VANを着た芥川賞作家。


 先日、春の人事異動の発表があった。僕にはなんの変化もなかったのだが、この異動の結果から今後の仕事に何ひとつ希望の持てるものがないという状況になり、それから日々索漠とした乾いた精神状態で過ごしている。


 春は名のみの風の冷たさ



 本屋には寄ったが何も買わずにぼんやりと帰宅。


 ネットで4月の文庫新刊情報をチェック。春を待ち遠しくさせるのはこれらの文庫本だけか。




 


 角川文庫は時折おっと思わせる月がある。チャトウィン西村賢太セレクトの田中英光作品集だ。旅に文庫のチャトウィンを持って行くなんて悪くない。


  河出文庫吉田健一が入った。これで講談社文芸文庫ちくま文庫との三つ巴の吉田健一争奪戦が開始されるのか。こんな宣戦布告は大歓迎。カルビィーノのみすず本が河出文庫へ。訳が須賀敦子とくれば言うことはない。


 あの厚い「青春の終焉」が講談社学術文庫になるのか。どれくらいの背幅の文庫になるのだろう。ということは「出生の秘密」も講談社学術文庫に今後入ることになるんだろうな。



 平野啓一郎訳の「サロメ」か。芥川賞を取って注目を浴びていた頃、この人がVANJACKETの広告に出ていたの覚えている。タモリがVANのポロシャツを着て「笑っていいとも」に出ていたあの頃だ。それ以来、本は読まなくてもこの芥川賞作家にはなんとなく関心を持ってきたのだが、一体どこへ行こうとしているのかが僕にはよく分からない。



 ちくま文庫の丸谷本は書評集だろうか。“日本編”ということは“西洋篇”も出るということかな。〈狐〉本は新書を文庫に入れ直したカタチ。それもいいのだが、文庫でいいから〈狐〉書評集成を5冊くらいで出してほしいものだ。


 文春文庫はたまに映画本を同時に数冊出すことがある。以前にも黒澤明関係本を同月に2冊出していたっけ。今回も2冊映画本を出している。今後も続けてほしい。



 片野さんの「犬部!」も文庫入り。