再来年どうでしょう。

 

 この年末は例年になくのんびりしたものとなった。

 

 それは意図したものではなく、22日の月曜日に振り替え休日をとって健診センターに日帰り人間ドックに行った夜に38度近い発熱をしたことから起こったことだった。

 

 職場のルールは37.5度以上の発熱があった場合には平熱になってから4日間は自宅待機というもの。たまたまフルタイムの勤務は21日で終わっており、22日からは4時間のフレックス勤務となっていたので仕事にはあまり影響がないのが幸いだった。そのためなし崩し的に今年の勤務は自宅待機のうちに終わってしまった。

 

 熱は翌日から36度台になっていたが微熱は続いていた。24日くらいから咳が少し出るようになった。呼吸の度に少し息苦しい感じがして、肺の辺りに違和感を感じた。昨年も人間ドックを受けた夜に発熱し、それが収まった頃に10日ほどの海外出張があり、現地で微熱と咳が続き、帰国後肺炎という診断を受けた過去があるため、ちょっと心配になった。同時に食事中に味をあまり感じないような気がしてきた。これはコロナウィルス感染症の症状に該当するのではないかという不安が芽生えた。肺炎の過去も気になった。そのため25日に近くの医院に電話して受診した。熱は平熱に戻っていた。医師の見立ては現時点で肺炎になっていないし、風邪の症状ともとれるが、念のためPCR検査をしておきましょうというものだった。医院の外の駐車場の隅で通りに背を向けてなかなか出ない唾液を試験管に出し続けた。

 

 検査の結果は翌日26日の朝に来た。「陰性」だった。ほっとした。発熱してから結果がでるまではどこかで罹患を疑っていたので家でぼんやりしていてもどこか落ち着かなかった。もちろん、検査結果は絶対ではない。それでも気持ちはずいぶん違う。やっと、読書やとりためたHDの内容を楽しむ気持ちになった。

 

 

 22日に行った健診センターは神保町の近くにある。昼近くに健診が終わるとそのまま書店めぐりとなった。

 

 三省堂で1冊。東京堂で3冊。

 

-辻真先「たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説」(東京創元社

-『フリースタイル』46号“THE MANGA 2021 このマンガを読め!

-中野翠「いいかげん、馬鹿」(毎日新聞出版

-森みどり「路上のポルトレ 憶いだす人びと」(羽鳥書店

 

たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説

フリースタイル46 THE BEST MANGA 2021 このマンガを読め!

いいかげん、馬鹿

路上のポルトレ

 

 

 「たかが殺人じゃないか」は、中学生の時にデビュー作「仮題・中学殺人事件」を読んだ作家の新作を令和に読めることを喜ぶ。アナグラムというものを中学生の自分に教えてくれた作家。牧薩次という名前も忘れられない。

 

 『フリースタイル』は恒例のマンガ特集。ベスト10の中では田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社)と和山やま「カラオケ行こ!」(KADOKAWA)を今年楽しく読んだ。

 

 中野本はこれも恒例の『サンデー毎日』連載の単行本。地元の本屋では去年と一昨年の本は棚にあるが、なぜか今年のものはいつまでも棚に並ばないのでこちらで購入。

 

 「路上のポルトレ」は、森まゆみポルトレ集・羽鳥書店という組み合わせに手が出た。

 

 

 本を買ってから、久しぶりの丸香で、いつもの肉うどんと野菜天。胃カメラのため前夜の21時以降ほとんど飲食をしていない体に、うどんの出汁が染みる。満足して店を出る。この時にはこのあと発熱するとは夢にも思わなかった。

 

 

 今週は、28日に職場に顔出し、休み中にする仕事の資料を持って帰ってきた。29日はケルヒャーのスチーム洗浄機を使って、窓・ドア・ベランダ・浴槽・トイレ・台所・フローリングなどを掃除。残りは30日の午前中に済ます。午後から駅ビルに買い物に行く。もちろん本屋にも。

 

-野木亜紀子「MIU404シナリオブック」(河出書房新社

-メアリ・ノリス「カンマの女王」(柏書房

-『早稲田文学』2020年冬号(筑摩書房

 

 

MIU404シナリオブック

カンマの女王 「ニューヨーカー」校正係のここだけの話

早稲田文学 2020年冬号 (単行本)

 

 

 

 この年末にやっと撮りだめておいたTBSドラマ「MIU404」を一挙に観た。星野源綾野剛のバディもの。「アンナチュラル」好きにはうれしいカメオ出演があったり、1話完結でありながら、前の話が後の話に繋がっていく野木脚本得意の展開などを堪能。悪役の菅田将暉の終わらせ方は賛否の分かれるところだろうな。そんなわけでシナリオブックを買っておく。

 

 「カンマの女王」は雑誌『ニューヨーカー』の校正係だった女性の回想録。本の帯に"牟田郁子(校正者)"・“阿部公彦英米文学者)”の2人の名前を発見する。これは買いでしょう。

 

 『早稲田文学』の特集は"価値の由来、表現を支える"。目次に紅野謙介・山岸郁子という名前を見つけたので購入決定。

 

 

 

  今年最後の朝を迎える。

 

 昨晩あわてて書き終えた年賀状を郵便ポストに出しに行く。マンションの廊下から雲ひとつない青空と白い富士山が見える。悪くない大晦日だ。帰ってきてから部屋のドアに正月の飾りをつける。

 

 遅い朝食は残っていたフラワー小麦粉を使ってホットケーキ。久し振りにやったら手順を忘れていて、最初に卵と砂糖をホイップするのを忘れてすべていっぺんに粉に入れてかき混ぜてしまう。ベーキングパウダーをいつも通り入れているのだが、普段よりぺたんとしたホットケーキになった。

 

 昼食後、今年最後の買い物に出る。やはり本屋に行く。

 

-柳澤健「2016年の週刊文春」(光文社)

-小森収編「短編ミステリの二百年 4」(創元推理文庫

 

 

2016年の週刊文春

短編ミステリの二百年4 (創元推理文庫)

 

 

 

 柳澤本は古書現世向井透史さんがツイッターで面白かったと言っていたので興味を持った。

 

 「短編ミステリの二百年」はシリーズで買っている。今回は最後に編者による300頁ほどの題名と同じ解説がついている。

 

 

 帰宅後、ここのところ毎日1章ずつ読んでいたこの本を読了。

 

-坪内祐三玉電松原物語」(新潮社)

 

 

玉電松原物語

 

 

 坪内さんの遺作となった未完の連載を本にしたもの。三軒茶屋と下高井戸の間を走る世田谷線玉電)の松原駅近くに住んでいた坪内さんにとって下高井戸は近くにある松原より大きな町として繰り返し登場してくる。下高井戸を最寄り駅のひとつとする大学に4年。同じ場所の大学院に2年。院生の2年から大学の近くにある職場に非常勤として2年勤めていた僕にとってここに出てくる下高井戸の店は懐かしいものばかり。レコード屋のオスカーや旭鮨、古本屋の豊川堂など。もちろん、僕の知る前の下高井戸の姿も描かれている。巻末に掲載されている坪内さんの赤堤小学校の後輩に当たる吉田篤弘氏の文章に雑誌『ノーサイド』の特集"黄金の読書"で坪内祐三という人物と出会い、そこで坪内さんが挙げている“文庫化を希望している五十冊”に心躍らせる姿が語られる。そこにはまるで自分の姿かと見まがうほどに同じ思いが書かれていて、ああこんな風に自分の中に坪内祐三という人が入ってきたんだなということを思い出した。

 

 

 ニュースでは東京都のコロナウィルス感染者が1300人を超えたと伝えている。本来なら今年の夏に一ヶ月ほどイギリス・アイルランドへ研修に行く予定だった。それはそうそうに中止となり、来年への延期が伝えられた。そして、この冬、来年の海外研修の中止が決定した。果たして再来年は行けるのだろうか。とりあえず、気長に待つことにしよう。その欠落を埋めるように先週は「水曜どうでしょう」の新作を繰り返し観ていた。2年前に「水曜どうでしょう」の4人がアイルランドのダブリンを目指してロンドンからレンタカーでダブリンに向かう旅をした記録である。まるで自分のために作られた番組のような気になって楽しめた。やっぱり、ロンドン・ダブリンに行きたいや。

 

 

 夜は、いつものすき焼き。そして、「水曜どうでしょう」の大泉洋司会の紅白歌合戦を流しながら過ごす。

 

 

 今年もこのような忘れられた間欠泉のような日記にお付き合いいただきありがとうございました。来年はコロナを乗り越える年になるといいな。そして乗り越えた後の再来年に向けて準備しよう。

 

 では、皆さまよいお年をお迎えください。