飛行機に乗って。

 今年も暮れようとしている。

 

 仕事は28日で終わった。昨日は朝から窓掃除や水回りの大掃除をした。

 

 今日の午前中は先延ばしにしていた年賀状書きをようやくやり遂げた。大した量ではないのだが、毎年この押し詰まった時期にならないと書き上げることができない。そういう性格なのだ。

 

 

 昨日、掃除をしながらTOKYO FM山下達郎のサンデーソングブック」を聴いていたら「明日30日は大瀧詠一さんの7回忌」ということを言っていて「ああ、そうか」と思った。なので、今日はシャッフル再生でiTunesに入っている「大瀧詠一」の曲をずうっと流していた。

 

 

 午後、書き上げた年賀状を出しに駅前まで行く。街はあっという間にクリスマスから新年準備の装いに変わっていた。

 本屋を覗き、“ジャズとアメリカ”という特集をしている英語学習雑誌を購入。来年の夏に一ヶ月ほどイギリスに海外研修に行くことになったため、英語の勉強の真似事くらいはやっておこうかと思って買ってみた。彼の地には20年ほど前に同じ名目の研修で行っている。本来この研修は各自1回だけのものなのだか、来年の希望者が誰もおらず、その上親会社からは誰も行かないのは罷りならんとのお達しがあったらしく、どうしても誰かを行かせなければならない立場に立たされた上司が、困った末に僕に行ってくれないかと打診してきた。「いや、もう20年前に行っていますから」と断ると「親会社の許可は得てある」との返事。どうやら外堀は埋まっているらしい。仕事とはいえ、自分の好きなテーマでロンドンに行けるのなら悪い話ではない。人助けにもなるならとOKをすると、「ではすぐに研修計画書を出してくれ」と言う。「締切は?」と問うと、「もう過ぎている」との答えがあったのが金曜日。その週の週末を費やして墨俣の一夜城のような計画書を作り、月曜日には来年の夏の予定が決まってしまった。

 せっかく行くのだから20年前に行けなかった所にも行きたい。前回はロンドンの他にパリも研修地に入れたのだが、今回はパリの代わりにアイルランドのダブリンを入れた。あの週末は研修地にどうすればダブリンを入れられるかを考える時間だったとも言える。これで念願のダブリンに行くことができそうだ。

 

 

 そんな状態なので、最近は研修の資料になりそうな本を読んでいる。先日読んだのはこの本。

 

-多胡吉郎「漱石とホームズのロンドン」(現代書館

 

 

漱石とホームズのロンドン: 文豪と名探偵 百年の物語

 

 

 1900年から2年間、文部省の官費留学生としてロンドンに滞在した夏目漱石と同時期のロンドンを舞台に活躍したコナン・ドイル描くところの名探偵シャーロック・ホームズを対比させながら二人が直面していた当時のロンドン(イギリス)の様々な問題を語っている。1887年から1917年に渡って書き継がれてきたホームズ物の中で漱石帰国の翌年から連載が始まった「シャーロック・ホームズの帰還」(生還・復活などとも訳される)に焦点を絞って比較することで漱石が暮らしたロンドンとの関わりがより明確になっていると思う。面白く読んだ。

 

 

 今読んでいるのはこちら。

 

-中尾真理「ジョイスを訪ねて ダブリン・ロンドン英文学紀行」(彩流社

 

 

ジョイスを訪ねて: ダブリン・ロンドン英文学紀行

 

 ジェイン・オースティンの翻訳もしている大学教授が2007年に行ったダブリンとロンドンを巡る旅行記。ダブリンのトリニティカレッジへ行ってみたくなる。そして、「ユリシーズ」をちゃんと読んでみたくなる。

 

 

 

 本屋を出て、駅ビルのストアで食料品の買い物。元旦はコンビニもやっていない状況になりそうなので、数日分をストック。明日のすき焼き用の肉も奮発しておく。

 

 

 

 帰宅してやり残してることなどをあれこれしているうちに日が暮れる。

 

 家にあった玉ねぎと卵と買ってきたトンカツでカツ煮を作って夕食にする。

 

 

 

 最近、買った雑誌で面白いと思ったのが次の2冊。

 

-『建築知識』2020年1月号

 

建築知識2020年1月号

 

 初めて買った雑誌。なんで買ったかというと特集が“世界一美しい本屋の作り方”だったから。建築雑誌だから本屋を建築方面から特集しているのかと思ったらそれだけではなかった。本棚の種類や陳列の仕方、本の大きさや流通の仕組みなど簡単にではあるが本屋に関わる様々なポイントを押さえた特集になっていた。本屋好きは一度手に取ってみる価値はあると思う。建築雑誌らしく取材協力をしている書店(往来堂、誠光社、titleなど30店舗以上)の平面図が載っているのもうれしい。

 

 

-『ユリイカ』2020年1月号“特集 和田誠

 

 

ユリイカ 2020年1月号 特集=和田誠 ―1936-2019―

 

 まだ、一部しか読んでいないが、島田潤一郎「スタイルのよい人」がよかった。

夏葉社がスタートした時、無名の一人出版社がどうして装丁に和田誠の絵を使えるのだろうと不思議に思っていたが、その秘密がここに書かれていた。ツテもコネもない出版人が強い思いだけを頼りに装画を手に入れるまでの様子は読んでいてワクワクする。また、電話での和田誠と会った時の和田誠の振り幅の大きさに人間・和田誠が匂い立ってくるような気がする。「ぼくは『ユリシーズ』の装丁を日本一の装丁だと思い続けながら、二〇代を送った。」という島田さんの文章に共感を覚えた。

 

 僕の自宅にも、和田誠が装丁したジェイムズ・ジョイスユリシーズ」(集英社)全3巻がある。その集英社文庫版もあるが、文庫版の裏には和田誠が嫌ったバーコードがしっかりと印刷されてしまっている。単行本にはそれがないため、島田さんが書店で見かけた時に「なんてきれいな本だろう」と思ったその姿が損なわれることなく残っている。先ほど、本棚を置いてある寒い部屋からリビングに「ユリシーズ」を持ってきて眺めているが、シンプルでとてもセンスのいい、美しい本だと思う。和田誠という装丁家がいてくれたことの喜びを感じる。

 

 

ユリシーズ 全3巻・全巻セット (ユリシーズ)

 

 

 飛行機に乗って

 

 和田誠の装丁のようなアイルランドのダブリンに行こう

 

 

 そんなことを考えながら今年は暮れていきます。