誰もテープを切らない。


 朝、いつも朝食を買う職場へ向かう坂を下りたところにあるセブンイレブンに寄る。今朝は、バイトの彼女がいる日だ。サンドイッチを選んでいる僕の背中越しにレジにいる彼女の声が聞こえる。ほら、また言っている。僕の順番が来る。会計を済ませ品物を受け取り、レジ前を離れる僕に彼女が言う。
「ありがとうございませ!」
 彼女がこの店でバイトを始めた頃、最初に言われたときは驚いた。聞き間違えかと思ったこの言葉は、それから何度となく繰り返されることによって決していい間違えなどではないことを証明した。たぶん、「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」がいつの時にか彼女の中で混ざってしまったのだろうと思う。


 相変わらず、仕事が忙しい。総体的な量としてはさほどではないのだが、同時進行している仕事の種類が多いのだ。5つぐらいの仕事が抜きつ抜かれつしながら並走状態で進んでいる。誰一人いまだにゴールしようとはしていない。


 午後から出張。電車で携帯本「大政翼賛会前後」を読み進む。ようやく終わりが見えてきた。大政翼賛会の文化部に所属していた杉森氏が、違う部署にいた花森安治氏に出会う場面が出てくる。


 ある公会堂で行われた1時間ほどの会合に出席し、職場へ戻る。途中、横浜駅での乗り換え時に有隣堂に寄り道し、地元では売れてしまったこれを。


 職場に戻り、ひと仕事済ませてから、退勤。


 地元の本屋へ。

 特集“青坪アメリカを語る!”。昨年暮れに東京堂で行われた青山南×坪内祐三対談が掲載されている。


 平凡社ライブラリーの新刊が出ていたので手に取る。帯の見返し部分に書かれている“来月の新刊”を見ると「岩本素白随筆」が。これか、NEGIさんの日記(id:foxsya)に書かれていた本は。手にするのが楽しみだ。


 帰宅後、『本の雑誌』から青坪対談。50年代に出た「オン・ザ・ロード」と「ロリータ」がともにロード小説であるというのは言われてみればその通りだ。「オン・ザ・ロード」を意識したであろうカポーティが書いた「冷血」がロード小説であるという指摘ある。


 その他、坪内さんと向井さんの連載を読む。「古本屋セドロー君の午後」で別冊宝島の1冊として『現代思想・入門』が挙がっているのに反応してしまう。ニューアカと呼ばれる、記号論構造主義、読者論ブームの真っ只中で大学時代を過ごした僕にとって当時バイブル(マンガ聖書と言ったほうがいいか)であり、アンチョコでもあった座右の書。懐かしい。


 締め切りを過ぎたちょっとした原稿をなんとか書き終えてから「文学鶴亀」を読み進める。
 それにしても黒岩比佐子さんが武藤康史さんと同じゼミの知り合いだとは知らなかった。その他のゼミ生たちもなんとも豪華(http://blog.livedoor.jp/hisako9618/)。