待合室を抜け出して。


 夕方仕事を終えて退勤。


 駅近くにある耳鼻科へと急ぐ。実は先週くらいから右耳に違和感があり、綿棒で掃除していても黄色い液体が付着するという状態になっていたのだが、ついに今朝栓をされたように右耳から音が入ってこなくなったため近場の耳鼻科をネットで検索しておいたのだ。


 耳鼻科のドアを開けるとすでに10人以上の人が順番待ちをしている。保険証を出し、アンケートへの記入を済ませてから、受付の人に断って外へ出る。待合室の状況では1時間は待たされそうなのだが、あいにく鞄に携帯本を入れ忘れてきたのだ。本もなくただぼんやりと1時間も待っているのは苦痛なので、近場の本屋へ本を買いに出たというわけ。

 どんな本にしようか悩む。あくまで時間つぶしのための読書だから難しい本は向かないし、読みたくもない。長編小説を読み始めてしまうと家で順番待ちをしている本たちを差し置いて今日買った本を明日以降も読みつづけることになるのも避けたい。そこで、軽いエッセイ集か、短篇小説集か、日記が適当だということになり、文庫棚を見ているとこれが目に留まる。

 以前に持っていた文庫本3冊セットは昔の文字組で活字が小さかったのだが、改版された今の文庫は活字が大きく読みやすくなっている。そこで古い方は人に譲り、気が向いた時に改版で揃え直そうと思っていたのだ。


 待合室で「富士日記」を読み出す。最初の方は百合子さんだけではなく、夫の武田泰淳氏や娘の武田花さんの書いた日記も含まれているのだということを知る。


 診療の結果右耳の鼓膜などが炎症をおこしているらしい。処方箋を貰って医院を出る。


 さっきとは別の書店で。

 “二〇〇七年の収穫”特集。アンケート回答者が37人と以前より少なくなっているような気がする。


 帰宅後、昨晩から読み始めた黒岩比佐子「編集者 国木田独歩の時代」を2章の途中まで読む。面白い。


 寒いのでこれを聴きながら湯舟に浸かる。

アラバマに星落ちて

アラバマに星落ちて


 晩年の枯れたホリディの歌声も悪くない。