでこちらを主に利用している。e-honの良いところは特定の書店を指定すると通販の売り上げの一部がその書店の利益となるシステムになっている点だ。できるなら地元で日々愛用していた駅ビルの本屋を選択したいのだが、このサービスには加盟してないらしく選択肢に店名がなかった。そのため近場の本屋の中から前に行って好感を抱いた妙蓮寺にある石堂書店を選んで利用している。

 

 今日もそのe-honから本が届いた。届いたのは以下の本と雑誌である。

 

-『ユリイカ』五月臨時増刊号“総特集 坪内祐三1958-2020”

-コーリー・スタンパー「ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険」(左右社)

-牧村健一郎漱石と鉄道」(朝日選書)

-又吉直樹「東京百景」(角川文庫)

 

ユリイカ 2020年5月臨時増刊号 総特集◎坪内祐三 1958-2020

 

ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険

 

 

漱石と鉄道 (朝日選書)

 

 

東京百景 (角川文庫)

 

 『ユリイカ』の坪内祐三追悼は欲しかったのだがやっと届いた。『本の雑誌』の追悼号も厚かったが『ユリイカ』はもっと厚い。定価2700円。この厚さと値段に度肝を抜かれた人が多かったのもうなずける。目次にずらっと並んだ執筆者を見ているだけで坪内祐三という人がいかに多くの影響を多くの人に与えた存在であったかがわかる。小沢信男山田稔西村賢太武藤康史・平山周吉・橋本倫史・岡崎武志と瞬く間に読み進めてしまう。息をつくために一旦雑誌を閉じる。他にも小西康陽浅羽通明林哲夫・中尾務・涸沢純平・中沢新一高山宏など興味深い名前があとからあとから出てくる。慌てずゆっくり読むことにしよう。

 

 

 今日は休日のため勤務時間にしばられることはない。午後3時前にジャージに着替えて散歩に出る。届いた本を眺めていたらやっぱり本屋に行きたくなった。そのため、隣駅にある新刊書店まで歩いていくことにする。Google マップの経路では片道徒歩40分の行程である。隣駅にある商店街までは先週一度歩いて行っているのでルートは分かっている。横浜はアップダウンの多い市である。僕の住んでいるところもご多分にもれず、歩き始めれば必ず下りか上りがやってくる。隣駅に行くには小高い山をひとつ越えていく感じになる。20度以上の気温がすぐに体に汗をかかせる。ひと山越えて川を渡り、隣町へ。人通りの多い商店街は避けて裏通りを歩く。朝食用の食パンを今朝食べ切ったので、まずは町外れにあるパン屋を検索で見つけてそこで食パンを購入。自宅勤務に伴う散歩を始めた時、散歩の目的地に困った。そこで、とりあえず自宅で飲むコーヒーの豆を購入できる自家焙煎をしている店及び朝食用の食パンが買える個人営業のパン屋を検索し、歩いて行ける範囲の店をしらみ潰しに行ってみることにした。そのため今日のパン屋も初めての店。角形の食パンがよかったのだがすでに売り切れており、山形の食パンになった。

 

 手にパンを提げながら、駅前にある新刊書店へ。横浜のこの地区にいくつかの支店を持つ中規模書店の本店である。7年ほど前までこの店の支店が地元の町にもあった。夜遅くまでやっていて残業帰りに寄ることのできるありがたい店だったのでなくなったのは残念だった。休日ということもあり店内は人が多い、書店滞在時間は長い方の人間であるが、現状ではそうも言っていられない。さっと店内を流し、2冊を選んでレジへ。

 

-村上春樹「猫を棄てる」(文藝春秋

-片岡義男「コミックス作家川村リリカ」(中央公論新社

 

 

猫を棄てる 父親について語るとき

 

 

コミックス作家 川村リリカ (単行本)

 

 

 「猫を棄てる」は『文藝春秋』掲載時に読んでいるが本で持っていたかった。それに、今日部屋で4月26日にTOKYOFMで放送された「村上Radio」をポッドキャストで聴いていたこともあり、すぐに目に入ってきた1冊だった。

 

 片岡義男の新刊は迷わず買うことにしている。もう80歳を越えているのに大家や大御所といった感じにならず、不思議な現役感をいつまでも感じさせてくれる稀有な作家だと思う。

 

 

 同じ道を帰るのはつまらないので、線路沿いを歩き、地元の駅前に出て、そこから自宅のある坂の上まで汗をかきかき登っていく。自宅について、ジャージを脱ぎ、風呂に入って汗とその他の目に見えないものを流す。湯船に浸かりながらもう一度「村上Radio」を聴き直す。約2時間、歩数約1万歩の散歩だった。

 

 

アンケートという駅弁。

 昨日は、職場の同僚たちとの食事会が夕方から予定されていた。仕事を終えるとまだ2時間ほど時間がある。時間潰しに本屋を周遊することにする。

 

地元の古本屋を覗いてから、駅ビルの新刊書店へ。

 

-『群像』3月号

 

群像 2020年 03 月号 [雑誌]

 

 

お目当ては橋本倫史「水了軒の滊車辨」。“追悼 坪内祐三”としてこの一編だけが掲載されていることといい、他のページとは違う上のスペースをあけたレイアウトでゆったりと組まれていることといい、なにか特別な文章という感じを与えてくれる。横浜駅に向かう列車の中で読んだ。橋本さんと坪内さんの銀座での偶然の出会い。『坪内祐三は二〇〇六年の時点で絶望していた』という街への言葉。その言葉の意味を確認する意味でも「復活」した水了軒の駅弁を一度食べてみようと思う。失われてしまったものは残っているものを手掛かりとして想像するしかないのだから。

 

 

まだ時間があるので白楽駅で途中下車。久し振りにツイードブックスを覗く。先日の月曜日に白楽に来たのだが、この店は月曜定休。代わりに鉄塔書院(この店が健在なのはうれしい)で、宮田恭子「ジョイス研究」(小沢書店)と北村富治「『ユリシーズ』案内 丸谷才一・誤訳の研究」(宝島社)を購入した。

ツイードブックスでもこの夏ダブリンに行く準備のためのジョイス本を入手。

 

-柳瀬尚紀「フィネガン辛航紀」(河出書房新社

-北村富治「『ユリシーズ』詳解」(洋泉社

 

 

フィネガン辛航紀―『フィネガンズ・ウェイク』を読むための本

 

『ユリシーズ』註解

 

 久し振りのツイードブックスは前と変わらずいい古本屋だった。鉄塔書院といい、ここといい白楽にはいい店が多いといつも思う。

 

 

 それから横浜駅へ行き、同僚たちとおいしい熟成肉を食べて帰宅。

 

 

 

 今日は録画しておいたドラマ「古滝兄弟と四苦八苦」(野木亜紀子脚本・山下敦弘監督)を見ながら遅い朝食をとってから神保町へ。『みすず』の読書アンケート号を買いに行く。

 

 車中では若竹七海「静かな炎天」(文春文庫)を読む。今年1月から始まったNHKのドラマ「ハムラアキラ」の第1話を見たら主演のシシド・カフカの存在感が原作の葉村晶のイメージをいい感じに裏切っていて面白かった。しかし、まだ読んでいない原作をベースにしたドラマを先に見てしまうことに抵抗があり、第2話「静かな炎天」は録画しておいて観る前に原作を読もうと考えてカバンに入れてきた。

 

 

静かな炎天 (文春文庫)

 

 神保町へ到着。東京堂書店へ。

 

-『みすず』読書アンケート号

-山田稔山田稔自選集 Ⅱ」(編集工房ノア

-マティアス・ボーストレム「〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ 偶像を作り出した人々の物語」(作品社)

 

 

〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ――偶像を作り出した人々の物語

 

 

 

 年の初めに『みすず』のこの号を読むのが毎年の恒例。今年も無事入手できた。

山田稔自選集」は全3巻のうちの第2巻がでた。すでに持っている第1巻は、毎晩寝床に入ってから収録されている散文を一編ずつ読むのを楽しみにしている。読み終わったらこちらにバトンタッチするのだ。

 「〈ホームズ〉から〈シャーロック〉へ」はコナン・ドイルが世に出したホームズの物語がドイルの死後どのように享受され、どのように二次創作されていったかについての本。こちらはこの夏のロンドン行きのための資料。

 

 

 続いて三省堂書店へ。

 

-北川扶生子「漱石文体見本帳」(勉誠出版

-シルヴィア・ビーチ「シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店」(河出書房新社

 

 

漱石文体見本帳

 

シェイクスピア・アンド・カンパニイ書店 (KAWADEルネサンス)

 

 前者は、ロンドン関係で漱石の倫敦留学について興味があるので最近また漱石本を集めだしているため。

 後者は、パリにあった書店の店主の回顧録ジョイスの『ユリシーズ』を出版したのはこの店だった。古い版で持っていたと思うが新版が自由価格本として半額以下で出ていたので購入。

 

 

 カバンがずしりと重くなったところで神田伯剌西爾へ。ブレンドとシフォンケーキをたのんでから『みすず』を開く。細かい活字を追いながら濃いめのブレンドを飲むひと時は一年に一度のものだけに喜びもひとしお。目次に“坪内祐三”の名前を見つけてそのページに飛ぶ。生前にすでにアンケートは送られていたのだなと思う。坪内さんは文春新書を1冊だけ挙げている。文学関係ではない書名なのだが、その理由を読んでなるほど坪内さんの好奇心の中心を射抜く内容なのだと納得する。

 

 

 帰りの車内も前かがみになって『みすず』の細かい活字を追う。これが同じサイズの文字で書かれた電子機器のマニュアルだったらとても読んでいられない。中身が魅力的なものであれば、目は活字を追うことをやめはしないのだ。

書を持ってさらにいくつかの本を買う。

 

 大晦日である。だからといって特に何があるわけでも何をするわけでもない。

 

 

 厚切りトースト2枚とコールスローとポテトサラダの朝食をとり、昼前に家を出る。今日は午後1時過ぎからテアトル新宿で映画「この世界のさらにいくつもの片隅に」を観に行く予定なのだ。

 

 

 車内の供は例年のお約束のこれ。

 

 

-中野翠「だから、何。」(毎日新聞出版

 

だから、何。

 

 『サンデー毎日』の連載コラムの一年分をまとめたもの。これも今年の出来事だったんだという確認作業をさせてくれる貴重な一冊。1月にはNHK大河ドラマ「いだてん」が始まっている。あれからもう1年か、「いだてん」ロスが続くな。

 

 

 

 余裕を持って出てきたので、神保町経由のルートにして神保町で下車。東京堂書店で本を2冊。

 

 

-『フリースタイル』44号“THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!

 

-安田謙一・辻井タカヒロ「書をステディー町へレディゴー」(誠光社)

 

 

フリースタイル44 特集 THE BEST MANGA 2020 このマンガを読め!

書をステディ町へレディゴー

 

 

 

 前者はこれも年末恒例のマンガ特集。この特集で新しい作品と出会うことも多い。

 

 後者は京都の書店である誠光社が出版した本。「あとがき」を夏葉社の島田潤一郎さんが書いているのに惹かれた。

 

 

 

 神保町から新宿三丁目へ。テアトル新宿へ。3年前にここで「この世界の片隅に」を観ている。その年の大晦日二子玉川でもう一度観直しをしている。そして、今年の大晦日はその前作に30分程度の追加シーンを入れた長尺版「この世界のさらにいくつもの片隅に」を観ようというのである。

 

 

 今朝から水分補給を最小限にしてこの映画に合わせて準備をしてきた。元々子どもの頃からの頻尿で、小学生の時に心配した親に医者に連れて行かれたこともある。そのため3時間近い映画を途中退席なしに見通すためにはそれなりの準備が必要なのだ。結果は無事エンドロールの最後まで退席なしに観通せた。その分、他の水分がずいぶん活発だったが。映画の大半はもう何度も観ている内容であるが、飽きるなどということはなく、むしろ今回追加された“白木リン”が入ることによってこれまでのシーンの意味合いが変化し、新鮮な感動があった。誤解を生じる言い方かもしれないが“すずさん”がより生々しく、艶かしく見えた。だからこそ、その日常が愛おしく、それを根こそぎなぎ倒していくものが腹立たしい。思い切り水分を放出して劇場を後にする。

 

 

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』映画前売券(一般券)(ムビチケEメール送付タイプ)

 

 

 帰宅して、大晦日恒例のすき焼きで夕食。今年は白菜の代わりに玉ねぎを使う。奮発した牛肉も美味しい。これで今年も無事に年を越せそうだ。

 

 

 今日買ってきた「書をステディー町へレディゴー」から「あとがき」(島田潤一郎)を読む。島田さんの文章には引用したくなるような魅惑的なフレーズが多い。

 

 

《なにかを伝えたいのだとすれば、その情熱と同じくらいユーモアを。迂路を。転調を。レコードが一本の溝であるのと同じように、文章もまた一本の線だ。それは情報ではなく、コピー&ペーストできる断片でもなく、音楽と同じような何かだ。》

 

 

 

 今年もほとんど更新できないこのようなブログにお付き合いいただきありがとうございました。来年もマイペースで続けていきます。

 

 では、よいお年を。

 

 

 

飛行機に乗って。

 今年も暮れようとしている。

 

 仕事は28日で終わった。昨日は朝から窓掃除や水回りの大掃除をした。

 

 今日の午前中は先延ばしにしていた年賀状書きをようやくやり遂げた。大した量ではないのだが、毎年この押し詰まった時期にならないと書き上げることができない。そういう性格なのだ。

 

 

 昨日、掃除をしながらTOKYO FM山下達郎のサンデーソングブック」を聴いていたら「明日30日は大瀧詠一さんの7回忌」ということを言っていて「ああ、そうか」と思った。なので、今日はシャッフル再生でiTunesに入っている「大瀧詠一」の曲をずうっと流していた。

 

 

 午後、書き上げた年賀状を出しに駅前まで行く。街はあっという間にクリスマスから新年準備の装いに変わっていた。

 本屋を覗き、“ジャズとアメリカ”という特集をしている英語学習雑誌を購入。来年の夏に一ヶ月ほどイギリスに海外研修に行くことになったため、英語の勉強の真似事くらいはやっておこうかと思って買ってみた。彼の地には20年ほど前に同じ名目の研修で行っている。本来この研修は各自1回だけのものなのだか、来年の希望者が誰もおらず、その上親会社からは誰も行かないのは罷りならんとのお達しがあったらしく、どうしても誰かを行かせなければならない立場に立たされた上司が、困った末に僕に行ってくれないかと打診してきた。「いや、もう20年前に行っていますから」と断ると「親会社の許可は得てある」との返事。どうやら外堀は埋まっているらしい。仕事とはいえ、自分の好きなテーマでロンドンに行けるのなら悪い話ではない。人助けにもなるならとOKをすると、「ではすぐに研修計画書を出してくれ」と言う。「締切は?」と問うと、「もう過ぎている」との答えがあったのが金曜日。その週の週末を費やして墨俣の一夜城のような計画書を作り、月曜日には来年の夏の予定が決まってしまった。

 せっかく行くのだから20年前に行けなかった所にも行きたい。前回はロンドンの他にパリも研修地に入れたのだが、今回はパリの代わりにアイルランドのダブリンを入れた。あの週末は研修地にどうすればダブリンを入れられるかを考える時間だったとも言える。これで念願のダブリンに行くことができそうだ。

 

 

 そんな状態なので、最近は研修の資料になりそうな本を読んでいる。先日読んだのはこの本。

 

-多胡吉郎「漱石とホームズのロンドン」(現代書館

 

 

漱石とホームズのロンドン: 文豪と名探偵 百年の物語

 

 

 1900年から2年間、文部省の官費留学生としてロンドンに滞在した夏目漱石と同時期のロンドンを舞台に活躍したコナン・ドイル描くところの名探偵シャーロック・ホームズを対比させながら二人が直面していた当時のロンドン(イギリス)の様々な問題を語っている。1887年から1917年に渡って書き継がれてきたホームズ物の中で漱石帰国の翌年から連載が始まった「シャーロック・ホームズの帰還」(生還・復活などとも訳される)に焦点を絞って比較することで漱石が暮らしたロンドンとの関わりがより明確になっていると思う。面白く読んだ。

 

 

 今読んでいるのはこちら。

 

-中尾真理「ジョイスを訪ねて ダブリン・ロンドン英文学紀行」(彩流社

 

 

ジョイスを訪ねて: ダブリン・ロンドン英文学紀行

 

 ジェイン・オースティンの翻訳もしている大学教授が2007年に行ったダブリンとロンドンを巡る旅行記。ダブリンのトリニティカレッジへ行ってみたくなる。そして、「ユリシーズ」をちゃんと読んでみたくなる。

 

 

 

 本屋を出て、駅ビルのストアで食料品の買い物。元旦はコンビニもやっていない状況になりそうなので、数日分をストック。明日のすき焼き用の肉も奮発しておく。

 

 

 

 帰宅してやり残してることなどをあれこれしているうちに日が暮れる。

 

 家にあった玉ねぎと卵と買ってきたトンカツでカツ煮を作って夕食にする。

 

 

 

 最近、買った雑誌で面白いと思ったのが次の2冊。

 

-『建築知識』2020年1月号

 

建築知識2020年1月号

 

 初めて買った雑誌。なんで買ったかというと特集が“世界一美しい本屋の作り方”だったから。建築雑誌だから本屋を建築方面から特集しているのかと思ったらそれだけではなかった。本棚の種類や陳列の仕方、本の大きさや流通の仕組みなど簡単にではあるが本屋に関わる様々なポイントを押さえた特集になっていた。本屋好きは一度手に取ってみる価値はあると思う。建築雑誌らしく取材協力をしている書店(往来堂、誠光社、titleなど30店舗以上)の平面図が載っているのもうれしい。

 

 

-『ユリイカ』2020年1月号“特集 和田誠

 

 

ユリイカ 2020年1月号 特集=和田誠 ―1936-2019―

 

 まだ、一部しか読んでいないが、島田潤一郎「スタイルのよい人」がよかった。

夏葉社がスタートした時、無名の一人出版社がどうして装丁に和田誠の絵を使えるのだろうと不思議に思っていたが、その秘密がここに書かれていた。ツテもコネもない出版人が強い思いだけを頼りに装画を手に入れるまでの様子は読んでいてワクワクする。また、電話での和田誠と会った時の和田誠の振り幅の大きさに人間・和田誠が匂い立ってくるような気がする。「ぼくは『ユリシーズ』の装丁を日本一の装丁だと思い続けながら、二〇代を送った。」という島田さんの文章に共感を覚えた。

 

 僕の自宅にも、和田誠が装丁したジェイムズ・ジョイスユリシーズ」(集英社)全3巻がある。その集英社文庫版もあるが、文庫版の裏には和田誠が嫌ったバーコードがしっかりと印刷されてしまっている。単行本にはそれがないため、島田さんが書店で見かけた時に「なんてきれいな本だろう」と思ったその姿が損なわれることなく残っている。先ほど、本棚を置いてある寒い部屋からリビングに「ユリシーズ」を持ってきて眺めているが、シンプルでとてもセンスのいい、美しい本だと思う。和田誠という装丁家がいてくれたことの喜びを感じる。

 

 

ユリシーズ 全3巻・全巻セット (ユリシーズ)

 

 

 飛行機に乗って

 

 和田誠の装丁のようなアイルランドのダブリンに行こう

 

 

 そんなことを考えながら今年は暮れていきます。