富士山の水とキリマンジャロの雪

 

 

 昨日は午前中職場へ出勤、午後は自宅に戻りオンライン会議に2つ参加する。職場にいたのにわざわざ会議のために帰宅したのは、全職員参加のオンライン会議に職場で参加する場合広い会議室に集められ、それぞれ離れて座り、タブレットの画面を見ながら会議するというから、そんな形容矛盾のような空間に身を置いているのが耐えられなかったため。案の定、司会者のタブレットと参加者のタブレットが近すぎてしばしばハウリングを起こす様子を職場から徒歩30分離れた自宅のPCで聴いていた。

 

 

 今日は、自宅勤務。昼に頼んでいたウォーターサーバーを業者が持ってくる。自宅の台所の水道は浄水器を着けづらいタイプのもので、設置は諦めてクリンスイのポッド式でコーヒーや紅茶を入れるたびにポッドに水を貯めていた。自宅にいる時間が長くなり、日に何度もコーヒー・紅茶を入れることになり、その度にポッドに浄水した水を貯めるのにも嫌気がさし、温水・冷水が出て、何かのトラブルで水道が止まったとしても何十リットル分もの飲料水が詰替のボトルとしてキープできるウォーターサーバー購入を決意した。購入と言ってもサーバー代はかからず、料金は毎月決まって届けられる水代だけ。しかし、月何十リットルもの水代はそれなりの金額だし、ウォーターサーバーの電気代も安くはない。もっと安い業者もあるようだが、富士山の雪解け水(?)が何十年もかかって湧き出した天然水であることと自分の好きなラジオ番組のスポンサー企業であることを考えれば自分の選択に後悔はない。月々の水代と電気代を考え、これまで雨後の筍のように増殖していた有料動画配信サービスやBSチャンネルなどを見直して数社解約し、月々の支出がほぼ変わらないように努力した。

 

 

 午後のオンライン会議を終えて、本日の業務終了。また、散歩に出る。片道40分かけてまた隣町まで行く。今日の目的は隣駅近くにあるコーヒー豆の焙煎屋である。前回は定休日であったため寄ることができなかった。本日は営業中であることはHPで確認済み。他の焙煎屋での経験を踏まえ、焙煎の間(通常30分くらい)はこれも先日行った本屋で本を物色していればいいと考えていた。今日は先日より4度くらい気温が高く、目的地の焙煎屋にたどり着いたときには体はじっとりと汗にまみれていた。このステイホーム状態になってから近場のコーヒー豆の焙煎屋をまわり、タンザニアキリマンジャロ)を購入している。同じ種類の豆を違う店で買うことで、それぞれの店の焙煎の具合や扱っている豆の良し悪しを楽しもうというわけ。タンザニアを選ぶのは、自分の学生時代にあった街の喫茶店ではブレンド以外のコーヒーはブルーマウンテンとキリマンジャロモカの三種類くらいしかなく、最高級のブルマン、ほどよい酸味のあるキリマン、マイルドなモカの中で一番好きだったのがキリマンジャロだったから。まあ、それ以外の豆の種類をよく知らないというのもあるけど。

 

 

 熊の種類を店名に冠した店のドアを開けると客は誰もいない。店に並んだ生豆の箱の中に「キリマンジャロタンザニアAA)」という札を見つけ、ブレンドとともにそれぞれ200グラムを注文したところ、「これから焙煎しますが、出来上がりは1時間半後になります」という。「このところ在宅の方が多くなり、予約が沢山入っていて、すぐには焙煎に入れない」とのこと。さすがにこの汗をかいた状態でしかも三密を避けるご時世で本屋に1時間半もいるわけにはいかない。すでに40分ほど歩き、この後同じ時間をかけて戻らなければいけないのに、あと90分も彷徨い歩く気力もない。「すいませんが、ここまで徒歩で来ているので、一度戻ってまたくるわけにもいかないので、今日はやめておきます」と店主にとってはよくわからないだろう理由を口にして、店を出る。新たなキリマンジャロを手に入れることはできなかった。キリマンジャロは雪のように我が手から消えてしまった。

 

 

 気を取り直して本屋へ。前回は1階の単行本と雑誌のフロアだけしか見ていなかったので今日は2階の文庫・新書フロアへ。ほしかった文庫をがっつり手に入れる。

 

-「飯田龍太全句集」(角川ソフィア文庫

-ハーバート・パッシン「米陸軍日本語学校」(ちくま学芸文庫

-岡田育「ハジの多い人生」(文春文庫)

-外山滋比古「『読み』整理学」(ちくま文庫

 

 

飯田龍太全句集 (角川ソフィア文庫)

米陸軍日本語学校 (ちくま学芸文庫)

ハジの多い人生 (文春文庫)

「読み」の整理学 (ちくま文庫)

 

 

 

 飯田龍太は個人的な岩波新書ベスト本のひとつ小林恭二「俳句という遊び」で出会った現代を代表する俳人。その全句集となれば見逃せない。

 

 「米陸軍日本語学校」は第二次大戦中にアメリカが戦後の占領までを見据えて作ったアメリカ人に日本語を教える学校の実態についての回想本。

 

 「ハジの多い人生」はTBSラジオの「アフター6ジャンクション」で著者へのインタビューを聴いて興味を持った。元中央公論社編集者でアメリカ在住の文筆家。ここでの「ハジ」は「恥」ではなく「端」の方の「ハジ」らしい。

 

 外山本は先日読んだ犬塚美輪「生きる力を身につける14歳からの読解力教室」(笠間書院)のあとがきで著者がオススメ本としてあげていたのを覚えていた。しばらく品切れだったが昨年増刷されたらしい。これも「思考の整理学」がベストセラーになった余波だろう。

 

14歳からの読解力教室: 生きる力を身につける

 

 

 

 豆の代わりに本を買ってまた40分かけて帰る。暑いので帰ったらキリマンジャロの代わりに富士山の水を飲むのだ。