読むを読む。

 今日は朝から出張野外仕事。


 天気は、台風18号のイントロとまではいかないが、演奏が始まる前のなんだか落ち着かない会場のような不安定な感じ。曇ればちょっと肌寒く、晴れれば少し汗がにじむ。


 仕事は夕方前に不首尾で終わる。



 帰り道にこの夏移転改装した横浜駅西口地下の有隣堂に寄る。グッズと本を絡めた特集の棚をもうけたり、地下通路がそのまま本屋に通じているような通気性のよい店作りをしたりと集客のための工夫が感じられるが、まだ慣れないのでどう動いていいのかとまどう。


 文芸評論の棚でこれを見つけて購入。


NO BOOK NO LIFE 僕たちに幸せをくれた307冊の本

NO BOOK NO LIFE 僕たちに幸せをくれた307冊の本


 副題に“全国の本屋さんたちが選んだ! 僕たちに幸せをくれた307冊の本”とある。ちょっと気恥ずかしいのでそれは見なかったことにする。簡単に言ってしまえば「書店員によるおすすめ本ガイド」だ。すすめられている本の書影が写真ではなくイラストなのがなんとなくいい。人に本を紹介するときの道具としても使えそうだ。


 一緒に『図書』10月号を貰ってきた。



 久しぶりに地元駅前のつけ麺屋で遅い昼食。つけ汁をカウンターにあるIHヒーターで温めている間に、『図書』巻頭にある岡崎武志「本を読む」を読む。本文は「『読む読む』の日々」、「新連載小説(?)『こころ』の読み方」、「『読書村』の村民になりたい」の三部構成。最初と最後は岡崎武志読みの人々にとっては“古典落語”ともいえるネタ。その定番を今回はどのように岡崎さんが料理しているかが読みどころ。中の「こころ」ネタが個人的には一番興味深い。朝日新聞が「こころ」連載百周年を記念してリバイバル掲載を行ったということを受け、結末を知っている名作を新聞連載として日々読み継いで行くことの面白さを書いている。それによって得た新たな「こころ」の読みを岡崎さんは提示しているのだが、それを読みながら先月NHKBSでたまたま見た「こころ」をめぐるトーク番組を思い出した。漱石研究者・小森陽一、作家・高橋源一郎、評論家・関川夏央、女優・鈴木杏らがレストランのような場所でそれぞれの読みを語り合う番組だったのだが、久しぶりにワクワクしながらテレビの前に齧り付いていた。番組でも話題になった小森陽一による「こころ」論を大学時代に読んだときのあのゾワゾワする感じがまたよみがえってきた。それぞれの発言内容の細かいところは覚えていないのだが、「そうそう『こころ』って一筋縄ではいかない面白い作品なんだよ」という思いにしてくれる楽しいひと時だった。番組途中からの視聴だったので、もう一度再放送するか、トーク内容を薄いブックレットにして出版してくれないかな。もう5回以上は読み返している作品だが、そのうちもう一回読み直すことになりそうだ。岡崎さんに話を戻すと、文章最後の「読書発電所」についての2段落は、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の頃の村上春樹の短篇を思わせるような内容だった。


 『図書』巻末の10月の新刊案内を読んでいると“岩波現代文庫 秋のフェア”のコーナーがあり、筒井康隆文学部唯野教授」がリストアップされていた。これは先日岩波文庫に入ったテリー・イーグルトン「文学とは何か」とのジョイントだろう。その他のリストを見ていると「〜を読む」系の題名が多いことに気づく。僕らが学生の頃にこのような題名の単行本があれこれと出始めたのを覚えているが、それらが時を経て文庫本という形で現在また流通しているということなのかな。その中で井筒俊彦「『コーラン』を読む」に目がいく。以前から気になっていながらまだ読めていないのが井筒俊彦なのだ。この機会に「『コーラン』を読む」を読んでみるか。


文学とは何か――現代批評理論への招待(上) (岩波文庫)

文学とは何か――現代批評理論への招待(上) (岩波文庫)

文学とは何か――現代批評理論への招待(下) (岩波文庫)

文学とは何か――現代批評理論への招待(下) (岩波文庫)

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

『コーラン』を読む (岩波現代文庫)

『コーラン』を読む (岩波現代文庫)