スシとスタバだらけの街から。

 6時半起床。荷造りを済ませて同僚とスタバで朝食。昨日この店でもらったアイスコーヒーが無料になるというクーポン券を出したら、店員がびっくりしていた。自分のところで出しておいて、それを店のものが知らないというのがこっちらしい。


 カナダはのんびりしたいい国で、ごみの分別もすすんでいない。スタバもマックもゴミ箱は一つであり、飲み残しを捨てる場所もない。まあ、飲み残すなどというもったいないことは最初から考えていないと言われればぐうの音もでないのだが。


 9時半にこちらの仕事先が頼んでくれたおばさんが車で僕を迎えに来る。空港まで送ってくれるのだ。英語が苦手な僕を気遣ってやさしい単語を連ねていろいろ話しかけてくれる。僕が「Vancouverはスタバと寿司屋が多い街ですね」と言うと彼女は大きくうなづき、「ここの寿司屋はみんなおいしい。日本からコックが来て握っているのだ」と教えてくれる。


 本当にこの二つは多くて、各ブロックごとに1軒ずつあるような感じなのだ。そういえばメジャーリーグ観戦ツアーのガイドが「Vancouverはシアトルに続いて世界で2番目にスタバの多い街だ」と言っていたっけ。


 10時過ぎに空港着。搭乗手続きを終えて、免税店で職場への土産を買う。その後、「マイナス・ゼロ」を読みながら搭乗時間を待つ。機内に乗り込み、離陸後1時間ほどで読了。たしかに面白い作品だ。僕は未来に向かうSFよりも過去にさかのぼるミステリーを好む方だが、この作品におけるタイムマシーンはまさに過去にさかのぼるための装置となっている。タイムマシーンのパラドックスを描いたという側面より、戦前の東京を描いたノスタルジックな風俗小説の側面をより楽しんだ。


 続いて吉田健一「新編酒に呑まれた頭」(ちくま文庫)を読み出す。ネス湖を訪ねネッシーについて現地ガイドと熱く語ったり、ピットロッホリーを訪れてツイードの生地のよさに感心する吉田氏の姿を追いながら自分が過去に行った時の映像を思い浮かべて楽しみ、食堂車で単品の料理を頼みつつ、車窓を眺めながらマイペースでのんびりと呑む姿とこちらの都合にお構いナシにお仕着せの機内食をあてがわれるわが身を比べながら読み進む。飛行機が着陸態勢に入る少し前に読み終わる。