散歩で万歩。

 

 今月に入って原則自宅勤務となった。とはいえ、出勤絶対禁止というほどではなく、事前に上司に報告すれば職場へ行くことは許されているため週に2回は出勤している。

 

 幸い歩いて職場へ行くことのできる場所に住んでいるので、30分ほどかけて徒歩で職場へ行っている。もうひと月くらい公共交通機関(電車・バス)には乗っていない。出勤する日以外は当然自宅にいる。自宅での勤務時間は明確には定められていないため、こうなる前に時差出勤時間として示されていた時間は自宅のPCに向かって仕事をしている。通常職場に行けば少なくとも一日12000歩程度は歩いているのだが、自宅にいるだけでは三桁にとどまる歩数しか動かなくなる。これではいけないと午後の自宅勤務の終了時間を過ぎるとジャージに着替え、買い物がてらの散歩に出ることにしている。

 

 

 4月初旬に地元の駅ビルが休業となった。地元唯一の新刊書店はこのビルの中にあったため我が町から本屋が消えた(古書店は1軒あるがこちらも4月中旬に店内販売を休止した)。本屋に行くという日課のような楽しみがなくなり、本の購入は通販に頼るしかなくなった。古本は好きな古書店が「日本の古本屋」に出品しているのでそこから買う。もちろん古書店が直接通販を行っている場合にはそれを利用している。また、新刊はe-honが期間限定の送料無料で配送してくれるサービスを開始したのでこちらを主に利用している。e-honの良いところは特定の書店を指定すると通販の売り上げの一部がその書店の利益となるシステムになっている点だ。できるなら地元で日々愛用していた駅ビルの本屋を選択したいのだが、このサービスには加盟してないらしく選択肢に店名がなかった。そのため近場の本屋の中から前に行って好感を抱いた妙蓮寺にある石堂書店を選んで利用している。

 

 今日もそのe-honから本が届いた。届いたのは以下の本と雑誌である。

 

-『ユリイカ』五月臨時増刊号“総特集 坪内祐三1958-2020”

-コーリー・スタンパー「ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険」(左右社)

-牧村健一郎漱石と鉄道」(朝日選書)

-又吉直樹「東京百景」(角川文庫)

 

ユリイカ 2020年5月臨時増刊号 総特集◎坪内祐三 1958-2020

 

ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険

 

 

漱石と鉄道 (朝日選書)

 

 

東京百景 (角川文庫)

 

 『ユリイカ』の坪内祐三追悼は欲しかったのだがやっと届いた。『本の雑誌』の追悼号も厚かったが『ユリイカ』はもっと厚い。定価2700円。この厚さと値段に度肝を抜かれた人が多かったのもうなずける。目次にずらっと並んだ執筆者を見ているだけで坪内祐三という人がいかに多くの影響を多くの人に与えた存在であったかがわかる。小沢信男山田稔西村賢太武藤康史・平山周吉・橋本倫史・岡崎武志と瞬く間に読み進めてしまう。息をつくために一旦雑誌を閉じる。他にも小西康陽浅羽通明林哲夫・中尾務・涸沢純平・中沢新一高山宏など興味深い名前があとからあとから出てくる。慌てずゆっくり読むことにしよう。

 

 

 今日は休日のため勤務時間にしばられることはない。午後3時前にジャージに着替えて散歩に出る。届いた本を眺めていたらやっぱり本屋に行きたくなった。そのため、隣駅にある新刊書店まで歩いていくことにする。Google マップの経路では片道徒歩40分の行程である。隣駅にある商店街までは先週一度歩いて行っているのでルートは分かっている。横浜はアップダウンの多い市である。僕の住んでいるところもご多分にもれず、歩き始めれば必ず下りか上りがやってくる。隣駅に行くには小高い山をひとつ越えていく感じになる。20度以上の気温がすぐに体に汗をかかせる。ひと山越えて川を渡り、隣町へ。人通りの多い商店街は避けて裏通りを歩く。朝食用の食パンを今朝食べ切ったので、まずは町外れにあるパン屋を検索で見つけてそこで食パンを購入。自宅勤務に伴う散歩を始めた時、散歩の目的地に困った。そこで、とりあえず自宅で飲むコーヒーの豆を購入できる自家焙煎をしている店及び朝食用の食パンが買える個人営業のパン屋を検索し、歩いて行ける範囲の店をしらみ潰しに行ってみることにした。そのため今日のパン屋も初めての店。角形の食パンがよかったのだがすでに売り切れており、山形の食パンになった。

 

 手にパンを提げながら、駅前にある新刊書店へ。横浜のこの地区にいくつかの支店を持つ中規模書店の本店である。7年ほど前までこの店の支店が地元の町にもあった。夜遅くまでやっていて残業帰りに寄ることのできるありがたい店だったのでなくなったのは残念だった。休日ということもあり店内は人が多い、書店滞在時間は長い方の人間であるが、現状ではそうも言っていられない。さっと店内を流し、2冊を選んでレジへ。

 

-村上春樹「猫を棄てる」(文藝春秋

-片岡義男「コミックス作家川村リリカ」(中央公論新社

 

 

猫を棄てる 父親について語るとき

 

 

コミックス作家 川村リリカ (単行本)

 

 

 「猫を棄てる」は『文藝春秋』掲載時に読んでいるが本で持っていたかった。それに、今日部屋で4月26日にTOKYOFMで放送された「村上Radio」をポッドキャストで聴いていたこともあり、すぐに目に入ってきた1冊だった。

 

 片岡義男の新刊は迷わず買うことにしている。もう80歳を越えているのに大家や大御所といった感じにならず、不思議な現役感をいつまでも感じさせてくれる稀有な作家だと思う。

 

 

 同じ道を帰るのはつまらないので、線路沿いを歩き、地元の駅前に出て、そこから自宅のある坂の上まで汗をかきかき登っていく。自宅について、ジャージを脱ぎ、風呂に入って汗とその他の目に見えないものを流す。湯船に浸かりながらもう一度「村上Radio」を聴き直す。約2時間、歩数約1万歩の散歩だった。